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異常世界の歩き方 MDE(国際異常研究機構)  作者: 神代千早


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35/85

第四章 予定外

毎日21時投稿

金土日18時、21時、2本投稿予定

この章は10分ぐらいで読めます

よかったらコメントください!

通路の照明は、半分ほど落ちていた。


非常灯だけが足元を照らしている。


悠真たちは、その薄暗い通路を走っていた。


先頭は戸塚。


真ん中に琴音。


最後尾に悠真。


三人とも、まだケースを持っている。


さっきまでいた拡張倉庫のせいで、距離感がおかしくなっていた。


自分たちが施設のどこにいるのか。


正確にはもう分からない。


ただ一つ分かるのは、MDEが後ろにいるということだけだった。


「追ってきてる?」


琴音が振り返る。


悠真も耳を澄ませた。


足音はする。


けれど、さっきより遠い。


「距離取ってるみたいだ」


「なんで?」


「分からない」


戸塚が言う。


「捕まえる気ないとか?」


「それはないだろ」


悠真は即答した。


紅林零奈の顔を思い出す。


あの目は、完全にこちらを逃がすつもりの目ではなかった。


ただ。


何かを考えていた。


東雲側の仕掛け。


試験。


監視。


そして、MDE。


零奈は、その全部を理解し始めていた。


「たぶん」


悠真が言う。


「向こうも、何かやろうとしてる」


琴音が嫌そうな顔をする。


「東雲だけでも面倒なのに?」


「相手もMDEだからね」


戸塚が笑う。


「今日一日で両方敵に回すの、すごくないか?」


「別に敵じゃないって説明されたじゃん」


「追ってくる敵じゃない存在って何だよ」


誰も答えられなかった。


そのとき。


前方に扉が見えた。


金属製。


大きな表示。


『第三実験棟』


悠真が足を止める。


「ここ通る?」


琴音が案内板を見る。


「第二集合地点に近づくなら、この先じゃない?」


戸塚が壁の地図を見る。


「たぶん」


琴音が笑う。


「今日は本当にその言葉多いね」


三人は扉へ近づく。


悠真がカードリーダーを見る。


仮入館証をかざした。


電子音。


緑。


「開いた」


扉が左右へ開く。


その向こうは、これまでとは少し違っていた。


広い通路。


左右に観察窓。


さらに奥には研究室らしき区画。


人の気配はない。


ただ。


いくつかの機械が動いている。


低い駆動音。


一定間隔で点滅するランプ。


琴音が小さく言った。


「ここ、まだ稼働してる」


「放棄する施設じゃなかったのか?」


戸塚が眉を寄せる。


悠真は周囲を見る。


「止める時間なかったんじゃない?」


「それとも」


琴音が言う。


「止める必要がない設備とか」


誰も触らなかった。


三人は通路を進む。


観察窓の向こう。


透明な箱の中に、黒い液体が浮いている。


床に接していない。


完全に空中に止まっている。


次の区画。


金属製の棒が一本置かれている。


なのに、その周囲だけ床がわずかに沈んでいる。


まるで、見た目以上に重い物体のようだった。


さらに先。


何もない部屋。


ただし、窓ガラスに貼られた注意書き。


『入室人数と退室人数が一致しない場合、直ちに封鎖すること』


琴音が顔を背けた。


「見なかったことにしよう」


「賛成」


戸塚も頷いた。


三人は足を速めた。


その頃。


零奈たちは、少し離れた場所から悠真たちの動きを追っていた。


隊員の一人が端末を見る。


「三名、第三実験棟へ入りました」


零奈が眉を寄せる。


「そこ何がある?」


「詳細不明です」


「また?」


「東雲側の内部資料が不足しています」


零奈はため息をつく。


「本当に面倒な会社」


別の隊員が言う。


「追跡を再開しますか?」


零奈はすぐには答えなかった。


「まだ」


「なぜです?」


