第三十一話 五大陸を支配する存在
宴会から一夜開け、翌日。弘次郎達は借りた空き家の布団で眠っていた。
まだ日が登り切らない時間帯に、弘次郎は目を覚ます。目を開けてみれば、僅かに感じる下腹部からの重み。目を向けるとそこにはカルミアの頭があった。カルミアだけではない。弘次郎の両手両足は、ダリアとルリィによって封じられていた。
久々に感じる人のぬくもりに驚きながらも、随分と人に心を許したもんだと苦笑する。
取り敢えずこのままだと身動きができないため、ルリィ達を揺すり起こす。
「おふぁようございます、コウさん」
それぞれ眠気なまこをこすりながら弘次郎へ挨拶をし、自分達が弘次郎へ抱きついていることに気づき、頬を赤く染めて離れる。
「おはよう。というか、お前さんらもうちょっと寝相はよくならねぇか?抱きつかれる方としては、身動きが出来ねぇからちょっと辛いんだが」
「ご、ごごごごめんなさい!」
「す、すみません」
「ごめん…………なさい」
弘次郎に呆れた目で見られて言われた言葉に赤面しながら、各々謝罪の言葉を返す。弘次郎もそこまでで追求をやめ、炊事場に立つ。
通常ならばルリィ達が炊事場へ立つのだが、なぜかルリィ達の手料理よりも弘次郎の手料理の方が美味しく、朝昼晩と弘次郎が料理をするのが通例となっている。
銅鍋に水で戻した干し肉とおすそ分けでもらった野菜を入れ、少し炒める。炒めたあとに水をいれ、味噌と塩コショウで味を整えてから少し煮込む。煮込んだあとに良い値で買った香辛料を少しいれ、器へもって完成した。かなり素朴な朝食だが、朝はこれでちょうどいい。
「うん!美味しいです!」
「おい、しい」
「コウさんはなんでも出来ますね」
とまあ三人からも好評のためこれでいいのだろう。
「なあ、ルリィ達。ここに来てから盛大に肩透かしを食らいまくった俺だが、天災級や絶対級の化け物っていないのか?」
汁を飲み終えた弘次郎は、お代わりを器へ持っている三人へ尋ねる。一番この世界のことを知っているダリアが手を止め、弘次郎の問いに答えた。
「そうですね、天災級といえば魔王、絶対級といえば天竜や邪竜などでしょうか。基本的に天災級以上の魔物は自分のテリトリーを持っていますから、人里へおりてくることはあまりないですし、そのため討伐の依頼もありません。ですが、一つ例外があります。〈大陸喰らい〉の陸獣王ナルヴァです。長い年月自分のテリトリーに閉じこもっていましたが、何らかの理由があって近年暴れ始めました。といっても、私達がいる南大陸ではなく、隣の東大陸ですが。ちなみにこの世界は五つの大陸に分かれています。北に位置する北大陸。南に位置する南大陸。東に位置する東大陸。西に位置する西大陸。そしてその四つに囲まれている中央大陸の五つです」
ダリアの説明を聞き、弘次郎は少し考え込む。暴れているってことは討伐してもいいのか?というより、その陸獣王のランクはなんだ?陸獣王と同類の存在はいくついる?駄目だ。考えてもわからん。
「ダリア、幾つか質問がある。まず、その陸獣王ってのは討伐して大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
「それじゃ次だ。陸獣王のランクはなんだ?」
「良くて天災級、です」
ここまで質問して返って来た答えを聞き、弘次郎は再び考え込む。
成る程、天災級か。それで討伐してもいいときた。しばらくは退屈しなくても良さそうだ。次が一番聞きたい質問だ。同類の存在が陸獣王岳だったら、この世界に来た意味がねえ。
「ふむ。これで最後だ。陸獣王と同類の存在はいくついる?」
「五匹です。北大陸をテリトリーとしている空獣王リカーニャ。南大陸近海をテリトリーとしている海獣王ナルカミ。東大陸をテリトリーとしている陸獣王ナルヴァ。西大陸をテリトリーとしている地中獣王アルメイダ。そして、中央大陸をテリトリーとしている龍神ガルバルート。この五匹です。空獣王、海獣王、陸獣王、地中獣王のランクが天災級。龍神のランクが絶対級です」
「ありがとう」
ダリアの質問の答えを聞いた弘次郎は、ダリアへ感謝の言葉を言う。その顔には、凄絶な笑みが浮かんでいた。




