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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

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27.ショウドウ2の3


 彼女の目的がアイオ様だとする。

 では、何故、今なのか。


 光の大陸にいるはずの彼女が、一人で風の大陸にいる。

 空間転移があっても、詳細な地図がない。ゲームの仕様と同じなら、一度、自分自身で来たことがある場所にしか飛べない。


「確認したいんだけど、いいかな?」

「どうした?」


 私が意を決して、声を絞り出す

 サフィロスが楽しそうに身を乗り出してきたので、視線を合わせて確認をする。


「術者が遠くにいた場合でも、今回みたいに時間逆行に気付ける?」

「無理だな。魔力を広範囲に展開して、その範囲内であれば難しくないが、流石に、動きを探るために光の大陸まで魔力を展開するわけにもいかない」


 ちらっとルヴィニとスマラクト殿下にも視線を送るが、無理だと否定した。

 近くであれば魔力の波動がわかっても、遠い場所で察知するのは難しいらしい。


「サフィロス。なんで、光の大陸だってわかったの?」

「違ったか?」

「違わない。私が知る限り、彼女はこの時期には光の大陸にいるはず」

「当たりか! まあ、偶然、魔力の痕跡に気付いたんだがな」


 サフィロスが言うには、魔力を広範囲に広げていて、高魔力の移動を知覚が出来た。風側に伝えずに魔力を展開していたらしい。

 スマラクト殿下が剣に手をかけたが、サフィロスは気にせずに笑っている。私はその剣がこっちに向くんじゃないかと冷や冷やするのに、気にも留めてないあたり、大物だ。


「おい、荒らすつもりか?」

「まさか。荒らしているのは、この状況を生み出している奴だろう? その対策を練ってるじゃないか」


 サフィロスとスマラクト殿下の間で火花が散った。二人が隣同士に座っているが険悪な雰囲気になった。

 風の大陸に干渉する行為はしないと言いながら、実は裏でやってると自白するあたり、殿下が怒ることわかってるよね。


 スマラクト殿下は責任感が強い。

 風の大陸を背負う立場であるから、当然でもあるけど。


 自分にも他人にも厳しい人だけど、攻略対象ではないけど人気もある。

 風側と水側で立場が違うのだろうけど、怒らせるのは得策じゃない。


 また揶揄いそうなサフィロスをぐいっと引っ張って、私の隣に座らせ、スマラクト殿下とは距離を取らせる。


 サフィロスは一瞬、目を開いて驚いたような顔をしたが、私の隣に座りにこにこと笑っている。


「話、続けましょう」

「それで? ミオ。何に気付いたの?」

「光の大陸からここまでって……相当な魔力を使うよね?」


 ゲームでは距離により消費量が違った。終盤に手に入るスキルだし、同じ仕様であれば、この距離は致命的のはず。

 大陸間の移動なんて、相当の消費だ。


「しかも、時間逆行を何度も使う魔力。どこから……」

「いいところに気付いたな。あと、数回――それが限界だ」


 サフィロスが軽く口にした言葉なのに、その瞳は確信をもっている。

そのことにほっと息を吐く。


 サフィロスが言うには、1週間前に光の大陸から風の大陸への大きな魔力の波動を感じた。しばらくは回復に努めていたという予想だった。


 時間逆行にも限度がある。その事実にじわじわと希望として体に伝わる。

 ゲームでは延々とロードが出来るけど、流石に、魔力消費して時間逆行をするなら、こちらも手の打ちようがありそうだ。


「サフィロス、ありがとう」

「ああ! 何でも聞いてくれ」


 サフィロスに情報のお礼を言うと、嬉しそうににこにこ笑う。

 尻尾を振っている幻覚すら見えそうなのに、さらっと話す情報が重要過ぎて、なんだかギャップをすごい。


「おい、確証は?」

「うん? アイオに暗示を掛けている時間だな」


 スマラクト殿下のドスが聞いた声にあっけらかんとした返答が変える。苛立ちのせいか、組んでいる腕の指先がトントンと動いている。


「サフィロス、どういうこと?」

「前回、随分と時間をかけたのに、カライスの一言で不完全に終わった。おそらく、アイオの抵抗力が高まっていると同時に、あれの魔力は弱まってるんだろ」


 さらに詳細を聞くと、アイオ様への暗示にかける時間が少しずつ長くなり、掛かり方も鈍くなっているらしい。


 ゲームで、スキルボードには暗示系はない。それなら3つ目の能力の可能性が高い。


 でも、アイオ様の扱いが酷すぎ。


 仲間なのに、毎回様子を見ているだけで、助けるつもりがない。

 いや、繰り返しが起きているから、しっかりと最後には妨害して失敗させているのかもしれないけど。


 ぐっと、喉に力がはいった後、ゆっくりと呟く。


「囮だよね?」


 私の問いにサフィロスもルヴィニも笑顔を返すだけで、否定はしなかった。


 あのアイオ様の能面の顔。感情も何もない。

 それでも、カライスちゃんに反応したアイオ様。


 直後に失敗と言って怒り出す醜悪な顔。

 あの怒りには、魔力が限界に近づいていることへの焦りもあったのかもしれないけど、明らかに危害を加えている。


 そして、この作戦を立てている間も、同じ事が起きてる可能性がある、私としては助けにいきたい。


 ただ、私が行って、どうなるとも思う。カライスちゃんとはちょっと仲良くなってきたけど、アイオ様とは接触できていないから、未だに不審者認定だ。


 歯痒い気持ちと共に、何とかできる立場であるルヴィニ達の態度がもやもやしてくる。


