食べ物の恨みは怖い
ミオが伝えた材料を用意した、ジーンがミオの元に戻ってきたと同時にプリン作りが始まる。
ジーンが机の上に置いた材料の中には、先ほど持っていた銀色の容器が置かれていた。
ミオはその中が気になり、必死に背伸びをして中を見ようとしたが、背が小さくなっているからか中が見えない。
「気になるのか? これは、ミルクだ。……ほら」
必死に背伸びをしているミオを見て、ジーンは容器を持ってミオが見やすいように見してくれた。
容器の中には、並々とミルクが入っている。
(美味しそう……。これを飲み続けたら、私の背も伸びるかな?)
真剣な顔でミルクを見ていたミオに、ジーンは可笑しそうに笑いながら声を掛ける。
「気になるのなら飲んでみるか?」
「いいにょ!?」
「ほら。飲んでみるといい」
ジーンがミルクをコップにいれると、ミオに手渡した。
ミオはミルクを飲むならと思い、片手を腰に添え。グビグビとミルクを飲みほす。
ミルクは、味が濃くて美味しい。
「ぷはぁー!! おいちい!!」
「そうかそうか。これでお菓子を作るか」
「あい!!」
「では、ミオが言っていたお菓子作りを始めようか。」
ミオは、舌足らずな言葉で一生懸命説明をする。仕込みで忙しそうに動いていた人達は、一生懸命話しているミオを微笑ましそうに見ている。
「ふむ。それなら簡単だからすぐに作れそうだな」
「ミオもてちゅだう!」
「じゃぁ、ミオには卵を割るのと混ぜるのを任せてもいいか?」
「あい!!」
ミオは、ジーンに渡された大きい入れ物に卵を割る。上手く割れなかったからか、中に少しだけ殻が入ってしまった。
しょんぼりしているミオを見て、中に残っていた殻をジーンが手際よく取っていく。
その中にミルクや砂糖を入れ。ミオが一生懸命混ぜ終わると、二人で協力しながら液をこす。
ミオが器に液を入れている間に、ジーンが蒸すためにお湯を沸かし始める。そのお湯を沸かすために使っている火は、魔法で出しているのだ。
この世界の人達は、全員魔法を使えるらしい。
魔族も人間も全員使えると聞いたミオだったが、ミオはまだ幼いためクラウド達に魔法を使うことを反対されてしまった。反対されたミオだったが、すぐに大きくなって魔法を使いまくると意気込んでいるのだった……。
だが、目の前でジーンが魔法を使うところを見ると好奇心旺盛なミオは自分も魔法を使ってみたくなってしまった。
(使ってみたいけど……ダメダメ! クラウド様が反対しているんだもん、まだ幼い体で使わない方が良いんだ!! )
何故かクラウドを信頼しているミオは、欲を抑える為にジーンの作業を静かに見ていた。
ジーンは、プリン蒸している間にミオの説明を聞きながらカラメルを作り始める。
厨房には甘い匂いが漂い始めた。
味見で舐めさせてもらったカラメルは、ほろ苦いが甘くて美味しかった。
(これは、プリンの上にかけて食べるの楽しみ!!)
「うっ……」
ミオがわくわくしながら足をバタバタ動かしていると、目の前で作業をしていたジーンが口を手で抑えて顔を背けた。
「……?? どーちたの、ジーンしゃん」
「ゴホンッ……いや、何もない。ほら出来たぞ?」
「うわぁ~い!! おいちそー」
ジーンが液を固めた上にカラメルを乗せると、ミオに出来上がったプリンを手渡してくれた。
少し揺らしただけでプルプルと震え、美味しそうなのが分かる。
「ジーンしゃん、これをクラウドしゃまにもっていくぅ!」
「先にミオが食べなくて良いのか? 凄く食べたそうにしていたじゃないか」
ジーンが作っていた横で、目をキラキラさせながら作業を見ていたミオを知っていた為、ジーンはミオにそう声を掛ける。
だが、ミオは横に首を振った。
「クラウドしゃまといっちょにたべりゅの!」
「そうかそうか。魔王様と一緒に食べるのか。では、ミオの分も一緒に持っていこうか」
「あい! ミオしゃんがもちゅ!」
ミオが手を上にピンッと上げて返事をすると、ジーンや周りに居たもの達は微笑ましそうにミオを見ている。
作ったプリンを小さな籠に入れて、ミオに手渡してくれた。
籠を持ちながらニコニコしていたミオは、ジーンを見上げる。
「ジーンしゃん、ありあとーごじゃいまちた」
「俺も初めて作るお菓子を作れて楽しかったぞ。また来い」
「あい!」
ミオはジーンに頭を撫でられ、嬉しそうに目を細める。
「さて、魔王様の所に行って来ると良い」
「あい! いってきまちゅ!」
大事に籠を持ちながら、クラウドが居る部屋に向かう。
部屋を出たところで、シルベットに出会った。
「ミオ、お菓子作りは終わったのですか?」
「あい! クラウドしゃまの所にいくにょ!」
「そうですか、頑張ったミオにはこのお菓子をあげましょう。さて、クラウド様の所に一緒に行きましょうか。」
シルベットがポケットから棒つきキャンディーを出した。
シルベットと手を繋ぎながら、ミオはキャンディーを食べる。
(苺みたいな味で、甘くて美味しい~!)
もうすぐでクラウドがいる部屋に着くという時だった。
「おい、魔族! その子を離せ!!」
大きな音がした途端、何故かミオは知らない男に抱き抱えられていた。
「また貴方ですか。人間の勇者」
「こんな幼い子を、お菓子で拐うとは! 許さん!」
勇者と呼ばれた男とシルベットが、何か言い合っているがミオはそれどころでは無かった……。
作ったお菓子が入っていた籠が、抱き上げられた自分の足元に落ちているのだ。
クラウドの為にと作ったお菓子が、籠から飛び出して中身が出てしまっていた。
「俺が助けてやるから安心するんだぞ」
「……はなちて」
「ダメだ! 魔族は、俺達にとっては敵だ。もう少し我慢してくれ」
「……うぅぅぅぅ。クラウドしゃまぁぁぁぁぁ!!」
クラウドの為にと作ったお菓子が、ダメになったのを見て。ミオの瞳からは、涙が溢れてきた。
クラウドから貰った、ウサギのぬいぐるみが勇者と呼ばれている男に攻撃をしているが、受け流されている。
ミオがクラウドの名前を叫んだ瞬間、大きな爆発音とともに勇者の元に居たミオは違う人に抱き上げられた。
「……大丈夫か?」
安心する声が聞こえたミオは、抱きしめてくれていた人に抱きつく。
会ったばかりなのに、ミオは何故かクラウドの側が安心できたのだ……。




