第4話「魔法と魔術」
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『八幡西区折尾地区に〈魔界軍〉所属の〈魔導機械兵〉出現っ!!【魔法戦姫マジピュリー部隊】、出動願いますっ!!』
小倉駅に魔獣ギャラスが出現してから数日後、〈魔界軍〉所属の魔人が、同じ北九州市の八幡西区に攻めて来た。
今回現れた魔人は〈魔導機械兵〉という特殊な兵士だが、これには二パターン存在する。
一つは、魔力で動く〈魔導機械〉と呼ばれる特殊な機械を自らの体内に埋め込んだ兵士、いわゆる改造人間的な存在、もう一つは全身がその魔導機械で作られた〈魔導機械人形〉と呼ばれるロボット兵士のことを指す。
前者の場合は自らの持つ魔力で埋め込んだ魔導機械を動かしているが、後者の場合は大気中のマナを取り込んで自身を動かしている。
今回現れたのは後者のパターンで、雷の魔術を扱う魔導機械人形だった。
出動要請を受けて、今回は【チームレッド】の二人、つまりマジピュリーレッドことユウトと、その守護騎士である炎の魔法師であるユウキが出動することとなった。
「っしゃあ!行くぜ、ユウキ!」
「ああっ!」
赤を基調としたセーラー服のようなヘソ出しの衣装、魔法少女装束を身に纏ったレッドと、肩や胸、腰回りなどに赤色のアーマープレートが付いた全体的に黒い特殊な戦闘スーツ、対魔装束を身に纏ったユウキが現場へと向かって飛び立って行った。
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現場である八幡西区折尾地区では、人型の魔導機械人形が雷の魔術を使って暴れており、それに対して現場付近に駐在している対魔兵士の人達(彼らは民間組織である〈ダブルナイン〉の所属ではなく、警察組織に所属する対魔兵士だ)が数人で応戦していた。
「お待たせしました!」
「ここからはアタイら、【魔法戦姫マジピュリー部隊】所属の【チームレッド】が対応させて頂きます!」
二人が降り立つと、対魔兵士達から歓声があがった。
「おおっ!来てくれたかっ!!」
「【チームレッド】だっ!!」
「おお!ラッキーっ!!俺【チームレッド】のファンなんだよっ!!」
「キャーっ!!マジピュリーレッドよーっ!!」
「後でサイン貰わなきゃっ♥」
【マジピュリー部隊】は美少女揃いなだけあって男女問わず人気なのだが、【チームレッド】に関しては特に女性からの人気が高く、現場では黄色い声の方が多かった。
まぁ、そもそも現在においては男性の数が女性に比べて少ないため、対魔兵士も女性の方が圧倒的に多いから黄色い声の方が多くなるのは必然とも言えるが。
「っしゃ!行くぞ、ユウキっ!!」
「ああ!さっさと終わらせてやるっ!!」
対魔兵士達と交代する形で魔導機械人形の前に立つ二人。
対して、人型の魔導機械人形は、やけに流暢な合成音声でこう言った。
『出たナ、魔法少女共ッ!我が名は〈魔界軍〉魔導機械兵隊所属〈デースロン〉!今日こそキサマらをこの手に捕らエ、我が主人である〈ガテゾーナ〉様に献上してやるゾッ!!』
「けっ!誰がテメェなんかに捕まってやるもんかよっ!『ファイアボゥル』っ!!」
レッドは先手必勝とばかりに魔導機械人形のデースロンに向かって炎の魔法を放つ。
『『サンダーソニック』ッ!』
対してデースロンは高速移動の雷の魔術を使ってレッドの攻撃を避ける。
「高速移動か!確かに厄介な術やけど…っ!」
高速で動くデースロンの姿を見失ってしまったレッドだが、その様子に焦りはなく、むしろ落ち着いていた。
「身内に雷使いがおるおかげで、その動きには慣れとっちゃん!!」
そして、振り向くと同時に炎の魔法を放つ。
「『ファイアパンチ』っ!!」
