NCO-217-JP「覚」
毎日21時投稿
金土日18時、21時、2本投稿予定
この章は10分ぐらいで読めます
よかったらコメント感想など聞かせてください!
NCO-217-JP「覚」
**MDEオフィシャル — 国際異常研究機構(IARO)日本支部**
---
## MAES — MDE異常評価システム
| 評価項目 | 評価 |
| ---------------------------- | ------------------------ |
| **管理等級(Containment Rating)** **C-2** |
| **危険度** | **2 / 5** |
| **収容難易度** | **2 / 5** |
| **被害規模** | **2 / 5** |
| **異常分類** | 妖怪型/精神感応型 |
| **特殊指定** | **SAPIENT / TELEPATHIC** |
| **収容施設** | サイト-83 |
| **担当責任者** | ████研究主任 |
| **付記** | クレイン事案対象 |
---
# 特別管理プロトコル
NCO-217-JPは、サイト-83人型異常存在収容区画の標準居住室に収容されています。
居室内には寝具、机、椅子、書籍その他、対象が要求し管理責任者が安全と判断した生活用品の持ち込みが認められています。
NCO-217-JPは現在MDE職員に対して積極的な敵対行動を示しておらず、通常時に身体拘束を行う必要はありません。
NCO-217-JPとの面談は原則として2名以上で実施してください。
ただし、面談担当者は対象が自身の思考内容を認識することを前提として行動してください。
機密情報を保持する職員、潜入作戦に従事する職員、あるいは自身が認識することで情報災害が成立する異常情報を保持している職員との接触は禁止されています。
NCO-217-JPに対して虚偽の情報を意図的に提示する実験は、担当責任者の許可なく実施してはなりません。
対象自身の表現によれば、
> 「口で嘘ついたって、頭ん中がうるせえんだから意味ねえよ」
とのことです。
なお、20██年██月██日に発生した**217-C事案(通称:クレイン事案)**以降、NCO-217-JPとクレイン博士の単独接触は禁止されています。
詳細は補遺217.3を参照してください。
---
# 概要
NCO-217-JPは、日本の伝承において**「覚」**と呼称される妖怪と極めて類似した特徴を持つ人型異常存在です。
外見上は痩身の人型生物であり、成人男性と同程度の体格を有します。
皮膚は灰褐色。四肢は人間と比較して若干長く、特に指部の伸長が確認されています。
知能は人間と同等、あるいはそれ以上と推定されています。
日本語による意思疎通が可能です。
最大の異常性は、周囲に存在する知的生命体の**思考内容を直接認識する能力**です。
有効範囲は正確には判明していませんが、これまでの実験では約██m以内に存在する人間の思考を認識しています。
ただし、NCO-217-JPが認識できる思考には一定の偏りがあります。
特に、
* 現在強く意識している内容
* 発言しようとしている文章
* 恐怖・怒りなど強い感情を伴う思考
* NCO-217-JP自身に向けられた思考
について高い認識精度を示します。
一方、長期記憶を任意に検索する、本人が意識していない情報を抽出する、といった能力は確認されていません。
このことから、NCO-217-JPの能力は一般的な意味での「記憶読取」ではなく、**表層思考の知覚**に近いものと考えられています。
---
# 発見経緯
20██年、岐阜県███山系周辺において、
「山で考えていることを先に言う男がいる」
「猟師が撃とうとすると、撃つ前に逃げる」
「何も喋っていないのに家族のことを言い当てられた」
などの証言が複数確認されました。
当初は地域に残存する「覚」伝承との混同、あるいは都市伝説の一種と考えられていました。
しかし、現地調査を行ったMDEフィールドエージェント2名が対象と接触。
接触直後、NCO-217-JPはエージェント██に対して以下の発言を行いました。
> 「撃つなよ。」
>
> 「まだ撃とうか考えてるだけだろ。」
>
> 「だから、それが聞こえてんだよ。」
エージェント██はこの時点で武器を抜いておらず、対象への攻撃について発言もしていませんでした。
その後、約43分間の交渉を経てNCO-217-JPは自発的にMDE管理下へ移行しました。
確保時、対象は次のように発言しています。
> 「山にいるよりマシなら行く。」
>
> 「あと、お前ら人数多すぎる。」
>
> 「うるせえ。」
---
# 補遺217.1 — 初回面談記録
**面談者:** ████研究員
**対象:** NCO-217-JP
---
**████研究員:** まず確認します。あなたは――
**NCO-217-JP:** 覚なのか、だろ。
**████研究員:** ……はい。
**NCO-217-JP:** 知らん。
**████研究員:** 知らない?
**NCO-217-JP:** 人間が勝手にそう呼んでるだけだ。
**████研究員:** では、自分が何者なのかは?
**NCO-217-JP:** 俺は俺だ。
**████研究員:** なるほど。
**NCO-217-JP:** 「面倒なタイプだな」って思ったろ。
**████研究員:** …………。
**NCO-217-JP:** 今度は「本当に読めてる」。
**████研究員:** …………。
**NCO-217-JP:** その次は「何も考えるな」。
**████研究員:** …………。
**NCO-217-JP:** 無理だって。
**████研究員:** 楽しんでいますか?
**NCO-217-JP:** 少し。
**████研究員:** 性格悪いですね。
**NCO-217-JP:** それは口に出すんだな。
---
