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隻眼隻腕の剣士  作者: 柊 紗那
第一章 魔法世界イカルディア
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第三話 ルリィという少女

「ってことはあれか?この世界は魔法という物理法則を完全に無視した力が存在し、その魔法は、使用者の体内にある魔力を消費して使う。魔力は、空気中に存在する魔素(マナ)を吸収し、使用者の体内で、魔力として溜め込まれる。魔力がない人間は、魔素を吸収できても、魔力に変換出来ないということでいいのか?」


「ぶつりほうそくというのはなにかわかりませんが、大まかに言うとそういうことです」


銀髪の少女を助けたあと、俺はその少女からこの世界について聞いていた。地獄じゃなくて別の世界だったか。めんどくせえことになったな、ったく。


「んで、お嬢さんの名前は?」


「ルリィといいます!えっと……」


「弘次郎。比嘉沙汰 弘次郎だ」


「コウジロウさん、ですか。コウさんでいいですか?」


「呼び名はなんでもいいぜ」


コウさん、ね。剣鬼だか鬼だかって恐れられてたからなぁ……人とろくに話すのは、またえらく久しぶりじゃねえか。ましてや、コウさんなんて親しく呼ばれることは、今までなかったな。


「コウさん!コウさんってとても強いんですね!あのゴブリンリーダーを軽々と倒せるなんて!」


「ゴブリンリーダーぁ?」


「さっきの化け物ですよ。……あ、そうでした。説明しますね。この世界には、魔物という化け物が存在します。魔物は、魔素が形どったもの、そう思ってもらって結構です。逆にいえば、魔物の体は、魔素で出来ているといっても過言ではありません。そのため、人の何倍もの魔力を持っています。魔物にはランクというものが存在し、下級、上級、災害級、国災級、陸災級、天災級、絶対級、神話級の八つがあります。下級は、魔法を使っていない人間と同じくらいの強さをもった魔物のランク。上級は、魔法を使っていない四人の人間と同じ強さをもった魔物のランク。災害級は、一体であたりに甚大な被害をもたらすことができる魔物のランク。国災級は、一体で国を潰すことができる魔物のランク。陸災級は、一体で大陸一つに甚大な被害をもたらすことができる魔物のランク。天災級は、一体で天変地異を自由に起こし、この世界の半分を破滅させることができる魔物のランク。絶対級になると、誰も手がつけられなくなり、逆らえず、ただ破滅を待つことしか出来なくなります。神話級は、ここ1200年の間、出現していなかったので詳しくはわかりませんが、神話に伝えられているまさに化け物と呼ぶに相応しい強さをもった魔物のランク。という風に分類されて居ます。コウさんは、下級のゴブリンよりを統べる、災害級のゴブリンリーダーを一人で倒したんですよ!これはすごいことです!」


畳み掛けるように早口での説明に、耳を傾ける。元の世界で最強なんて呼ばれてたが、この世界には俺よりも強いやつがいるらしい。……早くも元の世界の未練は消えた。戻る意味もなくなったしな。


「コウさん……私ちょっと興奮してて気づいてなかったんですけど、コウさんって、すごい魔力を持っているんですね」


「俺が?」


魔力、ね。この世界の人間が言ってるんだから持ってるだろうが、果たして俺に使えるのか?異世界人の俺に。


「ふむ……魔法の使い方を、俺に教えてくれねえか?」


「っはい!……あ、そういえば、コウさんって、何歳ですか?」


「俺か?俺は60だ」


「………………」


素直に言ったつもりなんだが、なんでそこで固まんだよ。なにかおかしいことでもいったか?


「ちょ、ちょっと、その頭にかぶっているものをあげてもらっていいですか?」


「これか?」


三度笠に手をかけて、外す。風が吹き、黒髪(・・)が風に揺られる。


「この鏡を、ご自分でご覧ください」


そういってルリィからわたされたのは、銅を磨いたくずんだ鏡ではなく、かなり鮮明に見ることができる鏡だった。言われた通りに、鏡を覗いて見ると、そこには、三十に若返った俺の顔が映って居た。


「……は?」


長年付き合って来た白髪も、色素を取り戻したかのように黒髪へ戻って居た。……信じられねえな。まさか全盛期に戻れるなんてよ。人生、わからねえもんだ。


「訂正するわ。三十だ」


「そうですよね、びっくりしました」


ああ、俺もびっくりした。人生で一番びっくりしたかもしれねえ。いきなり三十も若返ってりゃ、誰でもびっくりするか。


「ああ、魔法でしたね」


ルリィはそう言うと、俺の手を、華奢な自分の手のひらで包んだ。なにかが流れ込み、腹のあたりが温まっていく。へぇ、これが魔力っつーやつか。


「ん、どうでした?」


「おお、大体わかった」


俺がそう言うと、ルリィが手を離した。取り敢えず、気と同じように動かしてみるか。たしか、魔力を血液に乗せて、全身に運ぶイメージで動かす。んだっけか?


「それじゃ、活身術をーー」


ルリィが言いかけた刹那、俺から黒い光が迸り、あたりを包み込んだ。


















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