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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
ニーナ編

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第47話:轟音、爆発、御用心

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 ギィィィィィン!!


 耳を刺すような、ひどく冷たくて重い金属音が訓練場に鳴り響く。

 エンバーさんの持つ魔導棍クラブが、ジリウスさんの眼前に迫るたびに、魔法の壁に弾き返され、周囲の空気が火花を散らしている。


「…エンバー、やめるんだ。総司令からも言われているだろう」


 見かねたアッシュさんが制止の声をかけるけれど、エンバーさんには、その言葉は全く届いていないみたい。


「ひゃはは!こんな楽しいこと、やめられるかよォ!これだけ殴ってるのに、傷一つつけられねぇなんて…最高じゃねぇか!」


ギィン!ギィィン!


 無慈悲なまでの金属音が鳴り響く中、ジリウスさんはといえば……信じられないことに、猛攻を仕掛けるエンバーさんの方に一瞥もくれず、私のすぐ隣でただ、ふわふわと浮いていた。


「ニーナ。敵意は検出されませんが、持続的な物理干渉を受けています。抹消しますか?」

「抹消は、だめ!…エンバーさんも、やめてください!」


私の叫びも虚しく、エンバーさんは逆にそれを合図にしたみたいに、さらに速度を上げている。


「おいおい…マジかよあの銀髪。エンバーさんの攻撃を、完全に防いでやがる…」

「しかも、まともに見てすらいねぇ。…どうなってんだ…」


 周りの兵士たちが恐怖に顔を強張らせる中、エンバーさんが野獣のような雄叫びを上げた。


「全ッ然、攻撃が通らねェじゃねえか!よっし…それならこれだァ!『解放リリース』…出力、80%だあああ!!」


 彼の全身から、噴火する火山の様に魔力が噴き出す。


「弐式…へへっ、いいじゃねぇか、まだまだいけそう、だっ!!」


 ギィィィィィン!!


 先ほどとは比べ物にならない重厚な一撃。

 衝撃波だけで、私の髪が激しく後ろに流される。


「アッシュさん、どうすればいいですか…!?」


「…はぁ。ああなると、止められない。…あの性格だけは、悩みの種だ」


 アッシュさんが深いため息をつく。

 あの鉄の棒がある限り、彼が止まることはなさそう。 だったら…。

 私は覚悟を決めて、すぐ隣の「最強の兵器」に指示を出す。


「ジリウスさん!エンバーさんの、あの武器だけ――魔導棍クラブだけ、壊せませんか!」

「可能です、ニーナ。指示を」

「絶対に、エンバーさん自身には当たらないように…!武器だけ、お願いします!」


「命令を受理しました。目標、魔導演算補助機材『魔導棍クラブ』。出力、0.01%」


「何を、ボソボソと……死ねええええ!!」


「――崩壊セパレート


 上空へと高く跳ね上がったエンバーさんが、渾身の力で鉄骨をも凌ぐ一撃を叩きつけようとした、その刹那。

 ジリウスさんの指先から、糸のように細い一本の白い光が放たれた。


 それが彼の武器に触れた、次の瞬間。

 スタッ、と地面に着地したエンバーさんの手には……もう、何もなかった。


「…ありゃ…おっかしいな」


 エンバーさんが呆然と、自分の右手を眺めている。

 そこにあったはずの鉄の棒は、空中で一瞬にして、サラサラとした砂となって風に舞い、消えてしまったのだ。


「…え、ええ……?」


「分子間結合の全破壊が完了しました、ニーナ。発生した熱エネルギーは人体に危険を及ぼすと判断し、冷却演算を同時実行。…結果、魔導棍のみを常温にて崩壊させました。原子同士を繋ぐ電磁気力を――」


「難しい解説はいいです…でも、ありがとうございます」


 ジリウスさん。…やっぱり、この人は危険だ。

 音もなく金属を瞬時に分解するって…もはやギャグだ…。


 当のエンバーさんはというと、渾身の攻撃の腰を一気に折られた形になり、憑き物が落ちたような顔をしていた。


「…ふわふわ兄ちゃんの実力、よくわかったぜ。…チッ、ボスに怒られちまうな…アッシュ、後は頼んだぜ」


 何事もなかったかのように、頭をガリガリと掻きながら去っていくエンバーさん。

 この人、本当にとんでもない性格してる……。


「はぁ。…では、ニーナ。…もう一つの目的、訓練を果たそう」

アッシュさんは、疲れを見せずに私の前に立った。

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