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隻眼隻腕の剣士  作者: 柊 紗那
第五章 陸獣王
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第三十九話 ナルヴァ討伐後

黒の神が去った後、弘次郎はしばらくその場にたっていた。弘次郎の背中には冷たい汗が流れており、黒髪は額や頰にくっついている。なんだったんだ、あいつ。あんな物がここに存在すんのかよ。くっくっ。面白え。本当にこの世界は面白えな。


抜いたままだった大太刀を納刀すると踵を返し、弘次郎は船着場へと歩いて行く。そこには行きと同じく狐族の女性がたっていた。

狐族の女性は歩いてくる弘次郎の姿を視界に入れると弘次郎の前まで歩き、深く頭を下げた。


「判別不可能の化け物。ありがとう。エレナの頼みを聞いてくれて。本当にありがとう」


「礼を言われるまでのことはしてねぇよ。元々ナルヴァは討伐するつもりだったからな。早いか遅いかの違いだけだ。気にすんな」


手をひらひらと振って否定すると、弘次郎は小船へ歩いて行く。姿勢を正すと狐族の女性は弘次郎の背中を追って走り出した。


「狐族は同種族同士の絆が固いんだ。仲間が助けられたら、その助けた人は狐族の恩人。だから、アンタは狐族の恩人だよ。この大陸には私達獣人領があるから、いつでも来てくれていいよ。その時はもてなすから」


「また機会があったら、な」


狐族の女性は小船へ乗り込むと定位置につき、弘次郎は小船の端へ乗り込む。そんな弘次郎の姿を確認した狐族の女性は魔術エンジンを稼働させると、東大陸へ来た時と同様の速度で海を渡り始める。小船の中には会話はなかった。



















「着いたよ、判別不可能の化け物」


「ああ、ありがとな」


小船を走らせてから約四時間後、南大陸へ帰還した。弘次郎は小船から船着場へと下りると礼をいい、そのまま歩き出す。


「私の名前はナリスだよ!おどえといて!」


遠くなった弘次郎の背中へナリスはそう呼びかける。返事の代わりに振られた手を見て笑みを浮かべると、小船を走らせた。


ありがとう、ね。これほど俺に縁遠い言葉はない。助けたといえば聞こえはいいが、本当はただ強者と戦ったまでだ。助けようなんざ一欠片も思っちゃいなかった。まあ、それで人一人救えたんだから、良しとするか。少しは良心ってもんをもたねぇとな。


頭をかきながら、思考に没頭する弘次郎だった。
























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