表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/22

第16話 知らないまま進む

翌朝。

 抜け殻のような3人は、濃いコーヒーだけで存在を保つ。

「ミネさん、今日は?」

「ああ、2日目は小樽だ」


「ちょっと。札幌を極める」

「どうしても行かなきゃならない場所ができた」

 優美ちゃん、どうか無事で。

「何が待ってるの?」

「行けばわかる」

 男らしい顔をしている。

 こうなると、止まらない。


「何時に出発するの?」

「9時過ぎでいいか?」

「7時に私たちが、ここに集う意味は・・」



 札幌駅から小樽へ。

「動物園の次は水族館、とかないよね?」

「生きてる魚には興味ない」

「では?」

「ロープウェイだ」

「昨日リフト乗ったよ?」

「せめて海でしょ」

「バスにしてくださいな」

 なぜか全員、従う。


 山頂。

 涼しい。風が澄んでいる。

 女子たちはスライダーへ。

「ミネギシさん、なんでここ?」

「この後わかる」

 コノアトナニガワカル。



「お、来た来た。新婚さん、あのベンチ座ってみ」


 突端のベンチ。

 町と海が一望できる。

「すごいね」

「きれい・・・」


 背後から声。

「もっとくっつけ!」

 振り向くと、ニヤニヤしている。

「ここ知ってたの?」

「ネット」

 いったん、合格。



「小樽といえば?」

「お寿司でしょう」

 駅前へ戻る。

「観光客向けの通りは行かない」


 路地の小さな寿司屋。

 老夫婦2人。

「ランチみたいなの、ありますか?」

「お任せでよければ」

「お願いします」


 出てきた握り。

「おいしい。江戸前と全然違う」

「シャリ大きいな」

「なんで?」

「江戸前は一口文化。こっちはネタが強いから米も負けないように増やしたんじゃないか。」

「ないか?」

「ないか」

「イントネーションじゃない。まあ、でもここまでは全部当たりだよね」

「だろ。俺は外さない」

 本当に外さないから困る。



 みきのが切り込む。

「で、ゆーみをどう思ったの?」

 全員、一斉に箸が止まった。本人まで。

「会ったばかりだからな。追々」


 誰も返さない。

 たぶん、全員同じ未来予想図を描いている。

「ゆーみはいい子だから。」

「当たり前だ。悪いようにはしない」

 悪いようにする人の言い方。


「まさか……」

 でも、人の恋に首を突っ込む暇はない。

 みな、もやもやしたまま札幌へ戻った。



 大通公園で、「ちょっと待っててくれ」と、ミネギシさんがいそいそ消えた。

 あの背中は、ろくでもないことを考えている時のそれだ。

 そして、紙袋を提げて戻ってきた。


 ・・・トーキビだ。

 絶対に。

 どうしよう。胸の奥がざわつく。

 とうこさんは、ギシギシのとうきびに弱い。


「優美さんが、アヒージョとかパエリアとか作っておくから、6時に来てと」

 は?

「それは悪いでしょう、迷惑をかけちゃう」

「そうだよ。ん?そんな話、昨日出てたっけ?」

「あたしも思った。どうした?」

「まあまあ、せっかくだし行こうぜ」


 何かが、水面下で音もなく動いている。

 誰も合図を出していないのに、物語だけが先へ進んでいる。


「そうね、少し寒くなってきたし行きましょう」

 そこじゃない。寒さの問題じゃない。

 でも、とうこさんが頷いたら、もう誰も止められない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