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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
修復編

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第78話:再起動は、いつも通りの声色で

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 魔導商都セレスティア。ギルド本部、研究室。


 無機質な機械群に囲まれた部屋の中央で、サイラスさんが静かに声をかけた。


「いきますよ」


 彼は、作業台に横たわるアルテアのうなじへとゆっくりと手を伸ばす。

 先の戦闘で破壊されていた彼女の両腕は、サイラスさんの手によって何事も無かったかのように綺麗に修復されていた。


 うぅ、なんだか緊張してきた…。

 ごくりと唾を飲み込んだ僕の耳に、カチリ…という小さな電子音が届く。


 静まり返った研究室。

 直後、閉じられていたアルテアの瞼がゆっくりと開き、その無機質な瞳の中に文字列が高速で流れていった。


「スリープから復帰中……40%……100%」


 アルテアの肩が小刻みに震えたかと思うと、彼女はいつも通りの無表情のまま、ふわりと重力に逆らうように身体を浮かせた。


「おはよう、コータ」


「アルテア…!うん、おはよう」


 起動したら、どんな言葉をかけようかと、色々考えていたのに。

 話したいことが色々あったはずなのに、彼女のいつもと変わらない顔を見たら、そんな悩みは全部どこかへ飛んでいってしまった。


 アルテアは静かに空中で姿勢を正すと、僕の隣に立つ少女へと視線を向けた。


「…監視端末、ニーナ」

「は、はじめまして…ニーナです。って、あれ?なんで私の名前を…?」


 ニーナさんが目を丸くして首を傾げる。

 戦闘中は顔は合わせていたけど…面と向かって話したことはなくて、お互い初対面のはずだ。


「実は、アルテアさんは完全に機能停止していた訳ではなく、副核マイナーコアでの活動…すなわち、疑似的な睡眠状態を維持していたのですねぇ」


 サイラスさんが、面白がるようにニヤリと笑った。

 それってつまり、眠りながら外の様子をずっと感知していたってことか?

 だとしたら、さっきの大議事堂での僕の熱弁も全部…。


「コータ、説明は不要だ。状況は把握している」


 アルテアの淡々とした言葉に、僕はなんとも言えない複雑な気分になる。

 まあ、一から状況を説明する手間が省けたと思えば、いっか。


「じゃあ、ジリウスは…」


 僕が視線を向けた先には、別の作業台で眠り続ける銀髪の青年がいた。

 彼も破壊されていた右腕は綺麗に修復されており、今にも起き上がってきそうに見えるのに、一向に目覚める気配がない。


「彼は中枢回路の一部が完全に焼き切れてしまっています。現代の技術では再現不可能でしてねぇ。古代遺跡で、同じパーツを探してくるしかないのですよ」


 サイラスさんが肩をすくめて言う。


「そっか…」

「と言うわけで、アルテアさん復帰一発目の依頼です」


サイラスさんはポケットに両手を突っ込み、一枚の紙をヒラヒラと振った。


「セレスティアとレガリスの国境付近、ギルド本部から北に位置する『ウルゴ遺跡』に向かい、ジリウスさんのパーツを取得してきてください。どのようなパーツかは、アルテアさんがご存じですので」


「わかりました」


 即答し、僕は隣を振り返った。


「ニーナさんは、どうする?」


「私も、連れて行ってください」


ニーナさんは、迷うことなく真っ直ぐな瞳で答えた。


「うん、わかった。じゃあ行こうか」


「システム、戦闘モード起動」


「いや、戦闘になるかどうかはわからないから…」


 アルテアへのツッコミ…僕は何やら懐かしい気持ちが込み上げてくる。

 ――この少しズレたやり取りこそが、アルテアが帰ってきたという何よりの証拠だった。


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