NCO-104-JP 通称: 「卒業できない学校」
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異常存在収容・調査報告書
指定番号: NCO-104-JP
通称: 「卒業できない学校」
関連要注意団体: 鬼灯産業株式会社
NCO-104-JP「卒業できない学校」
管理等級(Containment Rating): C-3《封鎖級》
危険等級(Hazard Rating): H-3
影響規模(Scale Rating): L《Local》
研究優先度(Research Priority): A《最優先研究対象》
特殊指定(Designation): PERSISTENT《永続指定》
担当研究員: 御厨 冬馬 博士
収容担当施設: MDE日本支部・サイト83
異常種別: SPATIAL / TEMPORAL / IDENTITY ALTERATION
二次感染性: 未確認
※ただし、NCO-104-JPによる「在籍認定」を受けた人物への異常影響が確認されている。
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発見年月: 20██年4月
所在地: ██県██郡旧██村
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1. 特別管理手順
NCO-104-JPを中心とする半径2.5km以内への一般人の立ち入りは禁止されています。
対象地域へ接続する県道██号線および旧村道3路線は、「地盤崩落および旧鉱山施設の崩壊危険区域」を名目として封鎖してください。
NCO-104-JP周辺には常時2名以上のMDE監視要員を配置し、特に毎年3月18日から4月15日までを重点監視期間として指定します。
これは後述する「卒業処理」および「入学処理」が、この期間中に発生するためです。
NCO-104-JP内部への侵入調査には、主任担当研究員またはサイト管理責任者の許可が必要です。
侵入する職員は以下を遵守してください。
* 校内で本名を名乗らない。
* 教職員から「転入生」「新任教師」と呼ばれた場合、否定せず速やかに撤退する。
* 校内で配布された名札、学生証、職員証を着用しない。
* 出席簿へ氏名を記入しない。
* 「卒業式」への参加要請を拒否する。
* 校内に私物を24時間以上放置しない。
* 児童から「一緒に卒業しよう」と誘われても返答しない。
特に、NCO-104-JP内部で自身の氏名が記載された机、靴箱、名札、出席簿などを発見した場合、対象職員は直ちに校外へ退避してください。
当該現象を確認した職員の再侵入は禁止されます。
現在、NCO-104-JP内部に存在する児童および教職員を強制的に救出する試みは凍結されています。
この措置は20██年に実施された「104-乙救出作戦」の結果を受けたものです。
詳細は付録104-3を参照してください。
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2. 概要
NCO-104-JPは、██県██郡の山間部に存在する旧██村立██小学校です。
公的記録上、同校は昭和54年3月31日をもって児童数減少を理由に廃校となっています。
しかし現在に至るまで、NCO-104-JPでは通常の小学校と酷似した教育活動が継続されています。
平日午前7時40分頃から児童が登校し、午前8時25分から朝の会、その後通常授業、給食、清掃、帰りの会が実施されます。
校内には1年生から6年生までの児童が存在し、教職員も確認されています。
問題となるのは、
確認されている児童および教職員の大部分が、昭和54年当時から老化していない
という点です。
昭和54年度の卒業アルバムとの照合により、現在在籍している児童のうち少なくとも31名が当時の在校生と一致しています。
さらに教職員7名のうち4名についても、当時の職員名簿との一致が確認されています。
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3. 「卒業」に関する異常性
NCO-104-JPでは毎年3月24日に卒業式が実施されます。
式典そのものは一般的な小学校の卒業式と大きな差異はありません。
6年生は卒業証書を受け取り、在校生による送辞、卒業生による答辞、校歌斉唱などが行われます。
卒業生は式終了後、保護者と思われる人物とともに校門から退出します。
しかし翌4月。
前年に卒業したはずの児童全員が、
1年生として再び入学します。
外見年齢も6~7歳程度まで若返っています。
対象児童は前年までの学校生活について明確な記憶を保持していません。
ただし完全に記憶が消失しているわけではなく、一部児童は夢、既視感、あるいは絵画などの形で過去の学校生活を表現します。
これまでの観測から、同一児童が最低でも47回以上卒業している可能性があります。
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4. 新入生補充現象
NCO-104-JPにはもう一つ重大な異常性が存在します。
児童数が一定数以下になった場合、翌年度に新しい児童が出現します。
MDEではこれを、
「補充入学現象」
