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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅
奪還編

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第40話:リブロ遺跡のはらわた

「アルテア、この前はどうやって起動したの?」


 遺跡内をうろうろと見て回りながら、僕は彼女に尋ねる。

 あたりは一面、錆びついた金属の壁に囲まれていて、どこを見ても残骸ばかりが広がる。

 構造的に見れば、ここは生活空間——つまり街だったように思えるんだけど…。


「以前のケースでは、電源系統が生きていたものと推測される」

「そっか…」

「なんや、どこを歩いてもガチャガチャしとるだけやな」

「そうですね……何をどう調査すればよいのやら」


 二人の言葉通り、ただのスクラップ置き場にしか見えない。

 

「また、地下になにかあるのかな。…そうだ、アルテア。広域の地質スキャン、できるよね?」

「可能だ、コータ。――スキャン開始。

 垂直方向、深度50まで。…………。感知した。

 30メートル先、地下に大規模な構造物が存在する。

 外殻は高密度の金属で覆われていて、内部までのスキャンは不可能だ」


「それだ! 行ってみよう」


 案内された場所は、遺跡の中央広場だったと思われる空き地だった。

 アルテアが足元を指差す。


「この下だ。長方形の構造物、長辺約10メートル。深度30」

「ナギさん、この地下にある『何か』をごそっと地上に引き揚げることって、できますか?」

「…まあ、できるで。ヴィクトール」

「了解。解放リリース……30%」

「離れときや…隆起ライズ!!」


ナギさんが両手を地面に叩きつける。


ゴゴゴゴゴゴ……


 地震のような激しい振動が足元を襲う。

 地面が割れ、粉塵が舞い上がるなか、ズズズ……と巨大な銀色の塊がせり出してきた。


「なんだろう、これ…。箱、ですか?」


 姿を現したのは、窓一つない巨大な金属製のコンテナだ。

 泥にまみれてはいるが、その表面は鏡のように滑らかで、何百年も地下に埋まっていたとは思えない輝きを放っている。


「コータ、ここにアクセスポートがある」


 扉の横、セキュリティロックと思われる発光パネルにアルテアが指を触れる。

 

 パシュン!

 

 と、空気圧の抜けるような音とともに、カチリ、とロックが外れた。


 ハンドルを握り、ゆっくりと力を込める。 ギギギィ……。

 長い間、動かされていなかった鉄の軋む音が不穏に響く。

 僕は暗い内部を覗き込んだ。


「シェルター……なのかな、ここ。真っ暗で何も見えない」


アルテアに視線を送る。彼女は黙って一歩前に出た。


「アルテア、接続できそう?」

「内蔵バッテリーを検知。予備電源をバイパスして、供給を開始」


 言うと同時に、室内がぱっと光に包まれた。


「……!」


 そこにあったのは、あまりにも『生活感』に満ちた空間だった。

 床に散乱した衣類。

 倒れた椅子。

 壁際の棚には、見たこともない文字が書かれたプラスチックのような素材の容器が並んでいる。 そしてテーブルの上には――。


「あ……これ、ディストピア飯ってやつかな。それか、携帯食料?」


 四角いトレーに、銀色の包装紙に包まれた菓子のようなものがいくつか転がっている。

 現代でいうカ〇リーメイトにそっくりな、高栄養の補助食品っぽい何か。


 衣類の散らばり方や、食べ残されたような痕跡。

 かつてここで、何か混乱があったことを想像するのは、それほど難しくなかった。


「うわっ、急に明るくなった!」

「なんやこれ。誰か住んどったんか?」


 二人の驚きをよそに、アルテアは壁際の一番大きな装置に向き合っていた。

 その瞳の奥で、膨大なデータが流動しているのがわかる。


「ネットワーク接続、確立。基底サーバーを認識。

 システム、神性魔導演算回路への直接アクセス、承認。

 クラウドサーバとの同期を開始――」


 アルテアの肩がわずかに小刻みに震える。


「同期率20%…40%…60%…。警告、同期エラー。部分復旧に移行」

「アルテア、大丈夫?」

「問題ない。……一部だが、クラウドサーバと同期できた」


「さっきから何を言うとるんや?」


 ナギさんが困惑気味に僕を見る。


「うーん、簡単に言うと、アルテアはこの遺跡を通じて、神様のような存在が持っている記憶と通信しているんです」

「神様と通信…?それができると、どうなるのです?」

「神魔大戦……1000年前の記憶を取り戻すことができます。今回も全ては同期できなかったみたいですけど」

「わかったような、わからんような話やな…」


 納得はしていないようだが、ナギさんは呆れたように笑ってくれた。

 僕は、モニターのような光を反射するアルテアの目を見つめる。


「それで、アルテア。何か分かった?僕が呼ばれた理由とか…」


 ずっと引っかかっていた疑問。

 なぜ僕だったのか。なぜ、この世界でなければならなかったのか。


 アルテアの瞳が、青く深い輝きを放つ。


「――アクセス可能だ、コータ」


 彼女の静かな宣告が、冷たいシェルターのなかに重く響いた。


 どくん、と心臓が跳ねた気がした。

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