新人職員オリエンテーション 午前の部
集合時間前に皆さんお集りのようですね。少し早いですが始めちゃいましょうか。
えー、ではこれより新人職員に向けてのオリエンテーションを始めます。
皆さん初めまして。今回のオリエンテーションを担当します金井と申します。どうぞよろしくお願い致します。午前の部は全体向けの説明となります。新規入職予定の皆さんに組織の概要をつかんでもらうための説明です。
普段のオリエンテーションは、別の者が行っておるのですが緊急事態の後始末をするとのことで私が代理として説明を担当させていただいております。質問時間は十分とっておりますのでもし少しでも疑問点が浮かんだらそこでその都度ご質問いただければなと。
皆さんがこれから所属することになるMDEオフィシャル”IARO"(国際異常研究機構 International Anomaly Reserch Organization)は異常な物品、現象、そういったものを収容し研究することを目的とした組織です。活動範囲は世界中です。もちろん、アメリカやイギリス、日本といった主要国だけではありませんよ。砂漠やアマゾンの奥地はもちろん、南極や北極、深海や宇宙、ましてや異世界までもが私たちの活動範囲に当たります。.......皆さん驚かれてますね。そうはいってもだれもかれもそんな極地で勤務するわけではありませんよ。おそらくですが皆さんのほとんどは日本国内での勤務に終始すると思います。かという私もここに勤めてはや20数年になりますが生まれも育ちも東京、ここの勤務もずっと東京ですから。ここには日本全国から来た人たちが参加してますが、大小を問わなければ皆さんの地元にもIAROの拠点があるはずです。知ったらこんな近くにあるとはっ!てなりますよ。
それでは次に皆さんが深く関わっていくであろう異常についてですが、こちらの話は非常に難しいのですが.......オリエンテーションを理解していただくために簡単な概要だけ説明させていただきましょう。異常とは、すなわち、普通ではないことです。
それだけでは何もわからないって顔皆さんしてらっしゃるのですが、実はそんなもんなんです。言うなればあるべきではないものがあるということなのです。といってもこれではさすがに不親切すぎますからいくつか実例をお見せしましょうか。
これはごく普通の懐中電灯ですね。どこでも売っている少し高めのライトです。そんなことはどうでもいいのですが、こちらのライトの電源を入れるので皆さんちょっと見てください。普通の明るさですよね。よくあるライトです。これが、異常性がない普通のやつです。では、次は”異常な”懐中電灯を見てみましょうか。高砂助手5番の箱持ってきてもらえますか?
――はい。それではこれが”異常である”懐中電灯です。おっと電源付ける前に皆さん、この部屋に入る前に渡された遮光グラスと耳栓を取り出してください。これ掛けないと失明や失聴しますのできおつけて下さい。皆さん掛けましたね?では起動しますよ。
――ギィィィィィィィ――――ン――
.......どうでしたか?普通のライトはあまり強くない光でしだが、
こちらのライトは遮光グラス掛けていてもかなり眩しいぐらいの光の強さでした。ちなみにこれ野球のナイター照明の二倍以上の光の強さらしいです。音に関しても飛行機よりも音が強いらしいです。もちろん内部にそんな強い光や音の出るような構造もありません。これが、ここで”異常”に分類されている由縁ですね。
さて次の実例なのですが、スライドと動画でお見せしますがまだ目が慣れてない方もおるようですね。待ちますので大丈夫ですよ。では先にオブジェクトの概要だけ説明しましょうか。
NCO、つまりウチで管理してる異常オブジェクトのことですがわかりやすいオブジェクトから始めましょうか。
NCO-53-JPというオブジェクトについてお話します。NCO-53-JPというのは管理等級C-2、危険等級H-2、影響規模L...えー極低度の危険性を持つオブジェクトで、基本的には家猫(Felis silverstris catus)の一種です。猫については皆さんもご存じでしょうあの自由気ままで小さくて生意気だがかわいらしい生物です。猫は狭い隙間でも通り抜けることができ、よく猫は液体だなんて言われたりもしています。NCO-53-JPというのはその家猫の一種ですが、それ以上の能力及び耐性持っています。
詳細はお手元の資料にありますが、まずはいったん資料映像をご覧になってもらった方がよいでしょう。
.......はい、この画面の中央にいる生物がNCO-53-JPです。一般的な猫と比較しても違いはあまりありませんね。これから皆さんに見ていただくのは、NCO-53-JPに対するいくつかの実験記録とその結果です。まずは触れてみようとしてみます。手が猫を貫通しましたね。
つまり素手では触れないということです。では猫に触るにはどうしたらいいのか、次の実験を見てみましょう。つぎは鉛を縫い込んだ手袋をして触ろうとします。そしたら触れることはできましたが、低級作業員は腕をひっかかれてしまいました。まぁそれは今はどうでもいいのですが次の実験を見てみましょう。つぎはNCO-53-JPを密封した容器に入れる実験をします。実験結果は次の通りです。