と呼称しています。
新入生として出現した児童の身元調査を実施した結果、その一部が日本国内で過去に行方不明となった児童と一致しました。
確認された最古の事例は19██年に██県で行方不明となった当時7歳の男児です。
対象は現在もNCO-104-JPに在籍しています。
外見年齢は推定10歳。
本人は自身について、
「ずっとこの村に住んでるよ」
と回答しています。
しかし戸籍上、当該児童が旧██村に居住した記録は存在しません。
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5. 発見経緯
20██年4月7日。
██県警察へ、
「廃村になった場所でランドセルを背負った子供を見た」
という通報が複数寄せられました。
当初は不法居住者の存在が疑われていました。
しかし現地確認を行った警察官2名が、廃校となっているはずの██小学校から多数の児童が下校する様子を確認。
さらに警察官の一人が、
「小学生時代に行方不明になった叔父と同じ顔の児童を見た」
と証言したことから異常事案としてMDEへ情報が移管されました。
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6. 鬼灯産業との関連
初期調査では、NCO-104-JPと鬼灯産業株式会社との関連は認識されていませんでした。
関連が発覚したのは、校舎北側に存在する旧焼却炉の撤去調査中です。
焼却炉基礎部分から、金属製施工銘板が発見されました。
銘板には以下の記載があります。
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旧██村立██小学校
教育施設恒久保存工事
昭和五十四年三月施工
施工:鬼灯産業株式会社
――末永くご利用ください。
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当時の旧██村役場資料を調査した結果、鬼灯産業との契約書が発見されました。
依頼者は当時の██小学校第17代校長、
████ ███
です。
廃校決定後、同校長は学校存続を求める住民運動を行っていました。
しかし児童数減少および財政上の問題から廃校決定は撤回されませんでした。
その約2週間後、校長個人の名義で鬼灯産業へ以下の依頼が行われています。
「この学校を、これからもずっと子供たちが通う学校として残してほしい。」
鬼灯産業は依頼を受理。
契約金額は███万円。
施工期間はわずか7日間でした。
契約書には、
施工目的:教育施設としての恒久的存続
保証期間:永久
と記載されています。
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7. 鬼灯産業への照会記録
20██年6月18日、MDE渉外部門は鬼灯産業株式会社へ正式な照会を実施しました。
以下はその際の記録です。
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MDE担当官:
現在、旧██小学校では本来存在しない児童を含む教育活動が継続しています。
鬼灯産業担当者:
承知しております。
MDE担当官:
あなた方の施工によるものですか。
鬼灯産業担当者:
弊社が施工した物件であることは間違いございません。
MDE担当官:
児童が卒業できません。
鬼灯産業担当者:
毎年度、卒業式は正常に実施されております。
MDE担当官:
卒業した児童が翌年また一年生になっている。
鬼灯産業担当者:
はい。
MDE担当官:
それを卒業とは呼ばない。
鬼灯産業担当者:
恐れ入りますが、契約内容に「卒業後、再入学してはならない」との条項はございません。
MDE担当官:
行方不明児童まで学校へ取り込まれている。
鬼灯産業担当者:
児童数が不足した場合の教育施設維持について、必要な措置を実施しております。
MDE担当官:
誰の許可で?
鬼灯産業担当者:
発注者様よりいただいたご依頼に基づいております。
MDE担当官:
発注者は40年以上前に死亡している。
(約6秒沈黙)
鬼灯産業担当者:
存じております。
MDE担当官:
では契約を解除してください。
鬼灯産業担当者:
申し訳ございません。
MDE担当官:
なぜです。
鬼灯産業担当者:
「発注者様から、契約解除のご依頼をいただいておりませんので。」
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照会はここで終了しています。
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付録104-1
校内調査記録
20██年9月12日。
御厨博士を含む調査班4名がNCO-104-JPへ侵入。
3階6年1組教室において、児童████への聞き取りを実施しました。
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御厨博士:
学校は楽しい?
児童:
うん。
御厨博士:
何年生?
児童:
六年生。
御厨博士:
もうすぐ卒業だね。
児童:
うん。
御厨博士:
卒業したら何したい?
児童は約10秒間沈黙。
児童:
一年生。
御厨博士:
……一年生になりたいの?
