MDE内部資料 ## 東雲重工業株式会社
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MDE内部資料
## 東雲重工業株式会社・中央技術研修所押収資料解析/関連異常対象確保報告書
**文書区分:** 内部資料/関係職員限定
**担当部門:** MDE日本地域管轄部・情報解析課/異常対象回収部門
**関連事案:** 東雲重工業株式会社・中央技術研修所突入事案
**現場指揮官:** 紅林零奈
**作成日:** 令和██年██月██日
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### 概要
令和██年██月██日に実施された、東雲重工業株式会社所有「中央技術研修所」への突入作戦終了後、MDEは同施設内から複数の電子記録媒体、紙媒体、研究資料および一部の試験記録を回収した。
当該突入作戦については、東雲重工業側が自社の新規採用者を対象とした実地評価にMDEの介入を意図的に利用していた可能性が極めて高く、現在も別途調査が継続されている。
一方、同施設から回収された資料には、東雲重工業が過去に発見、取得、保管、研究、売買、輸送、あるいは一時的に管理していたと推定される多数の異常対象に関する情報が含まれていた。
情報解析課による初期解析の結果、記載された対象のうち複数について、現在位置の特定が可能と判断された。
このためMDEは関連施設および保管地点への追加調査を実施。
その結果、本報告書作成時点までに以下の異常対象三件の確保に成功している。
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# 確保対象一
## NCO-███-JP
### 「重量を忘れた鋼材」
**分類:異常物品**
**発見場所:** 栃木県██市・旧東雲重工業第三資材保管所
**関連資料上の名称:**
「SH-M試験材/無荷重鋼材」
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NCO-███-JPは、全長約二・四メートルの一般的なH形鋼に酷似した金属物体である。
外見上および成分分析上、一般的な構造用鋼材との差異は確認されていない。
本来の重量はおよそ██キログラムと推定される。
しかし、NCO-███-JPを人間が持ち上げようとした場合、その重量は約一・五キログラム程度として知覚される。
成人であれば片手でも容易に持ち運ぶことが可能である。
ところが。
NCO-███-JPを床面や車両、建築物などの無生物上へ置いた場合、本来の重量がそのまま作用する。
このため、対象を片手で持ち上げていた人物が机の上へ置いた結果、机が破損する事例が確認されている。
また、人間が直接保持している限り異常な軽量化が発生するものの、手袋、ロープ、クレーンなどを介して持ち上げた場合には効果が発生しない。
東雲重工業の資料では、この性質について、
『人間を荷重支持体として認識していない可能性』
と記載されている。
同社では建築資材への応用を目的として研究していたとみられる。
ただし実用化については、
『事故時の挙動が予測不能』
『作業員が軽量物と誤認する危険性あり』
『商品化見送り』
と記録されていた。
対象はMDE回収部隊により確保された。
回収作業中、隊員一名が対象を通常のアルミ製資材と誤認して床へ落とし、床材を破損している。
人的被害はなかった。
現在は専用架台上に固定し、管理されている。
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# 確保対象二
## NCO-███-JP
### 「昨日の部屋」
**分類:空間異常**
**発見場所:** 群馬県██町・東雲重工業旧社員寮
**関連資料上の名称:**
「反復室/R-12」
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対象は、東雲重工業が過去に社員寮として使用していた建物の一室である。
外観および室内構造に異常はない。
しかし、午前零時を経過すると室内の状態が前日の午前零時時点へ復元される。
復元対象には、
室内家具、
破損箇所、
配置された物品、
壁面の汚れ、
室温、
室内に残された液体、
などが含まれる。
一方、人間およびその他の生物は復元対象に含まれない。
例えば室内で紙を破いた場合、翌日午前零時を迎えると紙は破損前の状態へ戻る。
しかし、室内にいた人物の記憶は維持される。
東雲重工業はこの性質を利用し、破壊を伴う小規模な試験を繰り返していたとみられる。
押収資料には、
『消耗品費削減効果は高い』
との記述が確認されている。
その直後には、
『ただし前日に置いた弁当も復元されるため衛生管理上の問題あり』
との追記が存在する。
さらに。
調査の結果、室内から持ち出した物品についても午前零時になると消失し、室内へ復元されることが判明した。
このため対象室内に存在していた物品を外部へ恒久的に移動させることは困難である。
逆に、外部から持ち込んだ物品については午前零時になると室内から消失する。
消失した物品の行方は現在も不明。
東雲重工業側の記録には、
『持ち込み工具を翌日回収できないため、工具管理課より苦情』
と記載されている。
現在、対象室は建物全体を含めてMDE管理下に置かれている。
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# 確保対象三