『ブベラァアアアアッ!?』
背後からレッドを攻撃しようとしていたデースロンに、レッドのカウンターが見事に決まった。
「おおっ!?マジで当たった!!」
「やるじゃねぇか、レッド!」
「半分くらいまぐれやったけどな!」
『お…、おのれぇ、魔法少女メ…ッ!!ならバッ!!』
再び加速状態に入ったデースロンの姿が見えなくなったかと思うと、今度はレッド達へと向かって雷の矢が四方八方から飛んできたのだ。
「くっ!?『サンダーアロー』か!」
「『サンダーソニック』を使いながらの『サンダーアロー』だって!?クソっ!?厄介過ぎんだろっ!!」
『クハハハッ!!どうダ!?我が必殺の『サンダーソニックアロー』ハッ!!』
姿は見えないが、デースロンの不敵な笑い声だけが聞こえてくる。
レッド達は四方八方から飛んでくる雷の矢を避けるのに精一杯だった。
「クソっ!?どうする、レッド!?」
「なんとかスキを見つけたいっちゃけど…、」
『クハハハッ!『サンダーソニック』の反動による自傷ダメージを期待しているのなら無駄だゾ!!我は魔導機械人形であるからナ!『サンダーソニック』による反動は受けんのだヨッ!!』
『サンダーソニック』は高速で移動出来るだけでなく、五感や思考も加速させるというメリットがある一方、デメリットとしてその分の身体への負担が大きく、短時間の使用でも肉体や精神にかなりの疲労感が出る。
俺が先日小倉駅でギャラス達と戦った時に使った際にも、その反動による一時的な目眩と激しい全身の筋肉痛に襲われ、そのスキをつかれて危うくギャラス達の餌食となるところだった。
だから基本的にこの術を使うのは、反動を受けた際にフォローしてくれる相方がいる時だけと言われている。
しかし、魔導機械人形であるデースロンにはその反動が無いという。
「ああ、そうかよっ!ならっ!ユウキ!」
「ああっ!レッド!」
レッドとユウキが向かい合い正面から抱き合うと、二人同時に別々の魔法を発動した。
「『ファイアシールド』っ!!」
「『ファイアバーニング』っ!!」
『何…ッ!?自爆魔法…ッ!?』
すると、レッドとユウキを中心に大爆発が起こった。
『ファイアバーニング』は自身を中心に炎の爆発に巻き込む自爆魔法なので、術者本人も大ダメージを負う術だ。
しかし、ユウキが防御魔法である『ファイアシールド』を自分達の周囲に膜状に貼り付け、レッドがその膜の上から『ファイアバーニング』を放つことで、自分達はノーダメージで周囲一帯を吹き飛ばすことを可能としたのだ。
勿論これは息の合った二人だからこそ可能なコンビネーションであり、少しでも『ファイアシールド』の膜がズレていたり(そもそも『ファイアシールド』は盾型か半円型が普通なので、膜のようにすること自体が難しい)、『ファイアバーニング』の発動場所がズレでもしたら、自分達も大ダメージを負うことになる。
結果として、二人は無傷で周囲一帯を吹き飛ばし、デースロンに大ダメージを与えることに成功していた。
『く…ッ!?お…、おのレェ…ッ!!』
「オレの|自爆魔法《『ファイアバーニング』》の範囲外にいたらお手上げやったけど、」
「遠距離から攻撃するにしても、『サンダーアロー』の射程を考えればギリギリ範囲内にはいるだろうと思ってたが、ビンゴだったぜ!」
『クソったれがぁあアッ!!『サン…、』
「「させるかよっ!!」」
デースロンに再び『サンダーソニック』を発動させられる前に、レッドとユウキは息の合ったタイミングで地面を蹴って飛び上がり、レッドが右足に、ユウキが左足にそれぞれ炎を纏わせて、デースロンに向かって飛び蹴りを放つ。
「「『ファイアキィイイイック』っ!!』」」
『ブッ!?ブベラァアアアアアアアアッ!?!?』
