第十九話 依頼受諾
貿易都市ガリーニャに滞在すること約四日。自由都市エルカンテ冒険者ギルド支部の受付嬢の言ったとおり、ガリーニャは他国との貿易を盛んに行っているおかげか物珍しいものが多く、三日ほどぶっ続けで観光しても飽きがこないほどだった。流石に三日もおとなしくしていたため若干体がなまっており、弘次郎は久々に依頼を受けるために冒険者ギルドへ向かった。ちなみにルリィと奴隷の二人も連れている。
見た限りではどうやらどこの冒険者ギルドも殆ど同じ外観をしているようで、この世界の常識に乏しい弘次郎でも一目で見つけることができていた。
「えらく人が多いじゃねえか」
扉を押し開け中に入る。内装も殆ど変わらないが、酒場はこの冒険者ギルドの中にはないようで、広いロビーには長机が幾つかあり、そこは情報交換をする場所になっているようだ。酒場が無ければ人は少ないと思っていたのだが、カウンターの目の前あたりに三十人ほどの冒険者が整列していた。先頭にいる二人がかなり整えられた装備をしているのをみると、その他の皮の装備を着込んだ冒険者達は新人かなにかなのだろう。弘次郎は一目見ただけで興味を失い、受付嬢のいるカウンターへ向かった。
「ここの冒険者じゃ手に負えない依頼ってあるか?」
「はい…………って弘次郎様!?なぜここに弘次郎様が」
「なぜって護衛依頼でここに来たついでに、エルカンテの受付嬢に観光するよう勧められたからだろうが。っと、そういやまだ依頼の報告を済ませてなかったっけな」
そう言って弘次郎は、エルカンテの冒険者ギルドで受けた護衛依頼の依頼書を着流しの内側から取り出し、取り乱す受付嬢に差し出す。まだこのギルドってやつに慣れてねぇからな。どうも気を抜くと忘れちまう。
「あ、はい、ミヌス様から伺っております。これで依頼完了となります。報酬はミヌス様から受け取っているようですので」
依頼書を受け取った受付嬢は、判子欄に依頼完了の判子を押すと、依頼書を何処かへしまう。
「ここの冒険者では手に負えない依頼ですか?あることにはありますが……「は、判別不可能!?」…………」
受付嬢かなにかを言おうとしたのを遮り、整えられた装備をした冒険者の二人の内一人が弘次郎を見て大声を上げた。受付嬢はその冒険者に冷たい眼差しを向け、弘次郎はその冒険者に振り向く。
「なにかようか?」
「い、いえっ、その、あの」
突然弘次郎に話し掛けられたことに驚いたようで、話し掛けられた冒険者はわたわたとしはじめた。
「こほん。冒険者ランク判別不可能の弘次郎さんに頼みたい。話を聞いて貰っていいだろうか?」
「ああ、別に構わないが」
わたわたと慌てる冒険者、男の代わりにもう一人の冒険者、女性が弘次郎に話しかけた。弘次郎としても無下に断る頼みではなく、一応話を聞くことにし、女性の問いに頷いた。
「ありがとう。一応自己紹介をして置こう。冒険者ランク国災級、ミフェリアだ。よろしく頼む」
「比嘉沙汰 弘次郎だ」
「早速話なんだが、見てわかるとおり、今私たちは新米冒険者の指導を行っている。だが一つ困ったことがあってな」
「困ったこと?」
互いに握手を交わしたあと、ミフェリアは話し始めた。そして、その後の弘次郎の問いに、ミフェリアは頷いた。
「どうやらこいつらは私達国災級じゃやる気が出ないようなんだ。まだ冒険者になりたてのひよっこがなにをほざいてるってところなんだが、そう邪険にできるものじゃない。普通なら放って置いてすむ問題なんだが、そうするとこいつらの依頼の中での死亡率が格段に上がってしまう。だから放って置こうにも放って置けず、どうしようか迷っていたところ、弘次郎さんがきたってわけだ。こいつらも判別不可能の弘次郎さんなら、否が応でもやる気を出さずにはいられないかと思って、ね。弘次郎さんに頼みたいのは、新米冒険者の指導なんだ。一応これは依頼扱いとして、ちゃんと報酬も出す。どうかお願い出来ないだろうか?」
説明を終えたミフェリアは、弘次郎に向かって静かに頭を下げる。成る程な。ようは冒険者になったから天狗になってるってわけか。ま、そう言うやつらの鼻をへし折ってやるのも面白いかもな。
「受付嬢、この依頼受けさせてもらおうか」
「そう言うと思って、既に発行してあります」
弘次郎はミフェリアの頼むを引き受け、受付嬢へ振り向く。どうやら受付嬢は弘次郎がどんな答えを返すかわかっていたようで、殴り書きの依頼書を弘次郎へ渡した。
さぁてと、天狗になりがちな餓鬼の鼻をへし折ってやるとするか。




