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隻眼隻腕の剣士  作者: 柊 紗那
第六章 過去編
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六十二話 打ち合い

師匠の手から高速に振るわれた大太刀を見据え、その横っ腹に向かって思いっきり大太刀を振るう。大太刀と大太刀が噛み合い、ガキィィンと甲高い音を響かせながら俺に振るわれた大太刀が逸れ、俺の直ぐそこの地面を抉った。チィ、力いっぱい振るっても師匠の斬撃をそらすので精一杯か!


「っ!」


体勢を崩した師匠に踏み出そうとした瞬間、ゾクッとした背中に怖気が走った。ここは危険だと俺の頭が警鐘を鳴らす。その警鐘に従うように思いっきりその場から飛び退いた。

数瞬遅れて師匠の大太刀がとんぼ返りするように戻ってくる。


「おっ、よく避けたね弘次郎。今ので終わったと思ったんだけどね」


おかしい。師匠の大太刀は地面に食い込んでいたはず。あの瞬間に師匠の大太刀がもどってくるなんてことはあり得ない。いや、待て。もしあの一撃が本気じゃなかったとしたらどうだ?師匠と俺では力も技術も速さも桁違いだ。普通に考えて、力技で師匠の大太刀をそらせるわけがない。ってことはだ。師匠は俺を誘い込むためにわざと大太刀をそらさせた、ってことか。

危なかった。もし俺があそこで警鐘に従わなければ、俺の体は真っ二つになっていた。


「剣の才能以上に臆病さは特出してるね!」


そう言いながら師匠は横薙ぎに大太刀を振るう。さっきまでとは桁違いの速さに振られる大太刀を見て判断を下す。これは間違いなく本気の一撃。受けたら死ぬ!しかも、今俺は不自然な体勢だ。避けられるわけが、ない。

ならっ!


「ぐぅっ!」


「おおっ!?」


大太刀を斜めに構え、師匠の大太刀を受け流す。師匠は受け流されると思ってなかったのか、体勢を大きく前へ傾けた。


「はぁっ!」


受け流した大太刀が返ってくるまえに、師匠の横っ腹を蹴る!鍛えているとは思えないほど柔らかな感触が足に伝わり、師匠の軽い体は簡単に蹴り飛ばされた。


「っとと、あぶないねぇ」


師匠は蹴り飛ばされる前に咄嗟に蹴り飛ばされる方向に飛んだようで、トンッと軽い音を立てて着地した。

師匠はまだ体勢が立て直せてない。今なら俺の攻撃も通る!


「おぉぉぉ!」


師匠に駆け、真上に飛ぶ。力いっぱい飛んだ結果、師匠の身長を超えた。落下の衝撃と合わせて自分の体重を乗せて真下に立つ師匠に大太刀を振るう。


「ちっ」


その時、師匠がはじめて渋面を作った。


そして、俺が覚えているのはそこまでだった。







「う、あ……?」


気がついた時には、俺は部屋の布団で寝かされていた。ズキズキと頭が痛む。痛む頭を抑えながら記憶を探った。そう、か。俺はあのあと師匠に伸されたのか。あれは間違いなく全身全霊の一撃だったんだけどな。まさか逆に俺がやられるとは、思ってもいなかった。返り討ちあったのは残念だけども、はじめて師匠に渋面を作らせた。そのことが、ただただ嬉しい。


「全く、無茶をするよ」


「仕方が無い。ああでもしなきゃ師匠に渋面を作らせられなかった」


俺の枕元から、優しさがこもった声が響く。俺は、その声に安らぎながら言葉を返した。


「早く起きな。楓が朝食を作ってくれたよ」


「ああ、わかった」


痛む頭を抑えながら、俺は布団を退かして立ち上がる。そして、いい匂いが漂ってくる方向へと歩き始めた。


さて、どんな料理が出てくるか、楽しみだ。














































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