第四十八話 夕食
「攫って来たのか」
「違うよ!あんたは師匠をどういう目で見てるんだい!」
「冗談だ。服装をみれば攫ってないことくらいわかる」
「全く」
麻で作られた嬢さんの体にあっていない大きさの服に、手入れがされてない光を失った髪。恐らく俺と同じ孤児だろう。
「それじゃ弘次郎、あたしはこの子の体を洗ってくるから。覗くんじゃないよ」
「誰が覗くか」
まあ、師匠のならわからないが。
「そんなことより」
「いや、同年代の裸のことに関してそんなことっていえるあんた、凄いね」
「とにかく、それが終わったら広間へ来てくれ。飯が出来た」
「あいよ」
鍋の縁を持ち、広間へと歩いていく。鍋の具は白菜に肉団子、しらたきにきのこ、冬菜だ。野菜中心の鍋だが、正直に言ってこれでバランスがいい。
広間の机の上に木の板を置き、その上に鍋を置く。
お玉で汁と具を掬い、器へ盛る。二人分しか用意していなかったが、俺の分を少なくすれば嬢さんの分はいいだろう。
待つこと数分、師匠と一緒に背に隠れるようにして嬢さんがやって来た。
「腹は減ってるだろ?まあ、座ってくれ」
「う、うん」
師匠の背からひょっこりと顔を出し、机の前へ座る。俺は静かにそこへ器を差し出した。師匠はそれを見てクスリと笑うと、俺の隣に腰掛けた。
「さ、食べな」
「おかわりはあるからな」
そう言って、俺と師匠は鍋を器に盛られた具を食べ始める。物珍しそうに見ていた嬢さんも、かなりの勢いでがっつき始めた。あぁ、そんなにがっついてると、
「うっ、んんぅ」
やっぱり喉につまらせたか。
苦笑しながらコップに水を注ぎ、嬢さんへ差し出す。嬢さんは水を受け取ると、勢いよく飲み始めた。
「ぷはっ、ありがとう」
「いや、いい」
素っ気なくそう返すと、再び俺は具を食べ始める。そんな俺を見て嬢さんは笑みを浮かべていた。