二人のダブルキックを食らったデースロンはその場で爆発炎上した。
「やべっ!?やり過ぎたか!?」
「相手が魔人ならやべぇけど、今回は魔導機械人形だからな、捕虜として捕まえたところでどうせ自爆されて終わりだったろうから、同じことだ」
着地したレッドが一瞬焦った表情を見せるが、同じく隣に着地したユウキが落ち着いてそうフォローした。
「それもそうやな」
「つーわけで【チームレッド】、これにて任務完了だ!」
その瞬間、付近で待機していた対魔兵士達からの歓声が沸き上がるのだった。
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ここで魔法と魔術について説明しよう。
魔術とは、体内に魔力を持つもの(魔人や魔獣)がその体内魔力を使って行使する術のことだ。
対して魔法とは、魔術を扱えない人間が魔石を使って行使する術のことで、この魔法を扱える者のことを魔法師と呼ぶ。
これらの違いに関してだが、魔術には出来て魔法には出来ない事象や、その逆の事象があったりはするが、基本的に魔法と魔術はほぼ同じものと考えていい。
だから、『ファイアボゥル』や『サンダーソニック』といった術の名前は魔法と魔術で共通している。
そして、魔法師になれるかどうか、つまり魔石を使って魔法を扱えるかどうかは、純粋に生まれながらの才能のようなもので、運動神経が良いとか悪いというような個性の延長のようなものらしく、後天的にどうにかなる要素ではないそうだ。
そこで、魔法師ではない俺のような人間が科学的に魔法を扱えるようにと開発されたのがマルチマギデバイスで、これは仕込まれた魔石を科学的に起動し、魔法陣によってプログラミングされた術式を発動させることで、デバイス自体が魔法を使ってくれるというシステムになる。
魔法師ではない俺が魔法騎士として魔法を扱えているのは、この最新鋭の魔法科学技術によるものなのだ。
それから魔力属性について。
魔力属性には炎、水、雷、闇の四つの属性がある。
そして、大気中のマナにはこれら全ての魔力元素が含まれており、それを凝縮した魔石にも当然全ての魔力元素が含まれている。
魔法師はこの魔石に含まれる魔力元素の中から一つを無意識に抽出し、一つの属性の魔法のみを使用する(この魔力元素を選び取る事が出来る能力が魔法師としての才能ということになる)。
そして、一人の魔法師が扱える魔力属性は原則一つで、例えば炎の魔法師が途中から水の魔法師に転職することは一部の例外を除いて出来ない。
対して魔人は、一つの魔力元素からなる〈魔核〉と呼ばれる組織を体内に有しており、その魔核から生み出させる魔力を使って魔術を操ることになる。
故に、魔人達もまた扱える魔力属性は一つのみとなる。
そして、ほとんどの魔人は闇の魔力を持った闇の魔術師となる一方、人間の魔法師は闇属性のマナを扱えないために闇の魔法師というのは存在しない。
ちなみに魔導機械人形はマナに含まれる四つの魔力元素の内、一つを攻撃用の魔力として使い、残りの三つを動力源としているらしい。
今回レッド達が戦った魔導機械人形の場合、雷の魔力元素を攻撃として使い、残りの炎、水、闇の魔力元素を動力源として動いていたということになる。
だから、厳密な定義では魔導機械人形が使っているのは魔法ということになるのだが、〈魔界軍〉所属の兵士の扱っている術ということで便宜上魔術と呼称している。
そしてそれ以外に、『転移』魔法(魔術)などといった攻撃に用いられる魔法(魔術)以外の属性の無い術も存在する。
これらの魔法は、魔人であれば自身の魔力を用いて、魔法師の場合は専用の魔法陣にマナを注ぎ込むことで魔法陣を起動して術を発動するという感じになる。
