第五十三話 一ノ太刀仕上げ
翌日、俺は大太刀を抜き、同じく大太刀を抜いた師匠と鋭い視線を交わしていた。
数日前に残響を習得したばかりだが、まだ実戦段階にまで至っておらず、仕上げとして師匠と試合をすることになった。
「行くよ!」
師匠の口から合図が発せられると、目にも留まらぬ速度で肉迫して来る。
やはり速い!
「はぁ!」
師匠が肉迫するタイミングにあわせて大太刀を切り上げる。大太刀の刃がギラリと光り師匠へと迫るが、師匠は大太刀を難無く左へ身を翻して躱した。
「そこだ!」
「いいところをつくね!」
師匠が身を翻したことを見逃さず、すぐさま左へ切り返す。流石の師匠も体制を立て直せなかったのか、鍔迫り合った。互いに力を込め、チリチリとかみ合った大太刀の刃から火花が散る。
「なかなか様になってきたじゃないか」
「もう何年も剣を振ってるんだ。様になってなきゃ落ち込む」
「そうかい。んじゃ、その自信を切り崩そうとしますかね!」
師匠は足に力を込め、後ろへと跳躍する。鍔迫り合うことに気を取られていた俺は、師匠が後ろに下がったのに気付かずに前へつんのめってしまった。
「体がガラ空きだよ!」
「かはっ」
いつの間にか目の前へ来ていたのか、体制を崩した俺の腹に師匠によって蹴りを入れられ、吹き飛ばされた。
砂煙を上げながら枯山水の上を転がって行く。
「隆元流一ノ太刀 残響!」
師匠の近づいて来る足音に合わせて起き上がりながら残響を放つ。
「甘いね」
「なっ!?」
が、全て躱された。
冗談だろ!?あれをかわすのか!相変わらず化け物だな!
「まだ斬撃の数が足りない!」
「くっ!」
俺の苦し紛れの残響を躱した師匠は、勢いそのままに俺の大太刀を真上へ弾く。
しまった!避けられたのに気を取られて体制を崩しちまった!
終わりを覚悟して目をつむった俺だが、次の瞬間、横っ腹に来た衝撃によって二m先の岩に叩きつけられた。
「なに目をつむってるんだい!まだ終わりにしないよ!」
身体中を襲う痛みに耐えながら必死に足音を拾う。まだ大丈夫だ。二メートルあれば立て直せる。
「これで終わりにしようかい!」
「まだだ!」
師匠が大太刀を振るう前に岩を踏み台にして後ろへ宙返りし、師匠を飛び越える。俺を捉えるはずだった刃が俺の代わりに岩を両断した。
出鱈目だ!
「ぐっ」
大太刀を躱した俺だったが、地面へ着地した時に走った激痛に思わず膝を付く。それは師匠とって永久に等しい隙で、俺の首筋に大太刀を当てた。
「あれを躱したのはよかったけど、まあまだまだだね」
「ああ、そうだな」
それだけ返すのが精一杯で、俺は地面に倒れ伏した。




