第三十三話 再会
「やぁやぁおかえりコウジロウ!」
「ま、ただいまって言っておくか」
『自由都市エルカンテ』の冒険者ギルドへやってきた弘次郎を、エルカルは抱擁にて迎える。
レナス村での依頼を済ませた弘次郎は、『貿易都市ガリーニャ』で依頼の報告を済ませ、『自由都市エルカンテ』にやってきていた。理由は単純。ただそうした方がいいと思っただけである。
「エール一つとピカルジュース三つ」
「はーい!」
弘次郎は二階の定位置に着くと、二階に待機している受付嬢へエールとピカルジュースを頼む。待機していた受付嬢は嬉々として一階へ向かって行く。弘次郎がここへ来た当初は怯えていた物だが、今となると随分と慣れた物だ。
「エールとピカルジュースです」
「あいよ」
しばらくすると受付嬢がエールとピカルジュースをテーブルへ運んでくる。弘次郎はいつものごとく銀貨一枚を受付嬢に握らせた。
「ルリィさん、ピカルジュースとは何ですか?」
「『神秘の森』で採れるピカルという果物をジュースにしたもので、とっても甘くて美味しいですよ」
「ということは、ここでしか飲めないジュースなんですね」
「はい」
弘次郎はちらっとルリィ達へ視線を向けると、木で出来たジョッキを傾ける。向こうは向こうできゃっきゃとしているし、男同士で飲み交わしても問題なさそうだ。
「んで、エルカル。お前さんまさか前のままってわけじゃねぇよな?」
探るような弘次郎の視線に、エルカルは胸を張った。
「当たり前じゃないか。ちゃんと絶対級に上がったよ」
「やるな」
ランクが上がったことを聞き、弘次郎は素直に感嘆の声を出す。
「ど、どうしたんだい?やけに素直じゃないか」
「いや、まあな」
弘次郎はこの世界に来たばかりで、冒険者や魔物のことはまだ何も知らないが、冒険者ランクの上がりにくさは知っているつもりだ。
下級や上級までなら軽く上がるが、災害級となるとそうはいかなくなる。それが天災級となると高ランクの依頼を何十回とこなさなければならない。そのことをわかっていたので、素直に褒めただけなのだが、意外そうに尋ねられると流石に心外だ。
「コウジロウ、君はどうだい?普通に旅をしていたってわけでもないんだろう?」
「ああ。死骸龍ってのを狩って来た」
エールを煽りながらなんとなしに言った弘次郎の言葉にエルカルは驚きを露わにする。エルカルにとって死骸龍はめんどくさいという評価が当てはまる相手だ。強さは対したことはないが、わざわざ聖属性の戦鎚を使わなければない。
エルカルでなくとも、通常の冒険者では倒すことが出来ず、聖職者を連れていかなければ倒せない魔物であり、冒険者にとってめんどくさいという評価は共通となっている。
「どうやって?」
「師匠の愛刀だ」
そう言って禍津ノ嵌を手に取り、エルカルへ渡す。エルカルは受け取った禍津ノ嵌をまじまじと見つめた。
「聖属性が付与してあったりするのかな?」
鞘から抜き、光を反射して輝く刀身を見ながら弘次郎へ問う。
「いや。それはこの世無き物を切る刀だ」
「この世無き物を、ね」
刀身を鞘へ収め、禍津ノ嵌を弘次郎へと返し、弘次郎は禍津ノ嵌を背中に背負った。そして、エールを煽る。
「判別不可能の冒険者はここにいますか!?」
賑やかな空気を切り裂き、ボロボロになった服を身に纏った狐族の少女が涙を堪えながら
冒険者ギルドへ飛び込んで来た。




