表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/73

38.神殿の目的


「神殿と戦うとしてもやり方を間違う訳にはいかないよね」

「あの、前提がわからないんですけど、なんで神殿はこんな手の込んだ嫌がらせしてるんですか?」


 カライスちゃんが不思議そうに問う。

 カライスちゃんは、今まで神殿で学んできたこともある。いきなりな展開なのだろう。


「権力を得たい。自分達が一番上でいたいんだよ」

「王を蔑み、神子を傀儡に。だから、水側を追い詰め、労力を負担させたい。そこに、第三者である教団側の思惑が入った」


 神の名のもとに、権力という名の蜜に群がる蟻。

 神殿と水側の諍いに目を付け、教団が介入した。

 そこに、ノア――導き手が現れ、ひっちゃかめっちゃかな混乱状態だ。


「神殿の役割は二つ。一つが穢れを祓う」

「はい。神子様が土地に魔力を送り、鎮める役割であれば、神殿は清めることが役割であると教わりました」

「間違ってはいない。今の風側は、それすら機能していないがな」


 確かに。

 カライスちゃんのお姉さんが亡くなった場所が穢れていた。これを放置し続けていたことから、その役割を果たしているとは言えない。


「ここ数年は穢れが発生しやすくなっている。それを水側が滞在しているせいで、魔力が流しにくいと言っているのが神殿の立場だ」

「実際はどうなの?」

「単純に、風の神子の力が弱まってる。さらに、穢れを察知できる神官不足。それを認めるわけにはいかないんだろうな」


 サフィロスの瞳が凍てつくように冷めた光を放つ。

 神子様に力がなく、支える神官すらまともな人がいない。それが、今の風の国の現状か。


 ゲームでは、水の神子様の死後、風の神子様は大陸を一人で支えきれず、昏睡状態になる。

 その後、神子の継承で揉める。

 その間に風の大陸はボロボロになってしまう。


 風の神子を継承するのが誰になるか。


 スマラクト殿下とジェイドが競っている。

 その実力に差がないと思われていたけど、今回のノアに魅了され操られた時点で、差があることが露呈した。


「早急にスマラ殿下が継いでくれた方がいいんだけどな」

「こっちからすれば、どっちが継いでも構わないけどね。実力差も、あの、ジェイドだっけ? あれが覚醒でもすれば、スマラクトとそう変わらないとは思うよ」

「そのためにジェイドを大事に大事に育ててるわけだしな」


 ルヴィニもサフィロスも、スマラクト殿下とは仲がいいけど、そこは別にこだわりはないのか、どうでも良さげだ。

 ただ、ジェイドを馬鹿にしているのは間違いがないけど。大事にと重ねる割には、悪意しか見えない。


 私目線だと、スマラクト殿下の方が優秀だ。

 ただ、ノアのように介入すれば、私の身も危険かもしれない。すでに導き手がやらかした後だからこそ、過剰反応がありえる。


 水側が傍観すると決めているなら、口出すべきではない。


「口出すことでもないか」

「そうそう。ミオ、こっちが口を出す価値はない」

「いや、世界が滅びるのは困るんだけど」


 水の神子様が死ななければ、風の大陸も滅びの道へ進むことは無いと考えていたけど。このままだと、神殿のせいで自滅しそう。

 さらに、ルヴィニとサフィロスを見ていると不安になる。


 この二人、すぱっと風の大陸を見捨ててしまいそう。今回の件で、かなり風側に嫌悪している。


「風側が何とかするべきことだろう? ミオ、違うかい?」

「違わないよ。風の国のことは風の国がやるべきだと思うよ」


 サフィロスの試すような言動に、肯定を返すしかない。

 水側の好意を悉く無下にした。それなのに世界のために力を貸すべきと言うのは恥知らずだ。


「話を続けよう。それで、神殿のもう一つの役割は?」

「これだ」


 私の問いに、サフィロスが先ほど身に付けたばかりの金の腕輪を指さす。


「どういうこと?」


 サフィロスは腕輪に指を滑らせながら、淡々と告げる。


「神殿の役割は、神子を支えること――じゃない。神子を含め、力のある者を縛ることだ」


 その目が凍てついた氷のように見えた。

 腕輪についた石がまた青に染まり、光った。

 サフィロスの感情で漏れ出た魔力を吸っているらしい。


 ん? 同じ腕輪をルヴィニも付けてるよね?