## NCO-███-JP
### 「帰宅する作業員」
**分類:人型異常存在**
**発見場所:** 茨城県██市・東雲重工業旧第六機械工場
**東雲重工業側管理名称:**
「帰宅者」
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NCO-███-JPは、東雲重工業の旧式作業服を着用した成人男性の姿をした人型存在である。
氏名、年齢、出身地などは不明。
対象は毎日午後五時三十分になると、旧第六機械工場内部の休憩室に出現する。
出現直後。
対象は必ず、
「お疲れさまでした」
と発言する。
その後、工場出口へ向かって歩き始める。
対象を妨害しなかった場合、そのまま正門を通過し、約二百メートル先の交差点を曲がった時点で消失する。
そして翌日。
再び午後五時三十分になると休憩室へ出現する。
対象との会話は可能。
しかし、
「名前は?」
「どこへ帰るのか?」
「家族はいるのか?」
などの質問には明確な回答を行わない。
確認されている返答は、
「家に帰ります」
「今日も疲れました」
「また明日お願いします」
など。
対象を物理的に拘束した場合も、午後六時を過ぎると消失する。
そして翌日午後五時三十分。
再び休憩室へ出現する。
東雲重工業は少なくとも十年以上前から対象の存在を把握していた。
しかし。
対象による人的被害は一度も確認されていない。
さらに奇妙なことに。
東雲重工業側の勤務記録には、対象に対して長期間にわたり、
『出勤』
が記録されている。
給与支払い記録まで存在した。
ただし振込先口座は確認できない。
押収された社内文書には次の記録が残されている。
『業務上の問題なし』
『定刻出勤』
『無断欠勤なし』
『指示された簡易作業については実施可能』
『異常存在ではあるが勤務態度良好』
さらに。
人事部門によると思われる手書きの追記。
『下手な新人より真面目』
が確認された。
MDEによる確保作戦実施時。
対象は通常通り午後五時三十分に出現。
待機していたMDE職員を見て一時停止した。
担当職員が、
「MDEです。少しお話を聞かせてください」
と伝えたところ、対象は、
「今日は残業ですか?」
と質問した。
担当職員が返答に迷っている間に午後六時を迎え、対象は消失した。
翌日。
再度確保作戦を実施。
対象出現直後に専用収容設備へ誘導することに成功した。
しかし午後六時。
対象は収容室内部から消失。
翌日午後五時三十分。
旧第六機械工場の休憩室へ再出現した。
このため現在は、対象そのものではなく出現地点を含む旧第六機械工場全体をMDE管理区域としている。
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# 押収資料に関する補足
中央技術研修所から回収された東雲重工業内部資料には、上記三件以外にも多数の異常対象が記録されていた。
しかし。
記載された保管場所の多くは、MDEが現地へ到着した時点ですでに放棄されていた。
一部では建物そのものが解体済み。
別の地点では、保管設備だけを残して対象が消失していた。
また、資料に記載された住所へ向かったところ、一般企業の倉庫へ変更されていた事例も確認されている。
情報解析課では、
東雲重工業が中央技術研修所からの撤収とほぼ同時に、関連施設の移転を開始した可能性が高い
と判断している。
つまり。
今回確保できた三件は。
東雲重工業が保有していた異常対象のごく一部に過ぎない可能性がある。
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# 紅林零奈隊長所見
以下は現場指揮官・紅林零奈による追記である。
『中央技術研修所への突入について、結果だけ見れば一定の成果は得られた。』
『異常対象三件の所在を確認し、そのうち二件については管理下への移行に成功。残る人型対象についても出現地点を封鎖している。』
『したがって、作戦そのものを失敗と評価するつもりはない。』
『ただし。』
『東雲重工業が、なぜこれらの資料を完全に処分しなかったのかについては引き続き調査する必要がある。』
『あの会社は逃げる。』
『逃げることに関しては、こちらより慣れている。』
『その東雲が、MDEに利用されれば複数の異常対象へ到達できるだけの資料を残した。』
『単なる撤収時の処分漏れとは考えにくい。』
『我々が資料を奪ったのか。』
『それとも。』
『東雲が、我々に拾わせたのか。』
『現時点では判断できない。』
『なお、東雲重工業から本件に関する問い合わせが一件届いている。』
『内容は以下の通り。』
『――弊社旧管理物件の保全にご協力いただき、誠にありがとうございます。』
『この文章を書いた人間を見つけたら、私のところへ連れてきてほしい。』
『以上。』
――紅林零奈
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## 情報解析課追記
本報告書提出から二日後。
MDEが確保した「重量を忘れた鋼材」の旧保管場所から、東雲重工業のものと思われる封筒が発見された。
封筒はMDE回収部隊の到着以前から現場に存在していた可能性が高い。
内部には紙片が一枚。
記載内容は一文のみであった。
『お引き取りありがとうございます。』
現在。
当該文書が回収作戦以前から設置されていたものか。
あるいは回収作戦中または終了後に何者かが設置したものか。
確認できていない。
紅林零奈隊長には、まだ報告されていない。
――東雲重工業株式会社・中央技術研修所押収資料解析/関連異常対象確保報告書 了
次回予告
Tale「クレイン博士を驚かせろ!」
9月 23日21時投稿予定