NCO-53-JPは、そこに壁がなかったかのように容器の外に出てきました。一応容器は強化ガラス製で、完全密封していて外に出れるような隙間がないのに脱出して見せました。この検証で、NCO-53-JPが少なくとも一般的な猫と呼ばれる生物とは違うということがわかりますね。次の映像は低温、高温、放射線に対する実験ですがこちらは巻きで飛ばしますね。
はいこれらの映像を見ていただいた皆さんにはこのねこが異常性をもっていることが分かったと思います。通常の状態では触れられない点と、完全密封状態から物質関係なく透過するることがここでNCO-53-JPが異常であると認定し収容を行っているのです。
.......えー、これで”異常”というものが理解できたでしょうか? まぁ今回はオリエンテーションですので、概要だけ理解していただけたら結構です。入職後の研修で細かい部分についての講義がありますからね。
では次にIAROがどの程度のオブジェクトを発見収容しているかという話をしています。こちらの資料を見てください。
これは日本における直近5年間のオブジェクト発見数と以後のオブジェクト発見予想値です。大体年500前後ですが新規オブジェクト数が増加傾向になっております。レベルで色が分かれてまして、まぁ別の横文字があるのですが今は特に気にしなくていいです収容難易度だと思っといてください。先ほどの例で言いますと、ライトがレベル1の灰色でNCO-53-JPが青色のレベル2です。
近年緩やかではありますが発見されるオブジェクトが増加しているのがわかると思います。これに関しては、科学技術の進歩によって新規オブジェクトの発見が容易になったという側面があります。皆さんにも研修を積んだ後はこういったオブジェクトにかかわっていただくことになります。研究職、機動部隊、フィールドエージェントなど職種は様々です。皆さんのご活躍を楽しみにしています。
最後に一つだけ忠告を。相手をするのは人智を超えたものが多くて危険な物も沢山あります。決して油断はなさらないように。
『――館内放送をお知らせします。』
『サイト83内にて管理等級C-3アノマリーの一時的な収容違反が発生しました。現在、特務対応班が対応中です。一般職員および新人職員は指示があるまで現在地で待機してください。』
会場がざわつく。
金井は少し苦笑して、
「……失礼しました。皆さん驚かれたでしょうが、こうした緊急放送も私たちの日常です。現在の事案は既に対応班が向かっていますので、心配する必要はありません。」
と続ける。
数十秒後。
『訂正します。対象は再収容されました。オリエンテーションを再開してください。』
金井が一息ついて、
「……では、これもMDEの日常の一つだと思っていただければ結構です。」
そろそろいい時間ですので、午前のオリエンテーションを終わりにしたいと思います。午後のオリエンテーションは実際に皆さんが就く職種ごとに分かれて受けていただきます。それではお昼休憩に移りますので、食堂に案内します。では後ろの席の方から順に____
―――――――――――――――――――――――――――――――
紅林は食堂に流れこんでくる人々を眺めていた。男、女、老人、おそらくいや少なくとも人間であろうものまでその所属は様々のようである。中には子供にも見える人もおり、そのあまりの異様、いや、多様さに紅林は安堵の息を吐いた。ここには多種多様な者が所属していて見た目が異形の者もいれば、見た目が食べ物な博士もいる。年齢層も幅広く10代前半から100歳超えるものもここに所属している。
紅林は講義室の後列に座っており早く食堂に誘導され、ペペロンチーノを注文し最奥の席に座っていた。次々とオリエンテーションが終わった参加者が食堂に流れ込んでくる中、紅林の周りに誰一人として座ってないのである。
その理由は食堂が広いせいでもあるのだが、理由の1つとしては紅林にもある。年齢以上に幼い見た目。見た目によらず紅林自身から発せられるこの世界にはないような雰囲気と刺ヶしい視線が周囲の人間を遠ざけていた。 というか刺ヶしい視線はある一人に向けられていたのだが、、、
「おーい」
黙々と食事を続ける紅林。実際、紅林にとってこの手の疎外感や好奇の目は長く付き合い続けたもので、今更傷つく感性は持ち合わせてなかった。
「おーい紅林ちゃん」
これからの仕事に施行を巡らせ浮足立っている周囲の人間を観察していた紅林だったが...
「NCO.........」
さっきから呼びかけてくる人物にそれ以上しゃべらせまいと反応する。
「なんですか?あと、その名前で呼ばないでください」
「ここ空いてるね?座るよっ。あっ許可は別にいらないよ!勝手に座るから!」
そういいながら白衣の男が紅林の前に腰をおろした。
「あの~今日この食堂は新規入職者専用の区画だったはずでは?」
「いいのいいの!僕はここの管理者だからね。君だってよく知ってるでしょう?そういや君久しぶりに見たけどほんとに雰囲気変わってないねぇw」
とんだ暴論である
笑いながら減らず口を叩く男。紅林はこういった手合いの人間が大嫌いだった。しかし、非常に、本当に非常に残念なことに目の前の不愉快極まりない男が今後上司となる人間だ。ん?人間なのか?
