NCO-28-JP 「わくわく博士のびっくりドッキリ鳥っキー」
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オブジェクト番号: NCO-28-JP
オブジェクト名: わくわく博士のびっくりドッキリ鳥っキー
管理等級(Containment Rating): C-2《管理級》
危険等級(Hazard Rating): H-2
影響規模(Scale Rating): L《Local》
研究優先度(Research Priority): B《優先研究対象》
特殊指定(Designation): UNSTABLE《不安定指定》
担当研究員: 竜田博士
収容担当施設: MDE日本支部・サイト83
異常種別: MEMETIC / COGNITOHAZARD
二次感染性: 確認済
特別管理手順
NCO-28-JPを構成する映像・音声・静止画・文字起こし、および当該異常から派生したと推定されるデジタルデータは、サイト83低危険度ミーム媒体保管庫の専用サーバーへ隔離してください。
原本映像が保存されている記録媒体は、サイト83情報災害研究部門・保管区画██の耐電磁保管容器に収容されます。
NCO-28-JPの無許可での再生は禁止されています。
実験を目的としてNCO-28-JPを視聴する場合、情報災害研究部門所属職員1名以上の立ち会いと、レベル3以上の研究許可を必要とします。
映像の連続視聴時間は原則として90秒を超えてはなりません。
ただし、後述するインシデント28-JP-04以降、担当研究員である竜田博士についてはこの制限の適用対象外となっています。
これは同博士がNCO-28-JPに対して耐性を獲得したためではありません。
既に持続的な曝露状態にあるためです。
竜田博士に対する追加的なNCO-28-JP曝露実験は、サイト83管理責任者の承認なしに実施してはなりません。
また、現在の竜田博士はNCO-28-JPに由来する二次的認識災害の発生源として機能している可能性が確認されています。
竜田博士と5分以上同一空間に滞在した職員、あるいは博士を連続して30秒以上視認した職員は、簡易ミーム汚染検査を受けてください。
検査項目には以下が含まれます。
1. 竜田博士を人間として正常に認識できるか。
2. 鳥類と鳥肉加工食品を正常に区別できるか。
3. 「唐揚げ」「フライドチキン」「チキンナゲット」「焼き鳥」「竜田揚げ」の各画像を正確に識別できるか。
4. ニワトリ、ハト、カラス、スズメ等の鳥類画像に対して食欲を訴えないか。
5. 竜田博士の顔写真を提示した際、食品名を回答しないか。
第5項において食品名を回答した職員は、直ちに二次曝露者として扱われます。
なお、「竜田揚げ」と回答した場合も同様です。
検査担当者が笑った場合、検査結果そのものには影響しません。
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概要
NCO-28-JPは、約11分42秒の子供向け教育番組に酷似した映像、および当該映像を起点として発生する一連のミーム性認識災害です。
映像の正式な制作元は確認されていません。
番組タイトルは、
『わくわく博士のびっくりドッキリ鳥っキー』
です。
映像は20██年代初頭の低予算児童向け教育番組を模倣した構成となっており、「わくわく博士」と自称する白衣姿の男性が、鳥類の生態について解説します。
背景には極端に彩度の高いCG映像が使用されており、画面上には常時、漫画的に描写されたニワトリ、ハト、スズメ、カラス等のキャラクターが表示されています。
番組開始時には、複数の児童と思われる声による、
「わくわく博士ー!」
という掛け声が入り、その直後に出演者が、
「はーい! 今日も元気に鳥さんの不思議を勉強しよう!」
と応答します。
続いて約8秒間のジングルが再生され、
「わくわく博士のー!」
「びっくり!」
「ドッキリ!」
「鳥っキー!」
というタイトルコールが行われます。
この時点では顕著な異常性は確認されません。
異常影響は、視聴開始からおよそ40~70秒後に発現します。
最初の症状は非常に軽微です。
曝露者は鳥類の映像に対し、
「なんとなく美味しそうに見える」
「揚げ物を食べたくなった」
「鳥の羽が衣に見えた」
「羽ばたく音が油の音に聞こえた」
などと証言します。
曝露時間が延長されるにつれ、影響は単なる連想から意味認識そのものの置換へ移行します。
重度曝露者は、生きた鳥類を視認した際、それを鳥として理解する能力を部分的または完全に喪失します。
代わりに対象を、
* 唐揚げ
* フライドチキン
* チキンナゲット
* チキンカツ
* 焼き鳥
* ローストチキン
* 手羽先
* 鶏そぼろ
* その他の鳥肉加工食品