「東雲が何を見てるのか、逆に見たい」


「試験内容を把握するためですか」


「それもある」


零奈は通路脇の監視カメラを見る。


「でも一番見たいのは」


少し間を置く。


「どこまで介入するか」


隊員が首を傾げる。


零奈は説明する。


「東雲は新人を死なせるつもりはない」


「はい」


「危険な設備には入れる」


「はい」


「でも、本当に危なくなったら助ける」


拡張倉庫の出口。


零奈がカメラへ話しかけたあと、東雲側は実際に出口を作った。


「つまり」


零奈は言う。


「試験のつもりでも、安全装置は残してる」


「それを利用するんですか?」


「利用する」


隊員が少し嫌な顔をする。


「向こうから見たら、こちらも試験対象みたいなものですが」


「だから腹が立ってるの」


零奈は即答した。


「人を勝手に使うなら」


少し笑う。


「こっちも使う」


その頃。


管理棟。


監視室では、零奈の発言がすべて聞かれていた。


女性社員が苦笑する。


「完全に対抗意識持たれてますよ」


男性社員は腕を組んでいる。


「予想の範囲内です」


「本当に?」


「ある程度は」


「さっきからその言い方多いですね」


男性社員は答えなかった。


モニターには、第三実験棟を進む悠真たち。


別画面には、距離を置いて追う零奈たち。


さらに別の画面には、他の新人グループ。


それぞれが施設内を進んでいる。


「全体状況は?」


男性社員が聞く。


「第二集合地点到達者、まだなし」


「MDE確保は?」


「現在八名」


「負傷者?」


「軽傷が数名。重傷者なし」


「順調ですね」


女性社員が別の画面を見る。


「ただし、紅林隊長の動きが想定外です」


「どの程度?」


「新人確保を優先していません」


男性社員の目が細くなる。


「なるほど」


「むしろ、こちらの介入条件を探っているように見えます」


「放っておきましょう」


女性社員が驚く。


「いいんですか?」


「彼女自身が試験内容を変えてくれるなら、それもデータです」


「新人側の評価に影響しますよ」


「実地評価とは、そういうものです」


女性社員は少し黙った。


それから小さく言う。


「人事って本当に嫌ですね」


「誉め言葉として受け取ります」


第三実験棟。


悠真たちは、一つの広い部屋へ入った。


中央には何もない。


ただし。


床に白線が引かれている。


四角形。


その内側だけ、材質が違う。


戸塚が立ち止まる。


「何これ」


琴音が壁の表示を見る。


『局所時間差試験区画』


三人とも黙った。


「戻る?」


琴音が言う。


「戻ろう」


悠真も即答した。


その瞬間。


背後の扉が閉じた。


三人が振り返る。


ロック音。


「嘘だろ」


戸塚が扉へ駆け寄る。


開かない。


琴音が操作盤を見る。


「外から閉じられた?」


「東雲が?」


「分からない」


悠真は周囲を見る。


別の出口。


部屋の反対側に一つ。


ただし、白線を通らなければならない。


「これ、通れってこと?」


戸塚が言う。


悠真は表示を見る。


小さな注意書き。


『区画内外における時間経過の差異に注意』


琴音が眉を寄せる。


「どれくらい差があるの」


どこにも書いていない。


「嫌だな」


戸塚が言う。


「でも他に道ない」


悠真は少し考えた。


「一人ずつ行くのは危ない」


「なんで?」


「時間差が大きかったら、別々になる」


琴音が頷く。


「じゃあ三人一緒」


「そうしよう」


三人は並んだ。


ケースを持つ。


一歩。


白線の中へ。


何も起こらない。


二歩。


空気が変わったような気がした。


音が遠くなる。


照明のちらつきが、妙にゆっくり見える。


琴音が悠真の腕を掴む。


「これ……」


「走るぞ」


三人は一気に区画を横切った。


反対側へ出る。


音が戻る。


照明も普通。


戸塚が振り返る。


「何秒?」


悠真は時計を見る。


自分の感覚では五秒程度。


表示。


