続新人戦8
『私は貴方で貴方は私、魔法使いは杖を振り剣士は剣を振り回す。隣人は首を吊って死に隣人は海に溺れて死ぬ。人と人が繋がり切れて髑髏の首輪は造られる。髑髏は新たに骸を求めあなたの元へと私を誘い貴方の命を奪い取る』
呪文を詠唱し終わると目の前に扉が現れる
盗賊ゾンビの群れが迫る中俺は声に従い扉の中に入っていく
中にはあらゆる角度から俺が見た世界
それはまるで万華鏡の中のように美しいな世界
その中に目の前の彼女、ガヘリスが立っている1枚がある
そっと近づいて片手で触る
するとパリんと音がしてその1枚が割れた
瞬間俺の体は強制的にその部屋から追い出され視界が暗転する
再び視界が開けた時彼女が目の前にいた
金髪碧眼で近くで感じるのは血ではなく花のようにいい香りだった
間近でみた彼女の瞳から見て取れたのは
彼女の心は壊れている
恐らく彼女の帝具は精神や魂に触れるレア中のレア
彼女の剣一つ一つには別の雰囲気を感じた
多重人格に似た状態
精神はきっとまともに保っていられなかったのだろう
彼女の初陣は若くして家の私兵を連れての盗賊狩り
聖王国近くの洞窟に住み着く有名な盗賊団だ
盗賊はかなりの数がいて私兵軍はかなり死んだと聞く
同腔内の掃討が終わったと思ったら入口から援軍が来て
レイ以外の私兵軍は全滅
レイが1人で残敵掃討を行い捕虜として3名が捕えられ見せしめにされた
その時俺はその中のひとりから聞いた
レイを守るため一緒に初陣していた弟がいたそうだ
姉を守ろうと身代わりになり刺された
それを見ていた盗賊達は大笑いでその様を見ていたとのこと
レイが覚醒したのはその後だ
その事件から1年以内に人々が悪と定義するような事件の首謀者や聖王国に対して不敬を行った輩を征伐し続けた
これは俺達でも知っていること
そしてあの異名『紅騎士レイ·ガヘリス』返り血に身を紅く染め上げ
狂人のように我が国の敵を薙ぎ倒す怪物
最初こそ誰しも英雄と讃えた戦士を逆に蔑み嫌悪する存在に民衆は変えた
孤独に身を焦がしたことだろう
弟への悲しみに身が引き裂かれそうになっただろう
人々から蔑まれ、やれと言われた事をやっただけなのに街頭で化け物扱いされる彼女の気持ちなんて俺には分からない···
分かろうとしたって分かれるものじゃないだろう···
彼女をこのまま切り伏せれば彼女は自分の必要性を見失うかもしれない
気が狂ったように心を閉ざし人を斬る化け物に成り果てるかもしれない
彼女はそれくらいひどい状況ある···
なら俺が出来ることは一つしかないだろう
ただ斬り捨てるのではない
俺が人の暖かさを、大切なものを、存在する意味を彼女に取り戻させること···俺にはそれしか思いつかない
『お前は甘すぎる、それが何時か仇になると断言しよう』
『さすがに見逃すのは感心しないなぁ?無防備な女を斬るのは嫌だけど彼女は野放しにしていいのかな?』
お前らの言い分は間違いじゃないと思う
俺の話が届かない可能性だって充分ある
その上で斬られる可能性だって
『でもやめないんだろ?』
『やめないんだよね?』
あぁ、やめねぇよ!
たとえ斬られても殴られても彼女に自分を取り戻して貰うまではな!
「レイ、今まで孤独だったんだよな?もう休んでいい、お前はもう紅騎士に戻らなくていいんだ···心が泣きたいなら泣いていいんだよ。叫びたいなら叫べばいい。俺は1度お前を見捨てた···けど今回は逆に逃がさない、お前は紅騎士レイ·ガヘリスじゃない円卓の一員レイ·ガヘリスで俺の妹分だ!だから戻ってこいレイ!」
俺はレイを抱きしめながら優しく語りかける
レイは離せと抵抗するも俺は離すことはなくむしろより強く抱きしめた
彼女は少しずつ抵抗が緩まりそして遂に瞳から涙が1滴零れ落ちた
「えっ?な、なんだよ!?なんだよこれ!?お、俺が泣いてるってのか?この紅騎士レイ·ガヘリスが···」
「お前は俺の妹のレイ·ガヘリスだ。紅騎士じゃない」
それを聞いてレイはダムが崩れたように涙を大量に流した
嗚咽を漏らし言葉にならない言葉を恥ずかしさを紛らわせるように言い続ける
そんな彼女を抱きしめてると彼女は嗚咽を止めて顔を上げる
その顔は涙で目が真っ赤になっていたけれど落ち着きを取り戻したように目つきは優しい元の彼女のものになり、安心したように見える
「アラン兄は、もう俺を置いて行かないか···?」
不安そうに上目で聞いてくる
「俺はお前を置いてかないぞレイ」
優しく頭を撫でてポンポンと軽く手を頭の上に置く
「兄様と前のように呼んでもいいか?」
「あぁ、まぁ公の場では気をつけてな」
2人でふふっ笑いあってレイはとうとう帰ってきた
紅く血に染まる騎士道という鎧からやっと解放されたんだ
『ヴォォォォオオオオッッッ!!!』
「ッ!?」
「ッ!?」
低い咆哮の方を見ると盗賊ゾンビが更に増えこっちに向かってくる
『ブザ···ゲ······ルナ······オバェ···ニハ···ジアワゼ···ナ···ド···』
「何なんだあいつらは?所詮PWの力で出された紛い物だろ?なぜ消えない?」
「彼らの怨念は強ぇ、俺が抑える楔を弱めたからあいつらが復讐の念でこの世に強く肯定されちまってるんだ」
そこで俺は一つの考えにたどり着く
「奴らは怨念の塊なんだな?つまり悪霊の類?」
「あぁ、元からその気は強かったが俺がちょっとあり方を変えてたんだ。だが俺の枷から解かれてる奴らは悪霊と変わら···なるほどさっすが兄様!」
レイも気づいたようだな
悪霊系の化け物や能力には神聖属性は火力を倍率3倍ダッ!
「レイ、俺に魔力を送ってくれ。生憎さっきの魔法でごっそり魔力持ってかれてな」
「分かった兄様、任せてくれ!」
レイの魔力が大量に流れてくる
ネクロマンサーの魔力量は世界最高峰だ
あまりある魔力が俺を包む
これなら行ける!!
『裁きを与える者』
大量の魔力全てを神聖魔力に変換する
神聖魔力を更に炎に変える
『神々の滅びは天地を創り我が神の焔は生命と冥界を繋ぐ門となる···あぁ神々の我が焔に汝が加護を賜らせよッ!《聖焔の門の番人の剣!!!》』
濃密な神聖を内包した焔がゾンビ共だけに降り注ぐ
聖焔は次々ゾンビを焼き払い数秒で消し炭になった
同時に勝者のコールが入る
「なななな、なんとぉ!!アスラン選手ガヘリス選手の魔術を打ち破り!更にはガヘリス選手を無傷で降伏させて勝利を掴み取ったぁ!!強すぎんぞ新人期待の星アスラン!!後でサインくれぇ!!」
リベートも大概だね···
「兄様、これからは兄様の従者としルフェイと共に兄様の補佐をさせて頂きます。兄様これからはずっと一緒だぜ!」
今までに見た事のない笑顔を彼女は見せてくれた




