第58話:夜を越えるロスタイム
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「ありがとうございましたー。ふぅ…」
自動ドアが閉まり、店内の空気が再び静寂に戻る。
カウンター越しに外を見ると、街灯が寒そうに夜道を照らしていた。
時計の針はそろそろ22時を指そうとしている。
でも、次のシフトの二人がなかなか現れない。
「新見さん…香坂君。…ちょっと、いいかな……」
レジの奥、検品作業をしていた店長が、何やら酷く申し訳なさそうな、それでいて必死な顔で僕らを呼んだ。
「あ、はい。…新見さん、ちょっとだけレジお願いね」
「はーい、任せてください」
店長は事務所の方に僕らを招き入れると、深々と頭を下げた。
「ごめんね…。さっき連絡があってね。深夜シフトの衣笠さんが熱出しちゃって…。それに村田君もインフルエンザだって……」
その先の言葉を聞く前に、僕は全てを悟った。
絶望的な『ダブルシフト』の打診だ。
「わかりました。…僕は明日、講義が昼からなので大丈夫ですよ」
…母さんには後でロインで連絡しておこう。
「ありがとう…!香坂君、君は救世主だよ……!…新見さんは、どうかな……?」
「新見さーん! ちょっとこっち来てー!」
店長に呼ばれて、新見さんがトコトコと事務所に駆け寄ってきた。
「なんでしょう?」
「あのね、新見さん。…このまま深夜シフトまで、入れないかな…?」
店長は文字通り、拝むようなポーズをしている。
新見さんは一瞬だけ戸惑ったような顔をしたが、すぐにスマホを取り出してスケジュールを確認した。
「…………はい、大丈夫です」
「ありがとう…!深夜手当、ちゃんと付けるから!お願いしますね、二人とも……!」
店長は僕らの手を握らんばかりの勢いで感謝すると、逃げるようにバックヤードへ消えていった。
残されたのは、煌々と光る蛍光灯の下。
22時から朝の8時まで、さらに10時間を共に戦うことになった、僕と彼女。
「…新見さん、無理しなくていいんだよ?僕一人でも、なんとか回せるし」
「何言ってるんですか、香坂さん。一緒に、がんばりましょう!」
新見さんは少しだけ、茶目っ気たっぷりに笑ってみせた。
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