第六十三話 訪問
朝食を食べた後、俺はひたすら大太刀を振るっていた。
あんな結果じゃ、文字通り全身全霊の一撃さえ師匠に通じないようじゃ、なんにも守れねぇじゃねえか!
「隆元流一ノ太刀 残響」
飛びながら残響を放つ。五つの荒い斬撃が地面を削り取る。荒い!まだ斬り裂けてねぇ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。っく」
大太刀を鞘に収めた後、こめかみを汗が伝う。今日はここまでにしておくか。
「おおっ、すげえ殺気だな」
「っ!?」
縁側に足を向けた瞬間、凄まじい気配が門から現れた。こんな奴を声をかけられるまで気づかないとは。俺もまだまだだな。
「それで?何の用だ」
「おお、怖い怖い。そんなに殺気を放つなよ」
そう睨むと、大男は手を上げ、降参のポーズを取る。なんとかして師匠を呼ばないとな。俺では太刀打ちできん。
「なんだいなんだい。物凄い闘気を放つ奴が現れたと思ったら、ただの筋肉バカかい」
「ゲッ」
少し後退りしたとき、後ろから師匠の声が響いた。
「師匠、知り合いか?」
「ああ。この街を作った人間の一人だよ」
なに!?師匠以外にも居たのか!
「ってとこは、あれか。それが噂の弟子か」
巌のように隆起した筋肉をした大男を見上げる。大男は、俺を値踏みするような目で睨め上げた。
「あまり強そうじゃないな。お前の弟子にしてみれば」
お前と比べたらな。と言おうとした瞬間、後ろから凄まじい殺気が放たれた。背中に冷や汗が滲む。
「そりゃあどういうことだい?あたしの弟子が弱いと?」
「ああ。殺気しか放てない野郎が強いわけがないじゃねぇか」
そう大男が話した時、さらに殺気が膨れがる。
「ふぅん?そこまで言うんだったら、試してみようじゃないか。あんたとあたしの弟子、どっちが強いか」
師匠にしては珍しく、挑戦的な口調でそう言った。この大男にはそれが効果的だったのか、大男は眉をピクリと動かした後、いつの間にか背負っていた大剣を手に持っていた。いつの間に。……そうか、わざと自分から闘気を放つことで、武器に視線を行かないようにしたのか。
「いいじゃねぇか。いい提案だ。野犬のような奴に負けるかよ!」
ああ、またか。またなのか。俺の了承を得ずに物事が進んでいくのか。まぁ、いい。俺も弱いと思われるのは不本意だ。
「ぶつぶつ話してないで、さっさとかかってこい」
「いうじゃねぇか!」
師匠を見習い、挑戦的な口調で誘う。すると、大男は凄まじい速さで向かってきた。師匠よりは、遅い。
背中から大太刀を放ち、振るわれた大剣を逸らす。
「な、に!?」
「その筋肉は、飾りか?」
大剣を逸らされたことによって生まれた隙に、渾身の蹴りを大男に叩き込んだ。