三十八秒。


琴音も時計を見る。


「こっちも」


戸塚の顔が引きつる。


「中だと時間遅い?」


「多分」


その直後。


背後。


白線の反対側。


扉が開いた。


MDE隊員が入ってくる。


零奈もいる。


悠真たちが固まる。


零奈が三人を見る。


次に白線を見る。


そして。


「そこ、何?」


琴音が答える。


「時間がずれるみたいです」


零奈の顔が嫌そうに歪む。


「東雲……」


部下が端末を見る。


「隊長、迂回路ありません」


零奈は白線を見る。


「通るしかない?」


「そのようです」


悠真と零奈の目が合う。


零奈が言う。


「そこで待って」


「嫌です」


悠真が即答した。


零奈が少し驚く。


「即答する?」


「捕まるので」


「今から私たちも通るから」


「じゃあその間に逃げます」


「正直ね」


悠真たちは再び走り出した。


零奈が追おうとする。


だが白線。


一度足を止めた。


「……面倒」


隊員が言う。


「一斉に通過しましょう」


「そうね」


MDE側も区画へ入る。


その瞬間。


監視室。


職員が声を上げた。


「時間差区画、MDE部隊侵入」


男性社員が画面を見る。


「設定値は?」


「現在三・八倍」


「安全範囲です」


「新人側は?」


「通過済み」


女性社員が別画面を見る。


「このままだと距離が開きますね」


男性社員は何も言わない。


零奈たちは白線を越えた。


外へ出る。


時計を見る。


「……四十秒」


零奈が呟く。


「こちらでは十秒程度の感覚でした」


「そう」


零奈は前を見る。


新人たちはもういない。


「これ」


隊員が言う。


「東雲側が新人を逃がすために作動させたんでしょうか」


零奈は首を横に振る。


「違う」


「では?」


「最初からこういう設備」


零奈は考える。


「新人に使わせてる」


そして。


少し笑った。


「じゃあ」


隊員が嫌な予感を覚える。


「隊長?」


「次から逆にする」


「何をです?」


「東雲の設備」


零奈は壁の案内板を見る。


「新人が使えるなら、私たちも使える」


隊員は少し黙った。


「それ、東雲の思惑通りでは?」


「最初はね」


零奈は答える。


「でも、目的を変える」


「どういう意味です?」


零奈は端末を受け取る。


施設図。


逃走経路。


第二集合地点。


新人の推定位置。


「新人を追うだけじゃない」


指で地図をなぞる。


「逃げ道の先に回る」


隊員が顔を上げる。


「待ち伏せですか」


「違う」


零奈は地図の別の場所を指す。


「出口を確保する」


「MDE側で?」


「うん」


「それだと東雲の脱出経路を利用することになります」


「そう」


「向こうが閉鎖する可能性があります」


「それも見る」


隊員は少し考える。


「安全装置を作動させるかどうか」


「そういうこと」


零奈の表情が変わる。


「東雲は、新人を守りながら試験したい」


「だったら」


「どこまで私たちを邪魔できるか、見せてもらう」


監視室。


女性社員が音声を聞いていた。


「まずいですね」


男性社員も画面を見る。


「ええ」


「第二集合地点側へ先回りされます」


「分かっています」


「経路変更しますか?」


男性社員は少し考える。


「まだしない」


「でも」


「新人が気づくか見ます」


「何に?」


「逃げ道が読まれていることに」


女性社員がため息をつく。


「難易度上げすぎでは?」


「紅林零奈が来た時点で仕方ありません」


その頃。


悠真たちは施設の外周に近い通路まで来ていた。


窓から外が見える。


春の日差し。


フェンス。


その向こうに道路。


「出口近い!」


琴音の声が少し明るくなる。


戸塚も地図を見る。


「あと少しだ」


悠真は足を止めなかった。


ただ。


少し違和感がある。


ここまで来て。


MDEが来ない。


静かすぎる。


「待って」


悠真が言う。


