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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

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36.裁判を終えて


 結界を張ること6回。

 その間、上の裁判で何が起きているかはわからないけど、繰り返し結界を張り続けた。


 途中で、この部屋に入ろうとしてくる人もいたようだけど、王様が自らここに入るなと命じたため、邪魔をされることもなくなった。


 なんとなくだけど、この部屋の外で待機している護衛は一緒に逆行している。けど、城に中には逆行に気付いていない人もいる。

 本当に、私の結界の範囲は一緒に記憶を持ち越しているようだった。


 6度目に入り、次の逆行が起こらないため、長いなと思い始めた頃に、スマラクト殿下がやってきた。


「……終わったぞ。あれは逃走した」

「は? 逃がしたの?」


 スマラクト殿下の報告に、ルヴィニが呆れたように返している。

 どうやら、導き手様を名乗るノアという少女は逃亡し、これ以上は時間逆行が起きない。


 カライスちゃんの無罪が確定、さらに別の問題が生じたことで、裁判は終了した。


「どうして逃がしたの?」

「逃走や逆行が出来ないよう杖を奪ったはずが、手元に戻り、それを使って姿を消した」

「取り上げても無駄って、伝えたはずだけどね。魔力封じ優先って言わなかった?」


 私や彼女の杖は念じれば手元に戻ってくるため、奪ったところで無駄。

 それは、前にルヴィニにも伝えてあったけど、現場には伝わっていなかった。


 報告を聞いて、肩を落とした。

 空間転移を使用し、遠くに逃がしてしまったとなると、追いかけることは難しい。

 


 彼女の能力は、危険。ここで逃がしたなら、また、立ちふさがってくる。


 今回はジェイドとアイオ様は逃れたけど……犠牲者が出る可能性は今後もある。

 幸いにも、神子クラスの魔力だと抵抗できるようだけど。

 魔力が低い人達の方が多いから、数の暴力でくるなら勝ち目がない。


 目的は同じはずなんだけど。

 彼女に任せることができない。そう、本人を見て思った。


 ここは私達にとってはゲームの元となった世界で、現実世界として受け入れることは難しい。

 だけど、この世界で生きている人達も、同じように生きている存在。

 それを当然のように操り、自分の都合のいいようにしか考えない。


 同じ立場、世界を救うために投じられた存在だからこそ、嫌悪がある――再び、彼女に会う時も、敵だろう。


 むしろ、これから彼女と邪龍教団との三つ巴の戦いになる。


「ミオ? 聞いてる?」

「えっ? あ、いや、ごめん。考え事してた」


 目の前をルヴィニの手が動いている。

 覗き込んでいるルヴィニに、「ごめん」と謝って、向き直った。


「逃走した先、どこだかわかる?」

「う~ん。5年前だと、光の大陸に住んでるはずだけど、詳細までは……」


 主人公の過去はそんなに語られていないから、居場所とかはわからない。

 

