第六十話 盗賊退治その二
「はァ!」
裂帛の気合いと共に振り下ろされた大太刀は、迫り来る馬車を一刀の元に両断した。
真ん中に乗っていた薄汚い服を着た盗賊達の体が真っ二つに割れる。
左右に分かれた馬車は安定感を失い、切り口を上に倒れた。
「弘次郎!」
「ああ!」
割れた馬車からわらわらと出てくる盗賊達を見て、師匠は俺に声をかける。俺は構えを取りながら馬車から出てきた盗賊の一人に肉迫し、真一文字に切り裂いた。驚愕に目を見開いた盗賊の上半身と下半身が宙を舞う。バシャッと血が地面に撒き散らされた。
「せいりゃァ」
「がっ、はっ」
後ろから刀を振り上げて来た盗賊の腕を切り落とし、返す刀で首を落とす。血が吹き出る前に後ろへ飛び退いた。ゴロゴロと首が地面を転がり、数瞬遅れて頭をなくした首から血が雨のように降り注ぐ。
「てめぇらなにもんだ!」
俺に、師匠に馬車の一台に乗った盗賊達全員が殺されてから、他の馬車から盗賊達が降りてきた。遅い。遅すぎる。本来ならば俺達を視認してから降りてこなければ遅すぎるぞ。
「さぁて、何者だろうねぇ?」
師匠は盗賊の問答に血糊を落としながら応じる。しかし、その顔には嘲笑が浮かんでいた。
「てめっ」
「口を開く前に体を動かしたらどうだ?」
二言を継がせる前に喋る盗賊の首を跳ねる。師匠は俺が首を落としたところを見て「ヒュ〜」と口笛を吹いた。
「か、頭ァ!」
どうやらこの手応えのない盗賊が頭だったらしい。なんて間抜けなやつだ。
「弘次郎。面倒だから残響使いな」
「わかった」
師匠は蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行く盗賊達を鬱陶しそうに眺めながら、俺にそう許可を出す。俺の残響の射程は十m程。切り落とせる首は七つ。
盗賊達の数はおよそ四十を超えるため、残響を使っても面倒だ。
「隆元流一ノ太刀 残響」
射程内に盗賊達七人を入れ、残響を放つ。切り口はまだ少しギザギザしているものの、首を落とすことができた。
「うぉぉぉっ!」
逃げるのは得策じゃないと思い立ったのか、盗賊達四人が前後左右から襲いかかってきた。
「遅い」
駆けてくるのも、刀を抜くのも遅すぎる。俺には止まって見える。
前方の盗賊を一刀の元に切り伏せ、返す刀で右の盗賊を逆袈裟斬りに切り裂く。そのまま大太刀を引いて左の盗賊の鼻っ柱を柄で砕くと、仰け反った盗賊の首を跳ねながら後方の盗賊を袈裟斬りに断ち切った。
「お、早いね」
師匠はこっちに歩きながらそう俺に言う。早いといいながらも、師匠は俺が四人倒す間に残りの盗賊達を切り伏せていた。
全く、目標が遠すぎる。




