第三十四話 ナルヴァ討伐へ
弘次郎は残りのエールを飲み干し、椅子から立ち上がり、一階へ降りて狐族の少女の前へ立った。かなり切羽詰まってんな。
「俺がそうだが……どうした?」
「お願いです!助けてください!お願いします!」
狐族の少女は弘次郎の襟元を掴んで縋り付くと、泣きながらそういった。
「ナルヴァに、ナルヴァに襲われました」
消え入りそうな小声で呟いた狐族の少女の言葉に、冒険者ギルドの中に戦慄が走った。陸獣王を含めた四つの獣王は四獣王と呼ばれ、四つの大陸を守護する存在として知られている。四獣王は基本的に自分のテリトリーから動くことはなく、ましてや守護するはずの大陸で暴れるということは今までなかったことだ。しかも、陸獣王のランクは天災級。エルカルでやっと互角に戦えるくらいで、そんな化け物が暴れ始めたら大陸がどうなるか、想像難く無い。
「それは本当のことですか!?」
冒険者ギルドの奥から着物を身に纏ったエルフの女性が飛び出して来た。
「貴女は?」
「私はこの冒険者ギルドのギルドマスターを務めて居ます、セイラと申します。今の話は……」
「本当の、ことです」
セイラの問い掛けに答えた狐族の少女は顔を俯かせる。ナルヴァか。まあ、ちょうどいいのかね。どっちみち向かうと思っていたところだ。早いか遅いかの違いだろう。
「あー、お前さん名前は?」
「エレナといいます」
「エレナ、案内してくれ」
「来て、くれるのですか?」
僅かな期待と大きな不安を乗せた目を弘次郎に向け、ビクビクしながら問う。
「どっちみち討伐しに向かうところだったからな」
弘次郎はそっぽを向きながらぶっきらぼうにそう答えた。
「弘次郎様。お願いいたします。東大陸の運命は弘次郎様にかかっております」
「あいよ。エレナ、案内してくれ。それと、ルリィ、ダリア、カルミア。お前さんらは留守番だ」
弘次郎はエレナにそう言うと、ルリィ達にそう伝えた。ルリィ達は特に反論することなく頷き、二階へ戻って行った。
エレナはぱっと顔に笑顔を咲かせると、弘次郎の手を引いて歩き出した。




