#020 Prologue
次は時間がかかるとか言いながらPrologue投稿です。
と言っても、これでいいのか、とても不安です。
お試し版ですので、批評前提でお読みください。
やる事が溜まって来ましたので、Prologue修正、及び本編執筆はかなり先になると思います。予めご了承ください。
彼は浮かんでいた。
何に浮かんでいるのかはよく分からないが、兎に角浮かび、流されていた。
自身の周りにもいくつかの気配がするが、確認しようにも視点を動かせない。
消滅するほどではないが、自分と言う存在が少し希薄になっている。
何故自分はこんな訳の分からないところにいるのだろうと記憶に潜る。
最後の記憶は足元の魔方陣から流れ出る光に飲まれたことだった。
よくよく思い返せば一度来たことがある場所だった。
使い魔として召喚された時もこんな場所を通った。
あの時は意識してなかったが、動けなかったのかと今更ながら思う彼。
流れに身を任せて漂い続けていた彼は不意に接近する一つの気配を感知した。
「いたいた、今回は20人か。中々多いね。それにしても今月は召喚し過ぎだと思うんだよね。」
基本的に上位神はおろか創造神・破壊神でさえも存在が希薄になる混沌世界では身動きできないが、全能神の加護を受けていれば別である。
「確かに勇者召喚の魔法を教えたのは召喚の神である僕だけどさ、異世界特典は人力ならぬ神力なんだよ?ホント、存在値の低い人間の多い世界に設定しておいてよかったよ。それに、人間ならここでは起きられないしね。」
自称召喚の神は手元に光球を生み出し漂う者に落し入れていく。
「ん?ちょっと存在値大きすぎないか!?なんか僕より存在値が大きいんですけど!?これは応援を頼まないと異世界特典が渡せないな。はぁ、神力の消費がヒドイ。」
彼は破壊神間近の上位神であり、寝てもいなかったのだが、そのことに気が付かなかった召喚の神はどこかへ飛び去った。
彼は彼で、この世界で何故そこまで滑らかに動けるのかと、もしや自分より上位の存在なのかと驚いていた。
実際は全能神の加護を受けていただけで、全能神の加護を受ければ混沌世界でも動けることは神々の常識なのだが、彼は魔物出身の神であり、常識には疎かった。
暫くすると4つの気配が近づいて来た。
彼に判別する術は無かったが、先ほどの召喚の神の他に、存在・付与・創造の神が来ていた。
四人もこの世界で動ける者がいることに彼は驚愕していたが、全能神の加護を受ければ彼も動けることに気付く由も無かった。
「こいつだよ、そのイレギュラーは。」
「うわ、ホントだ。これ人間?」
「早く異世界特典付与してさっさと送り出すわよ。」
「ここまで存在値があったら僕が存在を保たせる必要あるのかな?」
「ねえ、せっかくなら新しい異世界特典を創造しない?結構無茶ぶりしても魂魄壊れないと思うんだよね。」
「確かに。他の人間は魂魄が弱っちいからな。」
只でさえ理不尽な存在にさらなる力を与えようとしているとは、この時誰も思わなかった。
少し魂魄の強い人間、程度の認識しかしていなかったのだ。
「じゃあさ、こんなのはどうかな?」
「ん?どんなの?」
「消失の異世界特典。守ってよし、攻めてよし。」
「魂魄は持つかもしれないけど、ちょっと危険すぎないか?異世界特典は全能神の加護を含んだ僕たち5神の加護が複合して出来上がるから、神の権能すら消しかねないよ?扱いは権能と同じだよ?しかも上位だ。」
「人間の寿命なんて知れてるし、そんな短い一生で神に合えるとも思えないし、そこまで気にしなくていいんじゃない?」
「じゃあ、いっか。せ~の!」
安易な考えが破滅を導くのはいつの世でも同じで、とんでもない存在を人間と勘違いしていたことに気が付くのはまだまだ先の話である。
「それにしてもさ、向こうの英雄の神は良くここまで人間に神力を使う気になるね。受け取り側にも結構の負担がかかると思うんだけど。」
「私たちは4人だからね~。あっちは1人。」
「信仰を得るためでしょ。収支損益はぶっちぎりの黒字だってこの前言ってたわ。」
「はあ、ちょっと分けて欲しいね。僕たちは布教してないからね。はあ。」
溜息をこれでもかと吐く召喚の神にうんざりしながらも彼は今後の行動方針を考える。
「それにしてもよくあの城を再利用できたね、あの王。」
「そうね、今までは異世界特典の暴走もあって、その場で騒動が起こることもザラにあったけど、あの城は元々は破壊神の住居だもんね。」
「破砕神。一体どうやって破壊神の称号を手に入れたんだろうね。」
「あいつは元々結界の神だったから、結界で世界を圧縮して破壊して回ったんじゃない?上位権能の断絶も似たような能力だったし。」
「あの城は断絶世界で守られてるから、同格以下の能力は認めないからね。魔法も権能も特性も形無しだよ。」
さっさと周りを更地に変えて飛び出そうという彼の計画は初っ端から挫かれた様だ。
改めて考えれば、今まではあまり人から情報を集めようとはしてこなかった。
数回集めようと街へ行ったが、結局少しの情報で街を出てしまい、かなりの年数うろついた割には収集できた希少品は少ない。
特にさっきの世界は酷かった。
人目線の希少品は少し集めてみたものの、あまりパッとしない。
次の世界では少し人に紛れる時間を伸ばすか?