まぁ直属の部下になるよりかはましだ。
「僕は普通の人間さ。まぁ、おんなじ異常を持つもの同士頑張ろうじゃないかまた今後ともよろしくね紅林ちゃん♪」
「できれば仕事以外で関わりたくないのですが.……」
「そんなこと言わないでほしいなー君がこっちに来てからの仲でしょぉ~。」
なんともしつこいこの男を紹介しておいたほうがいいだろう。この男はクレイン博士、ここ、サイト83の管理者である。そして組織の中で1,2を争う変人で災厄級の問題児だ。あぁ.......この世界の神はなんて残酷なのだろう。このような問題児が組織随一の研究者だなんて信じられるだろうか?考えるだけ頭が痛くなってきた。
あともう1つ言っておくべきことがある。ここに勤める職員には異常を持つ者もいる、例えば……目の前にいるやつがそうださっきから私の思考を読んできてほんと忌々しい。と言ってる私も異常持つ者の一人だ。多少は経緯が違うが今はまだいいだろう。
「上司に向かってそのいいようはひどくない?君が僕に冷たいのは今更だけどさぁ.......」
「ほかの人と同じように接してほしいのなら今一度自分の行動を振り返ってからにしてください。」
周りを見渡してみると奥から白衣を着た人が鬼の形相でこっちに来ているのがわかる。
「博士……まさかとは思いますが仕事放り出して来ました?」
「よくわかったね、いやぁ~書類仕事面倒でさー あっそうだ!紅林ちゃん、僕の権限で上級職員にしてあげるから書類仕事手伝ってよ!」
「冗談..じゃなかった、!ふざけてないでさっさと仕事に戻ってくださいよ。どうせ槇原さんに押し付けてきたんでしょ。そろそろ槇原さんの胃に穴が開くのでやめてあげてくださいね。」
「えぇ~どうしよ~」
「まったく.......これだから博士は……」
「うぐっ?!」
「ふふっ、、やっと見つけましたよぉ~は~か~せ~さっさと仕事に戻ってください、ただでさえあなたの起こした問題行動の始末書が多いんですからねっ!」
「わかった!わかったからネクタイ引っ張るのだけは!やめて!首っがっ締まるっからっ!」
「こうしないと博士あんた逃げるでしょっ!あっ林ちゃん久しぶり!また後でね!午後のオリエンテーションも頑張って!」
「はい!梶原さんまた後で!」
「いやー面白そうな話してましたね~あっ目の前失礼しますねー」
「盗み聞きとは感心しませんよ」
「いやーすんませんうちの癖でして。紅はんもここの関連上がりやろ?うちもそうなんですわー」
短時間に二度も同じようなやつに会うなんて今日は厄日に違いない
「ほとんどの新人さんはここのことようわからんていう人が大半やけんども、あんたは異常というのがわかっとりそうで仲間がおったわ!と思って声掛けさせてもらったんですわ。」
「.....helvettles」
「.....ん?なんて?」
「別に.......何も.......」
「そういや自己紹介してまへんでしたね、うちの名前は新木慎介 研究員として勤める予定で、一応戦闘もそれなりにできますわ。よろしくお願いしときます。そんであんたは?」
「紅林......澪奈」
「澪はん、これから同僚になるさかいよろしゅうなー」
「そんでなうちの専攻はな....」
呆れた顔をしている紅林を横目に自分の話を始める新木…
「つぎにな、古代魔術なんやけんど...」
話が止まる様子がない新木。ふと顔を上げると食堂の入り口にマイクを持った白衣来た女性が立っていた。
「えー皆さん休憩は取れましたでしょうか?午後の職種別オリエンテーションを始めますので、研究職志望の仮IDがMから始まる方は私についてきてください。」
「呼ばれてるわよ。」
「うちなこうゆう仮説立ててな........」
「新木!」
「ん?どないしたんや澪はん?」
我に返った様子で後ろを振り返る新木。周囲の人物が食堂から出始めていることに気が付き慌てて席を立った。新木は数歩歩くが思い出したように紅林のほうを振り返る。
「あれっ澪はんも一緒やないん?」
「私は別で、もうID持ってるから...」
「そうなん?ほんならまた会いましょか~」
そう言って小走りで食堂を出ていく新木。その新木と入れ替わるようにして白衣を着た男が入れ替わりに入ってきた。
「えーIDがTから始まる人は私についてきてください」
紅林が立ち上がり集団についていこうとすると後ろから呼び止められた。
「紅林ちゃんここにいたんだ!あなたはこっちよ博士に呼び出されてるわ。さぁ、行くわよ」
「えっ?、でもっ、オリエンテーションは?」
「午後の内容はあなたがもう知っていることだけよ。上からの呼び出しよ。」
これはまためんどくさいことに巻き込まれたな...と、聞きなれた声に引きずられながら紅林はそう感じた。
そして、午後のオリエンテーションが始まる。
次回予告
NCO-53-JP電子猫
09/04 20時投稿予定




