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12.美味しい物は正義②


ミオが厨房に着き、まず探したのはジーンだった。

厨房の中では、忙しそうに皆が動いている。ミオは、邪魔にならないように外からジーンを探す。前を通る人や

、作業をしている人の顔を見る。だが、ジーンが見つからない。


「おっ? ミオ、そんな所で何をしているんだ?」


ミオがキョロキョロとしながら厨房を覗いていると、後ろからいきなり声を掛けられた。


「わっ!! ……ジーンしゃん!!」


「すまんな。びっくりさせたか? それよりも、こんな所で何をしているんだ?」


何処かに行っていたのか、ジーンは大きな銀色の容器を手に持ってミオの後ろから現れた。

ミオの横を通りすぎ、ジーンが厨房に入っていき台の上に容器を置くと、ミオの元へ戻ってきてくれた。


「あのね、あのね。ジーンしゃんにおにぇがいがあったの!」


「お願い?」


ミオの目線に合わせる様にジーンはしゃがんでくれた。


「あのね、クラウドしゃまにあまーいのちゅくりたいの!」


「なるほどな。お菓子を作るのか」


「あい!」


「だが、ミオは小さいからな……火とかも危ないし」


「だいじょーぶ!! かんたんなやちゅ、ちゅくりゅ!」


(火を使うときだけ、ジーンさんに手伝って貰わないといけないけれど……。)


「……分かった。だが、何かを切ったり火を使う時は俺がやるぞ?」


「あい! ありあとー!」


ジーンも仕事があって忙しいだろうに、手伝ってくれることにミオは感謝した。

ミオの返事を聞くと、ジーンは周りに居た人達に指示をする為にミオの側を少し離れた。


「……凄いな。料理長があんなに優しそうにしているの初めて見たよ。」


ミオの隣に立っていた男は、驚愕した様な表情をしながら言葉を落とす。


(そうなの? 初めて会った時からジーンさんは優しいからな~)


「ジーンしゃんは、しゅごくやさちいよ!」


「……チビッ子、人族なのに魔族の俺らが怖くないのか?」


「……??」


ミオは、男に言われた言葉に首を傾げる。

ミオ自身、クラウドもジーンも他の魔族達も怖いとは思った事が無かったのだ。


「ハハハッ! そうかそうか」


「クラウドしゃまもジーンしゃんも、みんなやちゃちくてだーいしゅき!」


「その言葉は、料理長本人に言ってやれ」


男は、苦笑いを浮かべながらミオの後ろを指差す。

何があるのかと後ろを振り向くと、ジーンが口に手を当てながら肩を震わしている。

顔は笑っている様な感じではなく、感動した様な表情をしていた。


「ジーンしゃん?」


「ミオ……お前はそのまま育ってくれ」


ジーンは、ミオの頭を優しく撫でる。


「ミオはねー、たいせちゅなひとをまもりゅためにちゅよくなるの!」


(あの時クラウド様が私を拾ってくれなかったら、あそこで死んでいたかもしれない……。この恩を返すためにも強くなって、皆の役に立ちたい。)


ミオが両手を握りしめて決心しているのを見たジーンは、微笑ましそうに微笑む。


「そうか、じゃぁ楽しみにしているな?」


「あい!」


「さて、ミオ。お菓子を作るぞ」


「あい! おねがいしましゅ!!」


「さて、まず手を洗わないといけないが……台が必要だ

な」


ミオが手を洗いやすいように台を持ってきてくれた。

その台に乗りながら、入念に手を洗う。


「しゅぐおっきくなりゅの!」


「そうだな。ミオもすぐ成長するだろうな。そうしたら、この台はいらなくなるな」


「あい!」


ジーンに抱き上げられて、ミオは台からおりる。

渡されたエプロンをした所で気づく。


(……何で子供用のエプロンがあるんだろう??)


今さっきお菓子を作りたいとクラウドに話した所だ。前からあったのかと思ったが、エプロンは綺麗で新品に近い。

疑問に思い、ミオが首を傾げているとジーンは可笑しそうに笑った。


「魔王様が急いで作らせたらしいぞ?」


「クラウドしゃまが!?」


「あぁ、子供用だからそんなに時間も掛からないだろうしな。作った奴も嬉しそうに作っていたらしいぞ?」


ジーンの話によると、ミオが入念に手を洗っている時にエプロンを持ってきてくれたらしい。

いつも服に興味がないクラウドが、細かくオーダーをしたことに作った人も嬉しそうに作っていたと、持ってきた人が言っていたらしい。


「クラウドしゃまと、しょの人にありあとーっていわにゃいと!」


「作ったやつは此処には居ないから、魔王様に言って伝えてもらったら良いんじゃないか?」


「しょうしゅるー!」


(後からクラウド様に忘れずに言わないと!)


作ってくれたエプロンは、白地でシンプルなデザインだがミオは好きだった。

後についた大きなリボンやフリルがついており可愛い。

ミオは髪を一つにまとめ、ジーンの方に近づく。



「よろちくおねがいしましゅ!!」


「ミオは何を作る予定だったんだ?」


「えーっとね。プリン!」


「プリン? 何だ、それは」


(そうか! この世界にはプリンはないんだ! あの甘くて美味しいお菓子を知らないなんて!)


「あのね、あのね。たまごちょ、みりゅくちょおしゃとう!」


「それだけで作れるのか?」


「あい!」


「それだったら、材料はあるから作れるな。凄いなミオは、そんなちっこいのにお菓子の作り方を知ってるなんて」


「えへへ~」


(中身は年取ってるなんて言えないよ……。)


ミオはそんな事を思いながら、材料を準備してくれているジーンの後ろ姿を眺めるのだった。



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