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異常世界の歩き方 MDE(国際異常研究機構)  作者: 神代千早


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60/85

NCO-214-JP「猫ではありません。」

毎日21時投稿

金土日18時、21時、2本投稿予定

この章は10分ぐらいで読めます

よかったらコメント感想など聞かせてください!

NCO-214-JP「猫ではありません。」


**オブジェクト番号:** NCO-214-JP


MAES評価


対象番号: NCO-214-JP

名称: 「猫ではありません。」


評価項目評価理由

管理等級(Containment Rating)C-1(監視級)通常の小動物飼育設備で管理可能。脱走・攻撃性・異常能力による収容違反の危険性は極めて低い。

危険度(Hazard Rating)H-0(無害)人体への危害は確認されておらず、攻撃性もない。唯一の異常性は「自分は猫ではない」と主張することのみ。

暴露リスク(Exposure Rating)E-2(限定的)公共の場で会話能力を披露すると話題になり得るが、速やかな情報統制で十分対応可能。

研究価値(Research Value)R-3(中)動物への知性発現、自己認識、人格形成の研究対象として価値がある。

異常影響規模(Scale Rating)S-0(個体)影響範囲はNCO-214-JP単体に限定される。

総合優先度MAES:Ⅰ-α継続観察対象。通常管理で十分。

MAES総合評価コメント


評価主任コメント


NCO-214-JPは高度な知性と言語能力を有する一方、攻撃性・感染性・認識災害性・現実改変能力はいずれも確認されていない。


本個体の最大の異常性は「自己認識」と「自己定義」にあると考えられる。


現時点では無害な対話型異常として扱われるが、自我形成や認知発達の経過を長期的に観察する価値は高い。


なお、担当職員が本個体との「猫であるか否か」の議論に長時間従事する傾向が確認されているため、業務効率低下を防ぐ目的で一回の議論は10分以内とすることを推奨する。

---


## 特別管理手順


NCO-214-JPはサイト83・小動物収容区画にて通常の飼育環境で管理してください。


給餌は一日二回。


水は常時交換可能な状態を維持してください。


職員はNCO-214-JPに対し、「猫ですね」と断定する発言を一日三回以上行わないでください。


長時間の議論は業務効率を著しく低下させるため推奨されません。


---


## 説明


NCO-214-JPは体長約46cmの黒白ハチワレ猫です。


体重、DNA、骨格、生理機能、行動様式は全て一般的なイエネコ (*Felis catus*) と一致します。


しかし、NCO-214-JPは高度な日本語による意思疎通能力を有しており、


**「自分は猫ではない」**


という一点のみを強く主張します。


現在までの調査では、


* 猫以外の生物的特徴

* 認識異常

* 変身能力

* 擬態能力


はいずれも確認されていません。


専門家による最終結論は、


**「猫である。」**


となっています。


NCO-214-JPはこの結論に強く抗議しています。


---


## 発見経緯


██県██市において、「猫が市役所で身分証明書の発行を要求している」との通報があり、MDEが介入しました。


到着時、NCO-214-JPは受付窓口で次のように主張していました。


> 「私は猫ではありません。」


担当職員は約二時間にわたり説得を試みましたが、会話は平行線を辿りました。


---


## 実験記録214-01


**担当:** 荒木真介


---


荒木


「猫やんな?」


NCO-214-JP


「違います。」


荒木


「ほな何なん?」


NCO-214-JP


「私です。」


荒木


「名前は?」


NCO-214-JP


「ありません。」


荒木


「猫やん。」


NCO-214-JP


「違います。」


---


**結果**


進展なし。


---


## 実験記録214-03


**担当:** 新木慎介


---


新木


「DNA検査した。」


NCO


「はい。」


新木


「猫や。」


NCO


「違います。」


新木


「骨格。」


NCO


「はい。」


新木


「猫。」


NCO


「違います。」


新木


「鳴いてみ。」


NCO


「……。」


(約10秒沈黙)


NCO


「にゃあ。」


新木


「猫や。」


NCO


「違います。」


---


**結果**


担当研究員が約五分間笑い続けたため終了。


---


## 実験記録214-08


**担当:** メアリー


---


メアリー


「どうして猫じゃないって思うの?」


NCO


「猫なら、人に拾われます。」


「名前を付けられます。」


「飼われます。」


「可愛いと言われます。」


「私はそういう存在ではありません。」


メアリー


「じゃあ、どういう存在なの?」


NCO


「……。」


約30秒沈黙。


NCO


「まだ考え中です。」


---


**備考**


初めて「猫ではない理由」らしき発言が確認された。


---


## 実験記録214-12


**担当:** 紅林澪奈


---


紅林


「質問を変えます。」


「あなたは何ですか。」


NCO


「分かりません。」


「だから猫ではありません。」


紅林


「それは矛盾しています。」


NCO


「猫と決められるよりは良いです。」


紅林


「なるほど。」


NCO


「理解していただけましたか。」


紅林


「いいえ。」


「ですが、あなたが自分で答えを探したいという意思は理解しました。」


NCOは約一分間、紅林を見つめ続けた。


その後、自ら紅林の膝の上へ乗り、丸くなって眠った。


---


## 補遺214-JP-A


現在、NCO-214-JPは職員休憩室への自由な出入りを許可されています。


本人は毎回、


> 「私は散歩しているだけです。」


と説明していますが、


昼休みになると決まって職員の膝の上で昼寝をしています。


なお、


「可愛いですね。」


と言われると、


少しだけ嬉しそうに喉を鳴らします。


本人はこれを否定しています。


---


## 補遺214-JP-B


**音声記録(抜粋)**


荒木


「おい。」


NCO


「何でしょう。」


荒木


「猫ちゃうんやろ?」


NCO


「違います。」


荒木


「ほな膝から降り。」


NCO


「嫌です。」


荒木


「なんでや。」


NCO


「居心地が良いので。」


新木


「猫や。」


NCO


「違います。」


荒木


「猫や。」


NCO


「違います。」


(約15秒沈黙)


NCO


「……今日は。」


荒木


「ん?」


NCO


「今日は、猫でも構いません。」


(NCO-214-JPはそのまま眠り始める。)


荒木


「新木。」


新木


「なんや。」


荒木


「勝ったんちゃう?」


新木


「いや。」


「向こうが折れてくれただけや。」


---


**担当研究員所見**


> 「結局猫なんやけど、『自分で決めたい』いう気持ちだけは本物なんやろな。」

>

> — 新木慎介


**管理主任コメント**


> 「本人が『今日は猫でも構わない』と言った以上、本日は猫として扱って差し支えありません。ただし翌日には『やはり違います』と言い始めるため、議論はほどほどにしてください。」


次回予告


NCO-217-JP「覚」


10月12日21時投稿予定

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