児童:
違うよ。
御厨博士:
じゃあ、どういう意味?
児童は御厨博士を見つめる。
児童:
「先生、卒業したことないの?」
御厨博士:
あるよ。
児童:
変なの。
御厨博士:
何が?
児童:
「卒業したら、一年生になるんだよ。」
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この直後、教室内の児童28名全員が同時に御厨博士を注視しました。
調査班は撤退しています。
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付録104-2
旧校長の日記
旧██村役場跡から発見。
昭和54年3月21日。
学校をなくしてはいけない。
子供がいなくなれば村が死ぬ。
村が死ねば、ここで生きた者たちまで忘れられる。
鬼灯さんは言った。
「学校を残すだけでしたら、難しい工事ではございません」
本当にありがたい。
これで来年も子供たちの声が聞ける。
再来年も。
その次も。
ずっと。
これが旧校長による最後の日記です。
旧校長は同年4月2日、自宅で死亡している状態で発見されています。
死因は心筋梗塞。
死亡時刻は午前8時23分。
同時刻、NCO-104-JPでは、
新年度最初の朝の会が開始されていました。
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付録104-3
104-乙救出作戦
20██年3月24日。
MDEは卒業式終了直後の6年生11名を校外へ移送しました。
対象児童はサイト-83臨時保護区画へ収容。
移送直後に異常は確認されませんでした。
しかし翌4月7日午前8時19分。
保護区画から児童11名全員が消失。
同日午前8時25分、NCO-104-JP一年生教室において同児童全員が確認されました。
さらに問題が発生しました。
救出作戦参加職員の一人、
研究補助員・████ ██
が出勤しませんでした。
自宅にも所在せず、通信にも応答なし。
午前9時02分。
NCO-104-JP内部監視映像に、
ランドセルを背負った推定6歳の男児
が確認されました。
顔貌照合の結果、
研究補助員████との一致率は99.8%。
一年生教室の出席簿には、新しい氏名が追加されていました。
████ ██。
同職員は現在もNCO-104-JP内部に存在しています。
本人に職員時代の記憶は確認されていません。
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付録104-4
御厨博士所見
鬼灯産業は契約に違反していない。
そこが一番厄介だ。
学校は残っている。
子供は通っている。
授業もある。
給食もある。
毎年卒業式までやっている。
発注者の言葉は、文字通り全部叶えられた。
ただ一つだけ、発注者が言わなかったことがある。
「子供たちを、いつか学校から送り出してやってほしい」
――御厨 冬馬
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付録104-5
20██年度定期監視記録
4月8日。
監視担当職員が校門付近で、これまで確認されていなかった黒色の軽貨物車を発見しました。
車体側面には、
鬼灯産業株式会社
の社名が記載されていました。
作業服姿の男性2名が段ボール箱を校内へ搬入。
MDE職員が接触したところ、男性は鬼灯産業の社員証を提示しました。
監視員:
何を運んでいる。
鬼灯産業社員:
新年度用品です。
監視員:
誰から依頼された。
鬼灯産業社員:
定期保守契約となっております。
監視員:
この学校はMDE管理下にある。
鬼灯産業社員:
存じております。
監視員:
では作業を中止しろ。
社員は約3秒間沈黙。
鬼灯産業社員:
「申し訳ございません。管理者様と発注者様は別のお客様ですので。」
社員2名はそのまま校内へ進入。
搬入された段ボール箱には、
「令和██年度 新入生用 12名分」
と記載されていました。
しかし当時、MDEが確認していた翌年度入学予定者は、
11名でした。
翌日。
██県██市において、7歳女児1名の行方不明届が提出されました。
現在、当該事案とNCO-104-JPとの関連を調査中です。
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追記
鬼灯産業株式会社に対する直接的な業務停止措置については、現在保留されています。
御厨博士は本決定について以下のコメントを提出しています。
「鬼灯が学校をこうしたことは間違いない。
だが、まだ分かっていないことがある。
鬼灯が保守をやめたとき、この学校がどうなるのかだ。
奴らを追い出すのは簡単だ。
その前に確認しろ。
あの会社が四十年以上、
何を校舎の中に留めているのかを。」
次回予告
# Tale『第十七代校長』
## 第一章 廃校
9月18日21時投稿予定