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魔導機械人形のデースロンを破壊し、見事勝利したマジピュリーレッドことユウトと、その相棒であるユウキが〈ダブルナイン〉に帰還し、隊長である瑠璃さんに報告をしていた。
ちなみにこの場には俺を含め【マジピュリー部隊】のメンバー全員が集まっていた。
「…という感じで、最後は思わず本気でやってしまってデースロンを爆破させてしまいました、スイマセン!」
「それに関しては責任は問いません。あなた方対魔兵士には、状況に応じてやむを得ないという判断の元で敵性戦力の排除が認められています。この場合の排除とは、殺害や破壊も含まれます。
今回の場合は敵が魔導機械人形であり、仮に捕縛出来たところで過去の事例から自爆されていた可能性が非常に高いため、あの場での爆破はやむを得ない判断だったと認められます」
「だろ?アタイの言った通り、問題無いって!」
「それは分かっとったけど、それとこれとは別っつーか、報告と謝罪だけはしとかんといかんやろ!」
「結都さんの言う通りです。こういうのは形式が大事ですからね」
「はーい、了解でーす」
そんな感じで二人の報告は終わり、話題は件のデースロンの背後にいる魔人の【幹部】の話になった。
「今回の魔導機械人形ですが、確かに『我が主人である〈ガテゾーナ〉』と口にしていたのですね?」
「はい、そう言ってました」
瑠璃さんの問いにユウトはそうハッキリと答えた。
「となると、やはり今回現れた敵も【クラリス団】の一員ということですね」
【クラリス団】とは、〈魔界軍〉【大幹部】である〈クラリス公爵〉率いる【幹部】集団とその部下達のことである。
【大幹部】である〈クラリス・ブラック〉を筆頭に、【幹部】〈ジャラク伯爵〉、魔界騎士軍軍長である【幹部】〈ボスガーナ子爵〉、魔導機械兵団団長である【幹部】〈ガテゾーナ〉、妖魔術師団団長である【幹部】〈マリン・バーロン〉、そしてキメラ魔人兵団団長である【幹部】〈ゲドリアーナ〉という五人の【幹部】が連なり、そこにそれぞれの率いる部隊が続いている。
今回現れたデースロンはその五人の【幹部】の内の一人である魔導機械兵団団長のガテゾーナの部下だった。
「この一ヶ月、魔導機械兵団だけでなく、魔界騎士軍や妖魔術師団の魔人達が福岡に集中的に現れています。ということは……、」
「近々、【クラリス団】の【幹部】の内の誰かがやって来るかもしれない……!」
マリとマミの発言に、俺達全員の中に緊張感が走る。
【クラリス団】は現在、〈魔界軍〉の中でも特に恐れられている戦力で、一年前にたったの五人でアイルランドを占拠し、新たな〈魔界〉として支配をしたという実力者達だ。
そんな彼女達が次に狙いを定めたのが福岡、ということになるのだろう。
「ってことは、これまでの連中は様子見で派遣された連中ってことか…?」
「やろうな、オレら魔法少女の実力を確かめるための、な…」
「マジか〜…、ボク魔法少女引退したくなっちゃったよ〜…」
「フレンダちゃん、【チームブルー】としてわたしも頑張るけん、まだ引退はせんでね?」
「【チームブラック】としてウチらも頑張るでー、マチはん!」
「勿論っちゃ!」
「あたし達【チームピンク】も【クラリス団】には絶対負けません!」
「その意気っちゃ、ユイちゃん!」
「私達も【チームホワイト】として頑張らんとね、マサト君!」
「ああ!」
「頼もしい限りです。
ですが、【クラリス団】は二年前の『魚町事変』の際に現れた【大幹部】〈デストドン〉クラスか、あるいはそれ以上に脅威となりうる相手です。
皆さん、覚悟をしておいて下さいね」
「「「「「はい!」」」」」
そうして今回の報告会は終わり、この日は解散となるのだった。




