第四十一話 告白
タンッと軽やかな音を立ててルリィが地面へ降り立つ。酔いは覚めたようで、ルリィは真剣な目で弘次郎の顔を見つめる。
「お前さん、今なにを?」
「キス、です。コウさん」
呆然と問う弘次郎に、毅然とした態度で答える。しかし、ルリィの足は生まれたばかりの子鹿のように震えていた。
「なんでこんなことをした?」
「言わなければ、わかりませんか?コウさんのことが好きだからですよ。本当はもっと雰囲気があるところで告白したかったですけど」
そう言うルリィはいつもより大人びていた。初めて見るルリィの一面に戸惑いながらも、弘次郎は口を開く。
「好きだって?俺をか?やめておけ。お前さんの告白は確かに嬉しい。が、俺よりももっと良いやつはいるだろう。なにも俺にするこたぁねぇ」
弘次郎の口から出たのは、遠回りながらも拒絶の言葉だった。それは弘次郎が今までに見せてきた他者との壁であり、ルリィ達に画している最後の一線でもあった。
「私は!コウさんが良いんです!」
歩き出そうとした弘次郎の耳に、今まで聞いたことがないほど大きなルリィの声が響いた。思わず弘次郎は足を止め、ルリィに振り向く。
「冷たくて、無愛想だけど、優しくて、暖かくて、困っている人を見たら放ってはおけない、そんなコウさんが大好きなんです!好きになったんです!最初は案内役だとか言って助けてくれました。私はいつ捨てられるのかビクビクしながらコウさんと過ごしてきました。でも、コウさんは捨てる気なんてはじめからなくて、ずっと連れて行ってくれる気だって最近気づいたんです」
「それはまだ東大陸の案内が残ってるからだろうが。案内が終わったらーー「嘘です!コウさんは私が南大陸しか行ったことがないって気づいてました」………」
ルリィの告白を聞き、弘次郎は僅かに目を見開く。言い訳しようと口を開くが、ルリィの言葉によって閉ざされた。
「コウさんは、コウさんは私のこと、どう思ってますか?助けてもらっておいて図々しい女だって、思ってますか?答えてください。なにを言われても、怒りませんから」
そう言って、ルリィは今にも泣きそうな顔で笑みを浮かべる。なにも答えず黙ると言う選択肢は確かにある。だが、ここまで真剣に想ってくれる相手にそんなことをすりゃぁ俺は最低だ。本当は、墓場まで持って行く気だったんだがな。仕方がねぇか。
顔をあげ、夜空を見つめる。そこには、ルリィとはじめてあった時と同じように星が輝いていた。
「なぁルリィ。凪火菜野に拾われたって話、したよな」
「はい」
「これからその先の話をする。もしその後も気持ちが変わらねぇようだったら、さっきの言葉に答えてやる」
「…………わかりました」
弘次郎の言葉になにも言うことなく、ルリィは頷いた。
腹ぁ括るか。あのことを話す覚悟を。
数回深呼吸した弘次郎は、静かに、音もなく口を開いた。




