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クラス転移に巻き込まれなかった俺、学校に残された数人の「残り物」たちと最強の文化祭を開催する  作者: NN


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21/30

21時間目 巨大な腕

 ドゥゥゥゥゥンッ!!!!


 俺が再生ボタンを押した瞬間、校内全域に設置されたスピーカーが火を吹いた。

 選曲は、軽音部の部室から拝借したCDの中にあった、BPM200超えのハードコア・メタルだ。

 速くて、重くて、何より攻撃的アグレッシブ


 地響きのような重低音が、歪んだ校舎を物理的に揺さぶる。


照明ライト、オン!!」


 東雲センパイが操作盤のフェーダーを一気に押し上げた。

 カッ!

 屋上、渡り廊下、そして放送室の窓際に設置された投光器が一斉に点灯する。

 ただのライトではない。理科室の薬品で色付けされた、極彩色のレーザービームが夜空を切り裂いた。


 これぞ、作戦名『スクール・フェスティバル』。

 静寂と恐怖を塗り替える、強制的な「馬鹿騒ぎ」だ。


 *


 効果は劇的だった。


 『ギャッ!? ギギッ!?』


 空の亀裂から降り注いできたガーゴイル(石像の魔物)の群れが、空中で姿勢を崩した。

 突然の爆音と、目潰しのような閃光。

 暗い洞窟のような環境に適応していた奴らにとって、この「明るすぎる戦場」は猛毒なのだ。


「ははっ! 踊ってる踊ってる!」


 俺はDJマイクに向かって叫んだ。


「ようこそ新入生諸君! 歓迎会パーティーの時間だ! まずは手荒い花火の挨拶からいくぞ!」


 俺の合図で、窓際で待機していた凛が動いた。


「もう、耳がキーンとするわよ!」


 凛は文句を言いながらも、ノリノリで指鉄砲を構えた。

 眼下には、光と音に目を回して校庭の上空をウロウロしている魔物の群れ。

 絶好のターゲットだ。


「アンタら、チケット持ってないでしょ! 不法侵入よ!」


 ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!


 凛の指先から、マシンガンのように炎弾が放たれる。

 『発火』能力の連射。

 炎はレーザー光線の中を駆け抜け、次々とガーゴイルに直撃する。


 『ギェェェェ!!』


 魔物たちが火だるまになって墜落していく。

 その光景は、まるでライブの特効(特殊効果)の演出のようだった。


「ヒュウ! ナイス演出!」

「うるさい! 次から次へと……キリがないわよ!」


 凛の言う通りだ。

 先遣隊は落とせても、空の亀裂ゲートそのものは塞がっていない。むしろ、こちらの抵抗に苛立つように、傷口を広げている。


 その時。

 曲のサビに入り、ドラムが激しさを増した瞬間だった。


 ズズズズズズズズッ……!!


 音楽の振動とは違う、圧倒的な質量による地響きが起きた。

 空の亀裂が、内側から「こじ開け」られたのだ。


「……なんだ、あれ」


 俺はマイクを握る手を止めた。

 裂け目の奥から、紫色の巨大な物体がヌルリと現れた。


 指だ。

 ビルのように巨大な、5本の指。

 それは空の「縁」を掴み、メリメリと空間を引き裂きながら、その本体をこちらの世界に押し込んできた。


 現れたのは、巨大な「腕」だった。

 皮膚は岩のようにゴツゴツとし、血管の代わりに魔力の光が脈打っている。

 長さは100メートル以上あるだろうか。

 勇者たちの乗る次元船を押し出すためのアンカーか、あるいは神の腕か。


「で、デカすぎる……!」

 センパイが顔色を変える。「まずいぞ、あの腕、この校舎を掴むつもりだ!」


 巨大な腕が、ゆっくりと、しかし確実に校舎へ向かって振り下ろされる。

 狙いは、この放送室がある管理棟だ。

 あんなもので叩かれたら、校舎なんてマッチ箱みたいに潰れる。


 『 邪 魔 を す る な ァ ァ ァ ! 』


 空間全体から、豪徳寺の思念が響く。

 巨大なてのひらが、俺たちの頭上を覆い尽くす。

 死の影が落ちる。


「凛、センパイ! 伏せろ!」


 俺はDJブースから飛び出し、割れた窓枠に足をかけた。

 逃げる場所はない。

 なら、止めるしかない。


「カケル! 無理よ! あんな質量、支えきれない!」

「支えるんじゃない!」


 俺は空に向かって右手を突き出した。

 巨大な掌が、あと数メートルで放送室を押し潰す距離まで迫る。

 風圧だけで体が吹き飛びそうだ。


 イメージしろ。

 俺の能力は『固定アンカー』。

 対象を止める力。

 でも、あの腕そのものを止めるには、俺の魔力(MP)が足りない。


 なら、どうする?

 俺が止めるのは、腕じゃない。

 この「場所」だ。


 俺たちのステージ、俺たちの空気を、誰にも触らせない「聖域」としてロックする!


「ここは! 俺たちの! 特等席アリーナだああああッ!!」


 俺は叫びと共に、能力を全開にした。

 対象は、放送室の窓の外にある「空間」そのもの。


 ガギィィィィィィィンッ!!!!


 世界が軋む音がした。

 振り下ろされた巨大な腕が、俺の鼻先50センチの空中で、見えない壁に激突して停止した。


 衝撃波が左右に散り、校庭の木々をなぎ倒す。

 だが、校舎は無傷だ。


「ぐぅぅぅぅ……ッ!!」


俺の右腕から、バチバチと血管が切れる音がした。


重い。

山を背負っているようだ。


だが――止まった。


「……カケル、腕……!」


巨大な腕は、見えないくさびに阻まれ、ピクリとも動けない。


「へっ……ざまぁみろ……!」


 俺は鼻血を垂らしながら、目の前の巨大な指に向かって中指を立てた。

 そして、左手でマイクを引き寄せ、荒い息で告げた。


「おい……聞こえるか、豪徳寺」

「この学校は『満席』だ。お前らの座る席なんてねえよ!」


 俺の挑発に応えるように、巨大な腕が怒りで震え出した。

 フェスのボルテージは、最高潮クライマックスへ向かおうとしていた。

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