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クラス転移に巻き込まれなかった俺、学校に残された数人の「残り物」たちと最強の文化祭を開催する  作者: NN


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22/30

22時間目 3人だけの作戦会議

 ガギィィィィィィィンッ……!!


 放送室の窓の外。

 俺の『固定アンカー』によって空中で静止した巨大な腕が、小刻みに震えている。

 俺と、巨大質量との力比べ。

 今のところ、俺が勝っているように見えるだけだった。


 爆音のメタル音楽が、勝利の凱歌のように鳴り響いている――はずだった。


 ジャ、ジャッ……ザザッ……。


 不意に、スピーカーからの音が歪んだ。

 CDの音飛び? いや、違う。

 空気が、音を拒絶しているような、不快なノイズ。


「……カケル君。気を抜くな」


 後ろで操作盤を握る東雲センパイが、低く、冷たい声で呟いた。


「今の……完全じゃない」

「え?」

「君の『固定』だけで止まったんじゃない。向こうが『止まった』んだ」


 俺は眉をひそめ、目の前の巨大な指を見上げた。

 ピクリとも動かない紫色の皮膚。

 だが、その奥から――視線を感じる。


 亀裂の奥の暗闇で、何かが**「わらった」**ような気配がした。

 ――豪徳寺だ。あいつの、ひび割れた笑い声。


 『 な ぜ …… 』


 脳内に、粘着質な声が響く。

 さっきまでのヒステリックな怒りとは違う。もっと冷たく、ドロドロとした執着。


 『 な ぜ 、 そ ん な に 楽 し そ う な ん だ …… 』


 ズズズッ……。

 止まっていたはずの巨大な指が、ゆっくりと動き出した。

 俺の『固定』を力で破ったのではない。

 俺の固定した空間を、「避けて」、液状化してすり抜けてきている!


「なっ……!? アンカーが効かない!?」

「適応してきているんだ!」

 センパイが叫ぶ。「こちらの『お祭り騒ぎ(ジャミング)』の波長に、奴らが慣れ始めている! このままだと耐性がついて、一気に突破されるぞ!」


 巨大な指がドロリと形を変え、放送室の窓ガラスに触れようとする。

 死の感触が鼻先まで迫る。


「くそっ……! 押さえろおおおッ!」


 俺は両手で虚空を掴み直し、全身の魔力を注ぎ込む。

 鼻血が滴り落ちる。視界が赤い。

 止まれ。止まれ。止まれ!


 ギリギリのところで、指の侵食が止まる。

 だが、俺の体感であと数分、いや数秒持つかどうかだ。


「凛! センパイ! 作戦会議だ!」

 俺は脂汗を流しながら叫んだ。

「現状維持じゃジリ貧だ! この腕を押し返す『決定打フィニッシャー』が必要だ!」


「わかってるわよ!」

 凛が俺の横に並び、指鉄砲で牽制射撃を行う。

「でも、どうするの!? あたしの火力じゃ、あんなデカブツ焼き尽くせないわよ!」


「燃やすんじゃない」

 センパイが、マイクスタンドを掴んで俺たちの前に立った。

 その眼鏡の奥で、狂気的なまでの理性の光が輝いている。


「ジャミングが破られそうなら、出力を上げるしかない。奴らの想定を超える『非日常』をぶつけて、ゲートの維持機能をオーバーロードさせる!」


「具体的には!?」


「『キャンプファイヤー』だ」


 センパイは窓の外、グラウンドの中心を指差した。


「現在、校内には魔力が充満している。このエネルギーを一点に集約し、爆発的な『熱狂の炎』として空に打ち上げる。その衝撃波で、あの腕ごと亀裂を吹き飛ばして縫合するんだ!」


「そ、それって……学校が吹っ飛ぶんじゃ……」

「カケル君の『固定』で、校舎の構造だけを維持しろ! 爆風はすべて上空へ逃がす!」


 無茶苦茶だ。

 俺は校舎を守りながら、同時に巨大な腕を抑え込み、その上で凛が最大火力をぶっ放す?

 失敗すれば、俺たちは自分の火で消し炭になる。


 だが。


「……やるしかないか」

 俺はニヤリと笑った。

「文化祭のシメといったら、キャンプファイヤー(後夜祭)って相場が決まってるもんな」


「凛君。君が主役メインアクトだ」

 センパイが凛を見る。

「君の『発火』能力を、攻撃ではなく『演舞』に使え。ただ燃やすだけじゃダメだ。美しく、激しく、見る者すべてを魅了する『炎のダンス』で、この場のボルテージを最高潮クライマックスまで引き上げろ!」


「ダ、ダンス……!?」

 凛が顔を赤くする。

「私、ダンスなんてやったことないわよ!」

「できるさ。あの『踊り子の衣装』を着こなしていた君ならね」

「っ……!」


 凛は迷うように俺を見た。

 俺は、巨大な腕を必死に抑えながら、彼女に頷いた。


「頼む、凛。お前の炎が必要だ」


 その言葉に、凛の迷いが消えた。

 彼女は髪をかき上げ、不敵な笑みを浮かべる。


「……わかったわよ。見てなさい、とびっきりの特等席で!」


 凛が放送室の窓枠に足をかける。

 外は、魔物の群れと巨大な腕が蠢く地獄の校庭。

 そこが、彼女のステージだ。


「センパイ、音響と照明、頼みます!」

「任せたまえ。私のとっておきの『特製花火』もセット済みだ」


 俺たちの、最後の作戦会議は終わった。

 時間は残されていない。

 巨大な腕が、再び「ズズズ……」と動き出し、放送室を握り潰そうと迫る。


「行くぞ! 作戦名『スクール・フェスティバル』最終楽章!」


 俺の叫びと共に、凛が夜空へと飛び出した。

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