二人が止まる。


「何?」


「おかしい」


琴音が周囲を見る。


「何が?」


「さっきまでずっと追われてた」


戸塚が言う。


「時間差で離したんじゃないのか?」


「それにしても静かすぎる」


悠真は窓を見る。


外。


普通。


だが。


第二集合地点へ向かうなら、ここから外へ出るのが一番早い。


つまり。


MDE側にも分かりやすい。


琴音が気づく。


「待ち伏せ?」


悠真が頷く。


「多分」


戸塚がケースを床へ置く。


「じゃあ別ルート?」


「探そう」


三人は出口手前で方向を変えた。


監視室。


職員が反応する。


「三枝班、主出口から離脱」


女性社員が少し笑う。


「気づきましたね」


男性社員も頷く。


「良好」


「紅林隊長側は?」


別画面。


零奈たちは、まさに主出口付近へ向かっていた。


「接触回避」


「加点で」


記録係が入力する。


ところが。


その直後。


別の警報が鳴った。


監視室の空気が変わる。


『警告』


『第三実験棟北側区画にて異常設備動作』


女性社員がモニターを見る。


「何?」


職員が操作する。


「自動起動です」


「試験設備?」


「違います」


画面が切り替わる。


一つの研究室。


透明な容器。


その中に、黒い球体。


わずかに浮いている。


警告表示。


「格納設備です」


男性社員の顔から笑みが消えた。


「停止できる?」


「応答なし」


「原因は?」


「不明」


「MDE侵入による電源系統変動の可能性」


男性社員が立ち上がる。


「試験中断準備」


女性社員が驚く。


「中断?」


「これは試験設備ではありません」


直後。


映像の中。


黒い球体が。


少し膨らんだ。


そして。


容器のガラスに。


一本。


亀裂が入った。


「保安部へ連絡」


男性社員の声が低くなる。


「新人の退避を最優先」


「MDE側には?」


一瞬迷う。


「通知してください」


「直接?」


「構いません」


女性社員が通信を開く。


その頃。


悠真たちは別の通路を進んでいた。


突然。


館内放送。


今までの機械音声とは違う。


人の声。


『全職員および新規採用者へ』


三人が止まる。


『試験を一時中断します』


悠真たちが顔を見合わせた。


琴音が言う。


「……何?」


放送は続く。


『第三実験棟北側区画にて、非試験対象設備の異常動作を確認』


戸塚の表情が変わる。


「非試験対象?」


『以降、評価より安全確保を優先してください』


悠真はケースを見る。


今までと違う。


声が違う。


雰囲気が違う。


これは。


本当に。


予定外。


その頃。


零奈の無線にも緊急通信が入っていた。


『MDE紅林部隊へ』


零奈が足を止める。


東雲重工からの直接通信。


『第三実験棟北側区画において異常設備の制御不全を確認』


零奈の表情が変わる。


「何が起きた?」


『現在調査中』


「新人は?」


『複数名が周辺区画に存在します』


零奈が端末を見る。


「危険度は?」


一瞬。


返答が遅れた。


それだけで十分だった。


「高いのね」


『可能性があります』


零奈が舌打ちする。


「試験は?」


『一時中断』


「やっとまともな判断したじゃない」


返事はなかった。


零奈は部下を見る。


「全班」


声が変わる。


今までの追跡ではない。


作戦指揮官の声。


「新人確保は後回し」


隊員たちが反応する。


「救助へ切り替える」


『了解』


「東雲職員とも情報共有」


一人が少し驚く。


「共同対応ですか?」


「今だけ」


零奈は走り出す。


「事故なら話は別」


監視室。


男性社員が通信を聞く。


女性社員が小さく言う。


「協力してくれるみたいですね」


「当然でしょう」


男性社員は答えた。


「彼らはそういう組織です」


「なら最初から試験に使わなければよかったのでは?」


「それとこれは別問題です」


「人事って本当に嫌ですね」


