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隻眼隻腕の剣士  作者: 柊 紗那
第六章 過去編
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第四十七話 鍛錬その二

「ほらほら!」


「くっ!せい!」


師匠の細腕から高速で右袈裟斬りに振られた大太刀を見据え、大太刀を振り上げ斜めに逸らす。前髪を一本断ち切り、顔を大太刀が掠めて行く。頬から流れる一筋の血を手の甲で拭い、師匠に向けて大太刀を逆左袈裟斬りに振るう。


「甘いよ!」


俺の中ではかなり速く振れたはずの斬撃を、師匠は片手で軽く弾き返す。弾き返された反動で仰け反った俺の首筋に、師匠は大太刀の刃を当てた。


「まだまだだね。でも、十二としては合格だ」


ニコリと微笑んだ師匠は、すっと大太刀を退かす。あれから五年経った今でも、師匠に勝つことができないでいた。













中庭にある井戸から水を組み、身体に掛ける。冷たい水が熱くなった体温を急速に冷ましていく。

鍛錬のあと、ここで汗を流すのが日課になっていた。


「ふぅん、立派になったじゃないか」


じゃり、じゃりと砂を踏みしめながら師匠が俺の傍らに立ち、俺の体をじっと見つめる。痩せていた頃とは違い、今ではすっかり筋肉がつき、がっしりとしている。太刀すら満足に振れなかったあのころが懐かしい。


「もういいか。弘次郎、明日は別の鍛錬をやるよ。そろそろ隆元流を教えてもいい頃と思ってね」


「それって……」


「ああ、よく頑張ったね!合格だよ!」


「よし!」


その言葉を聞いた時、俺は拳を握りしめていた。師匠との鍛錬がきつかった、というわけではないが、やはり早く技を教わりたいという気持ちはあった。それを明日から迎えられるということに嬉しさを感じるが、同時に耐えられるかどうかという不安も感じる。だが、やはりここまで来たことを喜ぶべきだと俺は思った。


「その様子だと大丈夫そうだね。ほら、中はいるよ!今日はあたしが昼飯を作ってあげようかね」


「待ってくれ!俺が作る!」


師匠に作られた日には明日の鍛錬に参加できない!


「わかったよ、お腹を壊させても悪いしね」


渋々認めた師匠にほっと一息付く。はだけていた上衣を羽織ると、師匠の後に続いて屋敷へと入る。


「師匠は何が食べたい?」


「うーん、そうだね。鍋だね」


鍋、か。それなら野菜を買ってこなきゃいけないな。確か冷蔵室にはなかったはず。買い出しにいくか。


「師匠、俺はこのまま買い出しにいってくる」


「そうかい?ならあたしも何処かへ行こうか」


何処かって何処、とは聞かない。師匠はそういうことを聞かれるのが嫌いだとわかっている。まあ気まぐれに散歩、ということもあるだろう。


草履を履き、籠をと財布を持って屋敷から外へ出る。この町はこの時代の他の村と違って立ち並ぶ建物も道路もやけに近代的だ。もともとここは荒れ地だったらしく、師匠の仲間たちが開拓して町にしたということらしい。以来師匠がこの町を襲う賊達から守護し、発展させている。町民達が賊達の相手をしなくていいためにここまで発展したと俺は考えているが、真偽の程はわからない。

それでも師匠が拾った子供にも効果があるらしく…………


「あらこうちゃん!お使いかしら?」


「おばさん、まあそんなところだ。それよりも、白菜はある?」


「あるよ、はい。まけておくからね」


「ありがとう」


「おう!こうじゃねえか!どうした?火菜野様は元気か?」


「相変わらず元気だよ」


「そうかそうか!」


「こうちゃんがいるって本当?火菜野様にお裾分けがしたくてね」


まあ、こんな風に群がってくるわけだ。もともと忌み嫌われていた俺にとって、人に話しかけられるというのは嬉しいもので、邪険にすることはない。それからおばさん達と話しながら買い出しを済ませ、屋敷の台所へ立つ。ちょうど鍋ができた頃に、師匠が帰ってきた。


「ただいま、弘次郎」


但し、俺と同じくらいの年の嬢さんを抱えて。


























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