として認識します。
この現象は単純な幻覚ではありません。
曝露者に対して「それは鳥である」と説明した場合、曝露者はその事実を論理的には理解できます。
例えば、ハトをフライドチキンとして認識している曝露者へ、
「その物体には羽毛が存在する」
「自発的に歩行している」
「心拍が存在する」
「遺伝子検査ではカワラバトである」
という情報を提示した場合、曝露者は全ての情報を理解できます。
しかし視覚的・意味的認識は修正されません。
重度曝露者の証言を引用します。
「分かってるんですよ。」
「鳥なんですよね?」
「羽もある。生きてる。飛ぶ。ハトなんですよ。」
「全部理解してます。」
「でもフライドチキンなんですよ。」
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発見経緯
NCO-28-JPは20██/██/██、██県██市内の閉鎖された児童館から回収されました。
同施設では閉鎖以前、「毎週金曜日の午後になると、誰も操作していないテレビから鳥の番組が流れる」という噂が存在していました。
当初は施設職員による悪戯と考えられていました。
しかし児童館閉鎖後も同様の現象が発生。
最終的には電源ケーブルを抜かれたブラウン管テレビからNCO-28-JPが再生されたことで、地域異常事象監視システムが当該情報を捕捉しました。
IARO日本支部が調査したところ、施設倉庫から「とりっきー だい1かい」と手書きされたVHSテープが発見されました。
問題の映像はこのVHSに収録されています。
VHSには製造会社を示す情報が存在しません。
また、番組に出演している「わくわく博士」の身元も現在まで特定されていません。
初期調査を担当した職員8名のうち5名が軽度の認識異常を発症。
1名が児童館前の電線に止まっていたカラスを見て、
「誰だよ、あんなところに唐揚げ置いたの」
と発言したことで、ミーム性異常の存在が疑われました。
NCO指定後、サイト83へ移送されています。
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実験記録28-JP-01
目的: 曝露時間と認識異常の相関調査
被験者: Dクラス職員███
視聴時間:30秒
結果:
異常なし。
被験者は、
「博士役の人のテンションがうざい」
と発言しました。
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視聴時間:60秒
結果:
ニワトリの映像に対し、
「ちょっと腹減ってきた」
と発言。
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視聴時間:120秒
結果:
ハトの画像を「唐揚げ」と誤認。
訂正すると、
「いや、ハトなのは分かるけど唐揚げじゃん」
と回答。
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視聴時間:300秒
結果:
鳥類画像18枚中16枚を鳥肉加工食品として回答。
生きたニワトリを提示したところ、
「でっかいフライドチキン」
と回答。
ニワトリが鳴くと、
「なんでフライドチキンが鳴いてんの?」
と強い混乱を示しました。
実験終了。
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インシデント28-JP-04
竜田博士曝露事故
20██/██/██、NCO-28-JPの映像解析中、サイト83映像解析室で機器障害が発生しました。
当時、解析室には担当研究員である竜田博士が単独で勤務していました。
映像のフレーム解析中、使用していた端末が操作不能となり、NCO-28-JPが自動的に全画面再生されました。
緊急停止操作は反応しませんでした。
同時に解析室の電子ロックが約14分間作動不能となっています。
結果として竜田博士は、NCO-28-JPを11分42秒、最初から最後まで視聴しました。
救助班が解析室へ突入した際、竜田博士は椅子に座ったまま無言でモニターを見つめていました。
意識は清明でした。
救助班との会話能力にも異常はありませんでした。
しかし、解析室から医療区画へ移送する途中、廊下の窓からハトを視認した博士は立ち止まりました。
以下はボディカメラ記録からの抜粋です。
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警備員: 博士? どうしました?
竜田博士: ……。
警備員: 竜田博士?
竜田博士: あそこ。
警備員: はい。
竜田博士: フライドチキンが歩いてる。
警備員: ……。
竜田博士: いや。
竜田博士: 待て。
竜田博士: 違う。
警備員: 何がです?