「先ほども聞きました」


警報がさらに強くなる。


第三実験棟。


黒い球体を収容していた容器。


亀裂が増えていく。


一本。


二本。


三本。


そして。


ガラスの向こう側。


何もなかったはずの壁が。


ゆっくり。


歪み始める。


施設内の照明が一斉に点滅した。


悠真たちは走っていた。


もう第二集合地点は関係ない。


試験も関係ない。


放送が指示した安全区画へ向かう。


途中。


別の新人たちと合流した。


五人。


その中の一人が足を引きずっている。


「大丈夫?」


琴音が声をかける。


「転んだだけ」


「歩ける?」


「なんとか」


戸塚が自分のケースを見る。


少し迷う。


そして。


床へ置いた。


琴音が驚く。


「捨てるの?」


「今は荷物いらないだろ」


戸塚は負傷した新人の腕を取る。


「行こう」


悠真もケースを見る。


まだ持っている。


ここまで守ってきた。


評価対象。


試験。


正式採用。


でも。


放送では。


評価より安全を優先しろと言った。


悠真は少しだけ考えた。


そして。


ケースを床へ置いた。


琴音も同じように置く。


三つの黒いケース。


誰も振り返らなかった。


監視室。


記録係がその映像を見る。


「三枝班、支給物放棄」


女性社員が聞く。


「評価は?」


男性社員は一瞬黙る。


それから。


「評価停止中です」


「ですよね」


しかし。


記録係は。


誰にも見えないように。


小さくメモを残した。


『全員、迷い短時間』


『状況判断良好』


その頃。


零奈たちは第三実験棟へ向かっていた。


通路の先。


東雲社員が二人待っている。


今まで逃げていた側。


追っていた側。


両者が初めて、同じ方向へ走る。


「状況説明」


零奈が言う。


東雲社員が端末を見せる。


「格納装置内部の異常物が活性化しています」


「何なの」


「局所空間圧縮試験中に発見された副生成物です」


「分かりやすく」


社員が少し考える。


「周囲の空間構造を引き寄せます」


零奈が顔をしかめる。


「もっと分かりやすく」


「放置すると建物内部が一か所へ潰れる可能性があります」


零奈が止まる。


「最初からそう言って」


社員も頷く。


「失礼しました」


「止め方は?」


「現在検討中です」


零奈が睨む。


「検討中?」


「通常停止手順が効きません」


「異常設備っていつもこうなの?」


社員は少しだけ考えた。


「比較的」


「嫌い、この会社」


二人は走る。


通路の先。


床が僅かに傾いている。


いや。


傾いているのではない。


空間そのものが。


一方向へ引かれている。


壁の表示板が斜めに見える。


天井の配線が、ゆっくり中央へ引っ張られている。


零奈の表情が変わる。


「新人はこの先?」


東雲社員が端末を見る。


「複数名」


「急ぐよ」


その頃。


悠真たちは。


同じ異常を。


反対側から見ていた。


廊下が。


曲がっている。


本来まっすぐのはずなのに。


奥へ行くほど。


一点に向かって狭くなる。


琴音が立ち止まる。


「……何これ」


悠真も息を呑む。


建物が壊れているのではない。


空間が。


縮んでいる。


そして。


その先から。


誰かの声。


「助けて!」


新人。


悠真たちは顔を見合わせた。


戸塚が負傷者を別の新人へ預ける。


「行く?」


琴音が聞く。


悠真は一瞬だけ迷った。


試験は止まった。


逃げればいい。


安全区画へ行けと言われている。


けれど。


声が聞こえる。


「行こう」


悠真が言った。


琴音も頷く。


戸塚が笑う。


「だと思った」


三人は。


逃げるべき方向とは逆へ。


走り出した。


次回予告


第五章 ようこそ、東雲重工業へ


9月22日18時投稿予定

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