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マリアノツルギ  作者: 由岐
4章 それぞれの絆
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2.成長と進歩

 兵士からの報告によると、街を襲っている魔物はどうやら王都をぐるっと囲む山から降りてきたようだ。

 王都ハインザークは盆地であるため、飛空艇で山を越えなければならない。

 今から他の街に援軍を頼んだとしても、それが到着するまで待っている余裕は無いだろう。

 コークリキスタ城から見下ろす街のあちこちから、蠢く魔物と逃げ惑う人々、そして燃え盛る家屋が目に入った。

 ウィントハーレンは石で出来た建物が多いのだが、城に程近い貴族や高官の屋敷などはそうではない。

 城に近い屋敷から火の手が広がり、徐々に街を呑み込もうとしている。


「民を発見次第、速やかに保護し我が城へ送り届けよ!」


 エボルブス国王は戦闘の準備を整え、兵士達に指示を出した。

 コークリキスタ城ならば守りも固く、大勢の人々を収容出来る。

 俺の槍は光のコアデバイスを取り付けるため、シアルのマルトス侯爵に預けたままだ。

 近くを通りかかった兵士に槍を貸してもらい、ハルさん達と共に混乱に包まれた城下へと向かった。


「ギルドに依頼は出してあるから、この街に居る冒険者達も手を貸してくれるはずだ」

「色んな方々と協力して、魔物の撃破と住民の避難をさせましょう! 私とハルさんは向こうから行きます!」

「わかりました! アキレア、リーオ、俺達は南側に向かおう!」

「はい!」

「わかったわ」


 ハルさんとエキウムさんは城門を出たところから東へ、俺達は南、陛下は西側から進んだ。

 鉱山での作業でちょっとは体力がついたのか、走っても前よりは疲れにくくなったような気がする。

 街をうろつく魔物はスプラエンでは見たことのないものばかりだった。


「あれは……もしかしてゴブリンか?」

「そうよ。よくわかったわね」

「でも、わたしが本で見たゴブリンとは少し違うみたいですね」


 小ぶりの剣や槍を持った鋭い牙の小鬼。色々なゲームで見覚えのあるその姿から推測しただけだが、俺の予想は合っていたようだ。

 青白い肌のゴブリンの群れが俺達の姿を捕らえ、襲いかかってきた。

 アキレアは斧を振り下ろしたが、重さで動作が遅くなってしまうため素早いゴブリンに避けられてしまう。

 すかさず俺が槍で突くと、しっかり攻撃が命中した。


「や、やったぁ!」

「前より進歩したじゃない!」


 致命傷を与えるまでにはいかなかったが、以前セロウズさんとレベッカさんと一緒にウサイヌと戦った時に比べたらかなり成長したと言えるだろう。


(何せあの時は一撃も当たらなかったからなぁ)


 実は俺の戦闘技術が上がったのには理由がある。

 カオシアで出会ったマルトス侯爵達とウィントハーレンに向かうまでの数日間、俺はグレイさんに稽古をつけてもらっていたのだ。

 グレイさんは双剣使いなので、片方の剣をそれぞれが使うことで一対一の練習試合をして少しずつ強くなった。

 それが今こうして敵の隙を突いての攻撃に繋がったのだろう。


「わっ!」

「面倒なことになったわね……」


 気が付くとゴブリンは俺達三人を取り囲んでいたのだが、リーオが放った炎の魔法が一体のゴブリンに命中し、一発で燃え尽きていた。

 リーオはまさか一撃で倒せるとは思っていなかったらしく、目を丸くしている。


「わ、わたし、そんなに強い魔法を使ったつもりはないのですが……!」

「炎はゴブリンの弱点なのよ。それに、ウィントハーレンのゴブリンは寒さに強く進化したから更に炎に弱いの!」


 あのゴブリンはスノーゴブリンという種類らしい。

 炎が苦手というのは間違いではないようだ。スノーゴブリンが居たこの辺りでは建物が燃えていない。きっと炎を避けて行動しているのだろう。


「では、わたしの魔法でゴブリン達を倒します!」


 首のフリッグの印が熱を持ち、リーオの魔法が次々とゴブリンに命中していく。

 あっと言う間にゴブリンを殲滅したリーオ。

 普段はおっとりしているのに、戦う時は雰囲気がガラリと変わる勇敢な少女だ。


「凄いなリーオ! 大活躍じゃないか!」

「そんなに凄いことではありませんよ。偶然ゴブリンの弱点が炎だっただけですから」

「だけど、リーオが居なかったらもっと大変だったはずだよ。ありがとうな」

「お礼なんていいんです。さあ、街の方々を助けに行きましょう!」


 そう言ってリーオは走り出した。

 俺も続いていこうとしたのだが、アキレアはどこか遠くを見つめて立ち尽くしていた。


「アキレア?」

「……、何でもないわ」


 俺の声にハッとしたアキレアは、俺より先に走っていってしまった。


(何だったんだ……?)


 何か彼女の気に障るようなことをしてしまったのだろうか。

 考えても答えは出ず、俺の気のせいかもしれないと割り切って二人の背中を追った。

 街のあらゆる場所に蔓延る魔物達を途中で出会った冒険者や彼らのマリア達と共に退治しながら、住民達を城へ誘導していく。

 一通り避難を済ませたあたりで、ギルドの建物から懐かしい二人組が出て来た。


「おっ、無事だったみたいだな!」

「怪我してないみたいで良かったヨ~!」


 グレーの短髪の剣士とブラウンの髪の棍棒使いの美男美女。二人が笑顔で手を振っている。


「せ、セロウズさんにレベッカさん!? どうしてこの街に……!」



 

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