竜田博士: ハトだ。
警備員: はい。
竜田博士: ハトなのは分かる。
警備員: はい。
竜田博士: でもどう見てもフライドチキンなんだよ。
警備員: …………。
竜田博士: なんで飛んでんだよ、あのフライドチキン。
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その後の検査により、竜田博士には極めて重度かつ持続性の認識異常が定着していることが判明しました。
現在まで症状の改善は確認されていません。
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NCO-28-JP-2
竜田博士に発生した二次異常
インシデント28-JP-04から約72時間後、従来確認されていなかった新たな異常が発見されました。
これは竜田博士本人ではなく、竜田博士を視認した第三者に発生します。
一定時間以上同博士を視認した人物は、博士を人間としてではなく、鳥肉加工食品として認識する場合があります。
認識される食品には個人差があります。
確認例は以下の通りです。
研究員A: 巨大な唐揚げ
研究員B: フライドチキン
警備員C: チキンナゲット約40個の集合体
医療職員D: チキンカツ
事務職員E: 骨付きローストチキン
研究員F: 竜田揚げ
最後の回答について竜田博士は、
「絶対名前に引っ張られてるだろ」
とコメントしています。
しかし認識異常発生中の被験者は、竜田博士の声を正常に聞き取ることができます。
また、博士の発言内容、人格、役職についても理解できます。
つまり、
「目の前に存在している巨大な唐揚げが竜田博士である」
という矛盾した認識が成立します。
軽度曝露者では数秒から数分で正常認識へ復帰します。
一方、重度曝露者では視覚だけでなく嗅覚・聴覚にも影響が及び、
「揚げ油の匂いがする」
「歩くたびに衣が擦れる音がする」
「白衣がレモンに見える」
等の証言が確認されています。
このため竜田博士は暫定的にNCO-28-JP-2として指定されています。
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インシデント28-JP-07
サイト83第2廊下において、過労状態にあった竜田博士が転倒し、一時的に意識を失いました。
その場を通過した二次曝露状態の研究員██は、警備部門へ以下の連絡を行いました。
「第2廊下に唐揚げが落ちています。」
警備担当者は当初これを清掃要請と判断しました。
約4分後、別の職員が現場を通過し、倒れている竜田博士を発見しました。
幸い博士に重篤な外傷はありませんでした。
この事案以降、竜田博士を食品として認識した場合であっても、
対象が会話する、移動する、白衣または職員証らしきものを装着している場合は人間として取り扱うこと
がサイト83内部規則に明記されています。
この規定について竜田博士は、
「そこから規定にしないとダメなのか、このサイトは」
と発言しました。
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追補28-JP-08
サイト83食堂利用規定改訂
20██/██/██付で、サイト83食堂利用規定第12項が以下の通り改訂されました。
第12項――鳥類および鳥肉加工食品に関する特別規定
サイト83食堂内において、唐揚げ、フライドチキン、チキンカツ、チキンナゲット、焼き鳥、ローストチキン、蒸し鶏、鶏そぼろ、その他鳥肉を原料とする食品が提供・持ち込みされており、かつ竜田博士が同一空間内に存在する場合、周囲の職員は必ず一声かけて当該食品の存在を博士へ告知してください。
告知形式は問いません。
推奨例:
「博士、唐揚げあります。」
「竜田先生、右のテーブルにフライドチキンありますよ。」
「博士、今日の定食チキンカツです。」
ただし、
「博士、鳥います。」
という表現は禁止されています。
生体の鳥類と加工食品の判別が困難になるためです。
生きた鳥類が食堂内へ侵入した場合には、
「博士、生きている方の鳥です。」
と明確に告知してください。
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規定制定の原因となった事案
20██/██/██、サイト83食堂へ入室した竜田博士は、入口付近のテーブルに置かれていたフライドチキン6ピースを「6羽のヒヨコ」と認識しました。
同時刻、窓外にはハシブトガラス1羽が存在していました。
博士は当該個体を「少し焦げた唐揚げ」と認識しました。
竜田博士は約14秒間両者を交互に見た後、
「ちょっと待て。どっちが生きてる?」
と発言。
周囲の職員による説明が開始されました。
しかし説明中、職員3名にNCO-28-JP-2の影響が発生。
2名が竜田博士を「巨大な唐揚げ」、1名が「白衣を着たチキンカツ」と認識しました。
そのうち1名が、
「唐揚げが唐揚げに怯えてる」
と発言。
竜田博士が、
「誰が唐揚げだ!」
と反論。
これを聞いた別の職員が笑い始めたことで食堂内の混乱が拡大し、最終的に██名が業務復帰まで約20分を要しました。
以上の事案を直接的な理由として、第12項が制定されています。
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追記
本規定は冗談ではありません。
サイト83勤務者は遵守してください。
なお、
「サイト83食堂から全ての鶏肉料理を撤去する」
という対策案も提出されましたが、竜田博士本人から、
「なんで俺一人のせいで全職員が唐揚げ食えなくなるんだ。俺に一声かければ済むだろ。」
との抗議が提出されたため却下されています。
また、食堂で「竜田揚げ」が提供される日に限り、食堂職員が竜田博士本人へ直接メニュー名を告知することは推奨されていません。
これはNCO-28-JPの異常性とは関係ありません。
過去4回、周囲の職員が笑いを堪えられず、業務に支障を来したためです。
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管理責任者追記:
竜田博士から、
「最後の一文を削除しろ」
との要請が提出されています。
却下しました。
— サイト83管理部門
次回予告
Tale-01『竜田博士は唐揚げがお嫌い』
9月16日21時投稿予定