 ルヴィニとスマラクト殿下が眉間に皺を寄せている。

 そこまで情報があるわけではないんだよね。


「しかたない。サフィロスは何て?」

「……何もない」

「じゃあ、放置するしかないね」

「そうか……」


 スマラクト殿下は簡単にだけど、裁判で何が起きたかを、説明してくれた。


 結論として、ノアが魅了により、風の国を掌握することは防げた。


 ノアの魅了による洗脳、自分の都合のいいように時間を巻き戻すことは把握したため、この国で導き手様を崇めることは無いという結論は出たらしい。


 さらに、ノアを持ち上げたのが神殿の人間だったから、なし崩しで神殿の権威を削げる。


 最低限の勝利は確保できたけど、大局的な成果は得られていない。

 脅威を把握しただけでもある。


「改めて、感謝する。お前の助力で風の国は救われた」

「いえ、力になれてよかったです」


 スマラクト殿下が、頭を下げてきたので、慌てて、頭を上げるように言う。

 堅苦しいお礼をされるとどう接していいか、困る。


「これからはスマラと。敬語も不要だ」

「いや、それはちょっと……」

「そうそう。スマラ、無茶言って困らせないでくれる?」


 ルヴィニが私の後ろから抱き絞めてきた。庇ってくれてるのかとじっとしていたけど、これ違う。

 絶対に悪い顔して挑発してるよね。


 スマラクト殿下の顔がどんどん凶悪になっている。


「お、おちついてください」

「……わかった。無理にとは言わん」


 うん。急に言われてもね。王子だし、他の人の目もあるから、呼び捨てとか無理だった。


「今後の対策は考える必要がある」

「そう、ですね」


 たまたま、時間逆行は結界を張ることで記憶を保持できただけで、操る系のスキルには何も出来ていない。空間転移も防げていない。


 結界内なら、私以外が魔法使えないとかなら最強なんだけどな。


「ミオとあれの魔力に差がなかったから上手くいったけどね。あっちも対策を練ってくる可能性はあるだろうしね」

「対策としては早いうちに、神器を回収した方がいいかな」


 私の言葉に、風王、殿下が反応し、こちらを凝視してくる。


「あ、いえ、風の神器ではないです。すみません」


 私が考えたのは水の神器の方だった。

 流石に、風の国の至宝を勝手に奪うようなことはしない。


「そこが疑問なんだけど、各国の管理する神器に結界なんて機能あるの? 聞いたことないんだけど」

「え? ないの? 似たようなことできそうじゃない?」

「僕が知るわけないでしょ」


 いや、あるものだと思い込んでいた。


 あれはゲームの仕様上ってことで、実際は浄化した土地に結界を張っているわけではなかったけど、結界自体は重宝している。

 神子様なら、似たようなことも出来そうだと思う。


「ミオ。まさか、結界の能力が偶然手に入れた能力とか言わないよね?」


 少し圧のある笑顔でルヴィニが近付いてきた。


「まって、一応、理由もあるんだよ。そもそも、私、彼女の能力を知らされてここに来たわけじゃないから。あっちも私の存在は知らないはずだし。たまたまでも切り札に成り得たんだから、悪いことじゃないよ」


 ノアが時間逆行とか、人を操る系のスキルとか、予想外だった。

 偶然でも、対抗できる術を持っていたのは運がいいと思う。


 いや、もしかしたら、あの神様が気を利かせてくれた可能性もある。

 どう考えても、ノアの空間転移・時間逆行というチートスキルに対して、地図、浄化(+結界)、聖獣召喚はしょぼい。

 対抗手段となるように、ゲームの能力ということにして、くっつけてくれたのかも。


 それに、私が選んだスキルも悪いスキルではないと思ってる。


 正直、ラスボスである邪龍を倒す分には、不足はないと思っている。

 イレギュラーなノアという転生ヒロインがいるからこそ、戦力に不安がある。


 これでドンパチやり合うのは、結構不利。今回みたいに不意打ちで逆行を逆手に取るというのも、毎回は難しいだろう。


 ノアの能力を暴くには役に立ったけど、私がいない時はどうするのか。

 神子様が生きていれば何とかなるという考えは甘いかもしれない。



「ふ~ん。ミオの存在、知らないっていうのはこっちの切り札に成り得るけどね」

「そうかな」

「水の神器の場所、把握してるの?」

「してる……私も、彼女も――風の神器もだけど」


 私が頷くと、ルヴィニはにっと笑った。

 何か思いついたらしい。


「まあいいや。次の対策はまた話し合おう。スマラもそれでいい?」

「……ああ」


 ここでお開きにするらしい。

 いつまでも、王の時間を無駄にするわけにもいかない。



「父上。色々と問題が起きております。神殿の動きも含め、早急に対処をお願いできますか」

「うむ。……スマラクト、ミオ殿、ルヴィニ殿。導き手を名乗り、風の国を掌握しようとした者をよく撃退してくれた。礼を言う。後ほど褒美も用意するが、先に神殿に対し、手を打たなくてはならぬようだ。また、お主たちとは機会を設けよう」

「お力になれましたなら幸いです」

「この機会に神殿の発言力をなんとかしてくれるかな? 水側としては、困ってるんだよね。怪しい教団と共闘しているみたいだからね」


 私が風王に頭を下げて挨拶する。

 しかし、それだけで終わらせる気はなかったルヴィニが爆弾を投げた。

 

「ルヴィニ」

「あれの対策だけを考えて、放置できる余裕はないでしょ」

「うん、そうだけどさ」


 これで解決、ではない。

 まだ、首都・ショウドウにやってきた目的は全く果たせていない。


 風の神殿の件も暴く必要がある。ただ、これについては裁判で追及する足掛かりを得ているらしく、殿下がなんとかしれくれるようだけど。


「時間が出来たら、顔を出す」

「別にいいよ。すぐには動けないから」

「えっと……スマラ殿下。お疲れさまでした」


 ぺこりと頭を下げると、手で口を隠していたけど、笑っていた。

 結構、厳しい顔ばかりの殿下だけど、少しは気を許してもらったみたいだ。


 ルヴィニと共に、部屋を出て、カライスちゃんを迎えに行き、城から出る。


 まだ、何も終わっていない。神子様を救う。

 そして、同じ目的を持つノア。人を操ることを前提として動く彼女と相容れることはない。力をつけなくては、自分の目指す未来につなげるために。


 頑張っていこう!



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