**《記録終了》**
---
# 補遺217.2 — 能力検証
NCO-217-JPの精神感応能力について、以下の実験が実施されました。
### 実験217-04
被験職員に1~100までの数字から任意の数字を選択させました。
**選択:37**
NCO-217-JP:
> 「37。」
正答。
---
### 実験217-07
被験職員に幼少期の出来事を思い出すよう指示。
NCO-217-JPは約12秒間沈黙した後、
> 「犬。」
>
> 「白いやつ。」
>
> 「死んだときのこと考えてる。」
と発言。
被験職員への確認により一致。
---
### 実験217-11
被験職員へ「何も考えない」よう指示。
開始から4秒後、NCO-217-JPは笑い始めました。
> 「『何も考えるな、何も考えるな、何も考えるな』ってずっと考えてるぞ。」
実験中止。
---
## 研究メモ
NCO-217-JPは、対象者の脳内情報を無制限に閲覧できるわけではない。
「頭の中の本棚から好きな本を取り出す」というより、
**相手が今読んでいる本を横から覗き込む**
という表現の方が近い。
――████研究員
---
# 補遺217.3 — 217-C事案「クレイン事案」
20██年██月██日、NCO-217-JPに対する精神感応機構測定実験中、収容区画内部で原因不明の電気系統障害が発生しました。
実験にはクレイン博士を含む研究職員4名が参加していました。
障害発生から約11秒後、精神活動測定装置が測定限界を超える異常値を記録。
直後、NCO-217-JPとクレイン博士が同時に意識を喪失しました。
他3名に異常は確認されませんでした。
NCO-217-JPは約3時間後に覚醒。
クレイン博士は約17時間後に覚醒しました。
事故直後から、NCO-217-JPの精神感応能力には明確な低下が確認されています。
事故前の平均有効距離を100%とした場合、現在の能力はおよそ**62~71%**まで低下したと推定されています。
一方――
クレイン博士には、事故以前には確認されていなかった異常性が発現しました。
---
## 医療観察記録217-C-1
**記録開始:クレイン博士覚醒から約4分後**
**担当医:** 気分はどうですか?
**クレイン博士:** 最悪だ。
**担当医:** 頭痛は?
**クレイン博士:** ある。
**担当医:** 吐き気は?
**クレイン博士:** 少し。
**担当医:** 他には?
クレイン博士、約7秒間沈黙。
**クレイン博士:** ……先生。
**担当医:** はい?
**クレイン博士:** 晩飯のこと考えるのやめてくれないか。
沈黙。
**担当医:** ……私は何も言っていません。
**クレイン博士:** 知ってる。
再び沈黙。
**クレイン博士:** カレーにするかラーメンにするかも、俺に聞くな。
**担当医:** …………。
**クレイン博士:** 頭の中でだ。
---
**《記録終了》**
---
# 補遺217.4 — 異常性移譲仮説
217-C事案後の検査により、クレイン博士にはNCO-217-JPと酷似した**表層思考知覚能力**が定着していることが確認されました。
ただし、その能力はNCO-217-JPより限定的です。
クレイン博士は対象が現在強く意識している内容について高い確率で認識できますが、弱い思考や過去の記憶については認識精度が大幅に低下します。
能力を任意に完全停止することは、現在まで成功していません。
217-C事案前後でNCO-217-JPの能力出力が低下していることから、MDE異常研究部門は以下の仮説を暫定採用しています。
> **NCO-217-JPが保有していた異常権能の一部が、217-C事案によってクレイン博士へ移譲・定着した。**
この現象が偶発的なものか、NCO-217-JP自身によるものかは不明です。
---
### 事故後面談記録・抜粋
**クレイン博士:** お前、何をした?
**NCO-217-JP:** 俺じゃない。
**クレイン博士:** …………。
**NCO-217-JP:** 分かるだろ。
**クレイン博士:** ……ああ。
NCO-217-JPは約10秒間クレイン博士を観察。
**NCO-217-JP:** 変な感じだ。
**クレイン博士:** 何が。
**NCO-217-JP:** 今まで俺だけだったからな。
**クレイン博士:** …………。
**NCO-217-JP:** 人の頭ん中、うるさいだろ。
クレイン博士は回答しませんでした。
**NCO-217-JP:** そうだろ。
**クレイン博士:** …………ああ。
NCO-217-JPは笑いました。
**NCO-217-JP:**
> 「半分、持っていったな。」
---
## 現在の措置
クレイン博士については、能力の安定性および精神状態の定期検査を条件として、MDE職員としての勤務継続が許可されています。
クレイン博士本人を独立したNCOとして登録すべきかについては審議が行われましたが、現在は**「NCO-217-JP由来異常性保有職員」**として内部登録されています。
なお、NCO-217-JPはこの決定について、
> 「別にいいんじゃねえの。」
>
> 「あいつ、人間なんだろ。」
>
> 「だったら人間にしといてやれよ。」
と発言しています。
**NCO-217-JPのMAES評価については217-C事案後も変更なし。**
**クレイン博士に定着した異常性については、現在も経過観察中です。**
次回予告
Tale「静かなところ」
10月13日21時投稿予定




