#019 崩壊へのカウントダウン
本日2回目の投稿になります。
次からは少し時間がかかると思います汗
相手に対して最も失礼な態度とは何だろうか?
鼻で笑う、揚げ足を取る、軽視する、見下す、他にも色々と失礼な態度が存在するが、その中でも一番失礼な態度は『無視』することだと思う。
対象をないモノとして扱い、その存在を否定する行為が、無視するということだ。
全くの無価値であり、相手するだけ無意味であると、そう表現することが無視であり、最も相手の尊厳を踏み躙る行為であると言えるだろう。
そしてそんな無視という行為当然の如く行っている者がいる。
そう、彼だ。
地上の人々の憎しみを無視し、天界で己を高めるためと希少品(?)である神力を生産する巨樹の回収に勤しんでいた。
地上には碌なものがなく、天界にも既に目ぼしい物は無く、宿命の神の姿は見えず、本当にすることが無くなったため、巨樹が聳え立っていた跡地に座って、ぼ~っと時間を潰していた。
地上では時代が流れ、宿命の神が特殊部隊の隊員に渡した神力を基に神力についての研究が進みだしていた。
彼は暇だ暇だと思うながらも天界のあちこちに設置型エナジードレインの魔法を罠として置いていたので、天界への門を開いて帰って来た神を吸収してはまた設置しなおすということを繰り返していた。
更に時は流れ、神力を生産する巨樹を2本も体に同化させている彼はその内包神力が増え続け、その神力によって生み出される魔力も増え続けと、もはや上位神すら相手にならないような力を手に入れ始めていたが、基本ヘタレである彼は自分から打って出るということは全くせず、ひたすら天上界の巨樹跡地に座っていた。
天界は全く神力が無いために劣化が始り、欠片が地球に隕石の如く降り注いだ。
幸運なことにその多くが海へと没したが、一部は大陸に墜ち、大きな穴を穿った。
天上界も徐々に崩壊を始めており、時折大きな破砕音が彼の元にも届いていた。
仙術だけでなく科学さえ発展したこの世界で神が信仰を得るのは難易度が高かったらしく、彼のおかげで神力に乏しいこの世界に残る神もかなり少なくなり、世界の崩壊が目に見えてきていた。
「久しぶりだね、異界の神よ。君が来てからもう250年も経ったよ。」
彼を消し去ろうと計略を練っていた自称宿命の神が眼前にフワフワと浮いていた。
「最近は人間の中にも僕たち神を捕獲しようなんてふざけた思想を吹聴する奴も増えだしてね、君が来てから本当に碌なことがないよ。」
地上では神が捕獲対象になり、天界の終焉も近い。確かに神にとっては踏んだり蹴ったりな状況だろう。
しかし彼はそんなことを話す宿命の神に目の焦点を合わすことなく黙って座っている。
「今更この世界は元には戻らない。いや、創造神の特性『原点』か『創世の権能』があれば別だけど、それらを得る可能性を上位神でもない僕たちが得る可能性はないしね。それでも、君に一矢報いるくらいはしようと思うんだよ。」
浮遊する焔の形をとっていた宿命の神だったが、徐々に輪郭がハッキリし、一人の男を形どっていた。
「この世界はさ、基本的に弱いんだよ。その中でも人間は特に弱かった。だから異世界の力を借りる使い魔の文化が育ったんだよ。使い魔召喚は人間の仙術と『召喚の権能』を持つ神の共同技でとても繊細だったから、ちょっとのミスで君みたいなのが来ちゃうことになったんだけどさ、彼らを責めるわけには行かないだろう?」
普段とは違い巨樹跡のすぐそばに門がいくつも開きそこから生き残りの神々が天上界に乗り込んできた。
「本当なら天上界で暴れるなんてご法度なんだけどね、もう崩れちゃうし、ここに召喚することにしたよ。何を、なんて言わなくてもいいよね?」
神々が自身の存在保持に必要な神力さえも開放し巨大な魔方陣を宙に描き出した。
徐々に回転を始めた魔方陣は次第に光の奔流を放ち空間を大きく裂いた。
「僕たちはもう消えるよ。神力が足りないからね。願わくば、貴方が倒されることを望みます。」
そう言うと、最後の神々は光となって消えていき、空間の裂け目から2体の魔物が現れた。
それは彼の生まれ育った世界で見かけた2体だった。
チェンジスライムと亜竜之王。
皆さんは覚えているだろうか?