「神子も含め、大陸に魔力を送ることを阻害する障害の排除。魔封じを施すのは、基本は神殿が行う。神子に対しての抑止力でもあるな」

「神子には魔力を使わせて、権威は自分達が欲しい集まりだからね。魔力が高い人間に枷を嵌めて、魔力を扱えないようにするんだよ」


 なるほど。ルヴィニが魔力を持ってないではなく出せないってそういうことか。


「二人とも? でも、そんなに高魔力なら腕輪自体がすぐに壊れそうだけどね」

「よくわかったね。中級くらいなら普通に封じられるけど、上級以上は無理。僕らの場合、互いの魔力を相殺している仕組みだね」

「ん? どういうこと」


 首を傾げると、ルヴィニから苦笑しつつ、自分の腕輪を見せるように掲げた。


「ルヴィニの魔力分を私が相殺されて、僅かしか使えないということだ」


 ルヴィニが対外的に魔力を出せないってそういうこと?

 どちらも、魔力封じを受けているけど、サフィロスは多少使えるのはそういうこと?


 いや、しかし……サフィロス、普通に外してたよね。

 ジト目でサフィロスを見ると、ウィンクが返ってきた。


 バレなければ問題ないってことかな。

 説明せずに巻き込むのはやめて欲しいんだけど。勝手に共犯者になってるじゃん。


「実際、風の神子の魔力は神子としては、そこまで高くない。それより魔力が高い者は封じておかないと、風の大陸にも影響があった可能性はある」


 サフィロスの説明によると、魔封じを直接人に施すことができるのは、神殿にだけ与えられた権利らしい。

 犯罪者に対し、一時的であれば魔封じを施せるけど、長期間となると神殿が関与する。


 それが、神子に対しての切り札でもあるらしい。

 神子に対してだけでなく、ノアに対しての切り札になりそうだ。


 しかし、神殿側の権力が強い理由が魔力封じにあったのか。

 ゲームでは知らなかったけれど、そういう背景から見ても、教団との関係性が見え隠れする。


 ルヴィニもサフィロスも神殿への不満はそういうことだったのか。


「まあ、風の神殿側からすると、水の神子の魔力を封じていることに優越感を持つ。住まわせているんだからと穢れを祓うなどの仕事はして当たり前という考えなんだよな」


 サフィロスは淡々と口にしたけど、目が笑っていない。ルヴィニも微笑みを浮かべているのに、部屋の体感温度が下がった気がする。


「なんで、教えててくれないんですか!」

「説明しても仕方なかったでしょ。だいたい、自分のことは自分で考えて結論を出せないから子どもなんだよ。僕らの考えだからって、従っても意味ないでしょ」


 カライスちゃんは唇を噛んだ。

 カライスちゃんは子どもとして守られる側という認識だったけど。実際は神殿から都合のいいことだけを教わり、ただ縛られている。


 さらに、ルヴィニの言うこともわかるけど、カライスちゃんを煽る言い方になっている。じっと視線を送ると肩を竦めたけど、改めるつもりはなさそう。


「そうやって、“子どもだから”で誤魔化す! いいですよ! 自分でちゃんと考えますから!!」


 カライスちゃんの宣言に、軽く背中を叩いて、応援していることを伝える。

 5年後のカライスちゃんはしっかり者な美人さんだったしね。


 わかりにくいけど、神官見習いとして、神殿で教育を受けてきたカライスちゃんに気遣って、板挟みにしないための配慮なのかもしれない。


 とくにお姉さんがいた頃なら、教育への口出しも憚れるしね。

 なんか、たまにズレてるよね、ルヴィニの行動。


「まあまあ、落ち着いて。カライスちゃんは? 神殿とどうしたい?」

「お世話になった神官様とかいますけど、でも、わけもわからず処刑されそうになったんですよ!? むりです、もう関わりません!」

「ちゃんと自分の気持ちを落ち着かせて、じっくり考えてから決めても遅くないから。大丈夫だよ、ちゃんと待っててくれる」


 カライスちゃんを宥める。怒りではなく、慎重に考えて結論を出すべきと促しておく。

 少しぽかんとした後、耳を赤くして「考えておきます」と言うカライスちゃんは可愛かった。



「神殿と敵対は確定。王と神子様は?」

「アイオの件もあるから、もう一度風側に交渉はもちかける。神殿についても、危険は伝えよう。それで無理なら強行突破。この国でしたいことがあるなら、先にしておいた方がいいな」


 サフィロスは出ていく気満々だ。

 にこにこと楽しそうに、脱出計画をルヴィニと相談している。


「とりあえず、水の神器だけ確保しない? ノアも場所は知ってるから、放置はしない方がいいと思う」

「ん? ……いや、焦る必要はないな」


 私の案に、少しサフィロスが迷いを見せた後、否定した。

 神器があると風の国に影響が大きすぎるのかもしれない。


 ただ、奪われるわけにもいかないのも事実。

 まずは、アイオ様を解放してもらい、水の神子様が拠点にしているシャーナンの地に戻り、そこで改めて考えることになった。


 アイオ様を解放させ、次の目的地へ――出遅れるわけにはいかない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