そんなことを考えながら4神の会話を聞き流していた彼だが、不意に会話の内容が頭に入って来た。
誰しも自分のことが会話に出れば急に気づくといった経験があるのではないだろうか?要するにそう言うことだ。
「よく考えたらさ、上位権能と同等の異世界特典に耐える魂魄って、異常過ぎない?」
「ん?さっきの男の子?」
身長165センチ、童顔。
確かに男の子と言って語弊は無いかもしれない。
死んだ目なのは御愛嬌。
「確かにすごいことだけど、人間てほら、可能性に満ち満ちてるじゃん?神力ちょっと渡しただけで亜神になるし。ていうか異世界勇者は基本亜神だし。それだけで神に近づく存在だよ?在り得るんじゃない?」
「凄い短命だし、世界がきっと沢山の伸びしろを創ったんだよ、きっと。」
「そうかなあ。なんかそう言われるとそんな気がしてきた。」
自分たちの行いがどれほど危険なことだったかに気付きそうで気づかない神々。
愚かな者達だと彼は嗤う。
『召喚・付与・存在・創造』の4伸はこの時気が付いていなかったが、称号に『愚者』が追加されることとなる。
彼は未だ流れに身を任せている。
所変わって、勇者召喚の魔方陣の存在するセントラルシュタイン城召喚室。
コロシアム並みに広い召喚室で、王族を始めとするこの国最大勢力の王族派に属する貴族が魔方陣の周囲を取り囲んでいる。
地下の魔搾室では魔力の鎖につながれた1000人の魔法使いが無理やり魔力を搾取され呻いていた。
遊びと称して王妃の体を乗っ取っていた『英雄の女神』は微力の神力を魔方陣に流し、新たな勇者の訪れを、新たな英雄の訪れを今か今かと待っていた。
王城内では自身の権能が著しく制限されるが、神力を魔方陣に流す程度のことはできる様で、胸を撫で下ろしていた。
(まさか破壊神の断絶世界に綻びを見つけてくるなんてね。召喚魔方陣の起動に必要な神力が使えないんじゃないかと焦ったわ。ほんとに余計なことをしてくれる。)
憎々し気に隣に座る王を呪詛するが、その表情には一切出さず、優美で慈愛に満ちた眼差しを保っていた。
半数以上の魔法使いが魔力の欠乏で朽ちていく中、魔方陣の輝きは増し、新たな勇者の召喚は秒読みの段階に入っていた。
「レギダント伯爵、今回の勇者はどのようなものだろうな?」
「おお、アサシル男爵か、そうだな。扱い易い、駒に最適な者が好ましいが。」
「最悪は姫の精神魔法で傀儡にすればよい。」
「これはこれはレジア辺境伯様。そうですな。」
「まったく忌々しいことに、前回の召喚で呼び出した勇者どもはあろうことか魔族の肩を持ち負った。」
「今回は刷り込みから本腰を入れると王も仰せだ。」
「今度こそ勇者を魔族殲滅の切り札として育て上げ、新興派と独立派を抑え込まねば。」
「正義は我らに在り、だ。」
そんな会話を聞いていたのは英雄の神が乗り移っている王妃だ。
(全く人間同士でいがみ合いなんて、野蛮な種族。なんでこんな種族には英雄が生まれやすいのかしら?まあ、私としてはどういう英雄になっても、英雄として称えられる者が生まれればそれでいいんだけど。前の勇者は失敗だわ。人前に現れず事を終えちゃうんだもん。ゆっくり、ゆっくり育てて行かなくちゃ。)
様々な思惑が蠢く世界へ向けて、未だ混沌世界を漂って、今日もゾンビは嗤う。
如何だったでしょうか?
これは完全版ではなく、意見如何によっては修正を入れる予定です。
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2017/08/15 裏設定掲載中止