彼がこちらの世界に来るときに生き残っていた最後の2体の魔物で、未だに彼を憎んでいる。
あの後残った上位神を滅ぼしその残留神力を取り込むことで自己神格化を果たしたようで、それぞれリミットスライム、亜竜之神に進化している。
宿命の神からこの場を提案され、この世界へやって来たのだ。
召喚時に強化魔法と守護の権能が掛けられており、その力は上位神にも匹敵するものとなっている。
只の魔物時でさえ相性が良ければ上位神を葬り去る力を持っていたため、一昔前の彼だったならば勝負にさえなってなかった可能性があるが、この250年という歳月を宿命の神は甘く見ていた。
神は2段階、要するに只の神と上位神に別れているが、上位神はさらに3段階に分かれている。
只の上位神、創造神・破壊神、そして全能神だ。
創造神・破壊神は複数存在するが、全能神は全ての世界を合わせて一人しか存在せず、全能神を打ち破らなければ全能神には成れない。
そして彼はこの250年で破壊神一歩手前まで近づいていた。
その差は歴然で、世界間に穴を開けかねない威力の亜竜之神の息吹を彼は直撃を受けても平然としていた。
もはや彼にとって少し強めの上位神など眼中にも入らない存在だったのだ。
リミットスライムはその体で空間を歪め、それが戻ろうとする力を利用した空間矯正波を放った。
例え上位神であってもその存在を消し去る一撃で、周囲の空間も余波で消滅し虚無が広がっていたが、破壊神一歩手前の彼には微風程度にしか感じれなかった。
渾身の攻撃が全く効かないことに焦ったリミットスライと亜竜之神は融合し、世界が震え出した。
周囲の崩壊し切っていない天上界をも取り込み始め、存在そのものをエネルギーに変換し、醜い融合体が発光を始める。
あまりの膨大さに融合が希薄になりながらも収束されるエネルギーはやがて臨界点を迎え、世界を揺るがす衝撃を齎した。
天界は完全に消し飛び、隣り合う世界をも余波で揺らし、下界に至っては宇宙が軋み、あちこちでワームホールが発生し、多次元宇宙が衝突しあうという有り得ない現象が起きていた。
存在のパラドックスが生じ、何故か存在するものやいつの間にか消えた者が発生し、混乱が訪れた。
自爆を選ぶほど自分が憎かったのかとその時初めて融合体に気が付いた彼であったが、決してそんなことは無く、召喚時に絶対に倒すまで死力を尽くす精神誘導が宿命の神を始めとする数神によって行われていたのだ。
誰でも死ぬ気になれば格上にも通用するものである。
運命の女神同様死んでしまったが。
世界を揺るがす衝撃は、もし直撃を受けていれば彼でさえもダメージを免れない程だったが、実を言うと彼はピンピンしている。
理由は『嫉妬の権能』だ。
もしあの衝撃がリミットスライムと亜竜之神の協力技だったならば彼にダメージを与えられたかもしれないが、あろうことか融合してしまっていた。
要するに、一つの種族としての存在になってしまっていたのだ。
大罪系の権能は尖った能力が多く、たとえ相手がどれほど格上であろうとその能力のみはいつ何時も適応されることが特徴であり、融合体と言う一つの種族による攻撃は彼には効かなかった。
荒れた大地を歩きながら、足元の魔方陣に嘲笑を投げかけつつ、今日もゾンビは嗤う。
少々早いですが、第2章は今話で終了として、次から第3章にしたいと思います。
上手く話を纏められなかったのもありますが、世界観の造りを少々不味ったかなと思います。
次章はもう少し精進しようかなと(汗)。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
そして、次章からもよろしくお願いします。
※最後の方に出てきた魔方陣ですが、この章のPrologueを読んでいただければ理解できるかと思います。




