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隻眼隻腕の剣士  作者: 柊 紗那
第五章 陸獣王
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第三十六話 戦闘開始

弘次郎達が煙を上げ続ける街へ着いた時、そこには街はなく、ただナルヴァだけが立っていた。快活に笑う露店のおばさんも、無愛想だけど優しい鍛冶屋も、少しセクハラ気味なお姉さんも、そして、妹のように可愛がってくれたイースさんも、みんないなくなってしまった。跡形もない街の跡地を、皆死んでしまったという事実を目の前に、エレナは地面に膝を付いて泣き出しはじめた。


「そん……な。街が、みんなが……うぅっ……一人に、しないでよぉ!」


そんはエレナを見て、弘次郎は悲しみに顔を歪める。こいつは酷え。幾ら何でもこんなになるまで暴れる必要ななかったんじゃねぇか?まるで、あの時の再現じゃねぇか。

弘次郎はゴツゴツとした無骨な大きな手を、エレナの頭に置く。


「エレナ。泣いてもいい。今は悲しみに暮れていたっていい。だけどな。絶対に悲しみに押し潰されるな」


ゆっくりと、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「もし悲しみに押し潰されそうになったら、エルカンテの冒険者ギルドにこい。いつだって歓迎してやる。彼処はただ馬鹿騒ぎするだけの場所だが、気を紛らすには最適だ。

前を見て、胸を張れ。お前さんを逃がしてくれたこの街の人の想いを、無駄にすんじゃねぇぞ。仇は俺が打ってやる」


熱くなるのは俺らしく無いが、今日ばかりはいいだろう。幼き頃の俺と同じ境遇の奴がいるんだ。仇を打ちたくとも力が足りずに打てないやつが目の前にな。陸獣王、お前さんだけは俺が殺してやる。


「隆元流歩法 音無」


未だ気づいていないナルヴァの体下に潜り込む。


「隆元流六ノ太刀 昇龍」


大太刀を上に抜き放つ。銀閃が煌めき、うねりながら斬撃が昇り竜のように上空へ昇り、ナルヴァを皮膚を切り裂く。


「グォォォォォォォォォッ!!」


「ちっ、浅いか!」


切られた場所から感じる僅かな痛み。長年感じることがなかった痛みを感じながら、ナルヴァは咆哮を上げ、切られた皮膚から血を流しながらナルヴァは二本の尻尾を弘次郎へ振るった。弘次郎は振るわれた二本の尻尾を、魔力を通した大太刀で弾く。これでやっと弾けんのかよ。なんて力だ。


「エレナァ!危ねぇから離れてろ!!」


「ぐすっ、はい」


エレナに話しながら弘次郎は右側から鞭の様に振るわれた二本の尻尾を後ろへ飛んで躱す。


「隆元流三ノ太刀 時雨」


尻尾を躱し終えた後直ぐさま弘次郎は四つ足の内前右足に肉迫し、切り裂き続ける。銀線が煌めき刀が撫でる度に、ナルヴァの足から血が噴き出す。


「隆元流九ノ太刀 薙風」


反撃を許さず弘次郎は後ろへ下がり、大太刀を薙ぎ払う。薙ぎ払われた大太刀から暴風が吹き荒れ、ナルヴァを吹き飛ばし、地面に叩きつける。


「グォォ」


むくりと起き上がり、ナルヴァは自分を吹き飛ばした弘次郎を忌々しげに睨みつける。


「こいよ。切り刻んでやる」


弘次郎は好戦的な笑みと、冷めた目を浮かべながら、ナルヴァと視線を交差させた。
















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