「扱いひどくない?」

「状況把握と打開をするためには、必要だったんだよ」


 時間稼ぐのであっても、毎回、アイオ様を差し出す必要はない。

 ルヴィニを睨んだ後、私が同意を求めるように、スマラクト殿下に視線を送ると、若干呆れた顔をしたがこくりと頷いてくれた。


「ほら、殿下も酷いって言ってる!」

「悪いとは思ってる。だがな、一度会えた後は、会えないとその場でやり直しだ。会わせた方が時間が稼げるのもわかってる。保険をかけて、危険が無い様に配慮はしている」


 私の言葉に、少し慌てたようにサフィロスが反論する。

 犠牲にするつもりはないけど、ある程度は仕方ないと考えている。

 私がジト目で睨むと、しゅんとした顔で「すまん」というので、少しは伝わったようだ。


「ミオ。あまり想像できないみたいだけどね。この現象は、今後もあると困るから対策を立てて、二度とない様にしないといけない。1回のミスで失った場合、あれがやり直しを選ぶとは限らない。優先順位があるし、使えるものがあれば使うよ」


 ルヴィニは駄目だ。これは譲るつもりはない。

 真剣な瞳でこちらを見てくる。言い返す言葉もなく、唇を噛む。


 最優先が水の神子様であるなら。

 その盾となるべき従者の一人……アイオ様を助けている場合ではない。そう言われると、その通りだ。


「二度と出来ない様に、できるの?」

「そのための作戦を立ててるんだよ」


 ルヴィニの言葉に、サフィロスとスマラクト殿下が頷く。どうやら、方法があるらしい。


 どうやるのかはわからないけど。現状打開するための犠牲がアイオ様だと主張されると辛い。悲しいけど、他の代案も浮かばない。


「……わかった。アイオ様が心配だけど。必要な手段なら、これ以上は言わない。抵抗できるってことは、アイオ様の今の魔力の高さは?」


 わずかに上ずって震えてしまった声。やるべきことが全てできるとは限らない。何を成すか、間違えてはいけない。


「アイオは魔力総量、技術どちらも中級でも上位だね」

「素質はあるからそのうち殻を破ると思うけど、もう少しってとこだ」


 二人とも、今後に期待しているという表情だった。アイオ様が憎くて、囮にしているわけではない。彼らなりの信頼で、任せているのだろう。


「でも、もし、抵抗してここで覚醒しちゃったら、危なくない?」

「どういうことだ?」


 私の言葉に、スマラクト殿下が再び剣に手を置いた。

 さっきもサフィロスが適当に流そうとするから、いらいらした仕草が増えている。


「スマラクト、俺の友人だ。丁重に扱えよ」

「むっ」

「いや、サフィロス。いいから」


 厳しい口調のスマラクト殿下から庇ってくれるのは嬉しいのだけど、先程から私よりもサフィロスの言動に怒っている。


 怒らせるような余計なことは言わないでほしい。


「アイオ様、水の神子様が亡くなった時に、魔力暴走を起こして、風の大陸に深刻な被害を出すから」

「アイオが抵抗して、魔力暴走が起きる。あり得なくもないかな」


 私の言葉にルヴィニが頷くが、サフィロスが首を振って否定した。

 魔力暴走で被害を出して、風の大陸から追放されてしまう。こんな大きな街でやったら、大変な被害になる。


 その評価が付きまとい、アイオ様の枷になってしまうから避けたい。暗殺阻止しても、他の形で起きるのでは意味がない。


「いや。それが起きた場合、側にいるやつが五体満足にはならんだろう。やり直しをするはずだ。それに、あれはアイオに拘ってるからな」

「わからんな。何故、あの子供に拘る?」


 サフィロスの言葉に、詰めていた息をゆっくりと吐きだす。

 アイオ様の悲劇は起きないなら、私にとっては嬉しいことである。


 だけど。


 私の場合は推しだから、アイオ様に拘るとして……。

 なぜ、アイオ様に暗示をかけることに拘るのか。


「アイオ様に拘る理由……アイオ様が死なないとあの子が闇の神子になれない。単純な戦力?」

「神子? あれは導き手ではないのか」

「本来はアイオ様を殺して、神子として覚醒するはず」

「ほう……」

「へぇ……」


 サフィロスとルヴィニから逃げるように椅子から立ち上がり、離れようとするが、できずに座り込む。

 スマラクト殿下が可哀そうな存在のように同情の眼差しを向けてくる。


 空気が重い。痛い――威圧が恐ろしく、ここにいたくない。


 はっはっと、息をする自分の声すらどこか遠くに聞こえる。


「ああ、すまない。大丈夫か?」

「ごめん、ごめん」


 二人が笑って、こちらに手を差し伸べてくるが、それも怖い。


 部屋の空気が重い。濃密な魔力サフィロスから漏れ出て、ルヴィニの殺気が漏れている。二人とも、笑顔なのに怒っている。


 見惚れるほどのいい笑顔なのに薄ら寒く、肌をさする。


 二人の反応はアイオ様を殺すという可能性に対しての怒り。


 激怒している。そんな二人に対し、恐怖を覚えるとともに安堵もする。

 大切にしている。アイオ様なら大丈夫と信頼しているからこその囮なのだとわかった。


 一度、息を吸って、吐いて。それから、二人が差し出してくれた手を取って、椅子に戻る。


「うちの子が世話になるなら、しっかりと挨拶してやらんとだな」

「そうだね。ちゃんとお礼をしないとね」


 好戦的な笑みの二人に、大きなため息をつくスマラクト殿下。

 これ、止めても無駄だと諦めている。


「いや、ほら。あと、数回なら……魔力切れを狙って失敗をさせ続けるのもありだと思うよ?」

「いや、ここは攻めるべきだろ! 上手くいっていると油断させて潰すべきだ」

「僕も同感だね。狙いが見えないなら、ボロを出させればいいしね」


 あっさりと提案は却下されてしまった。

 ちらっとスマラクト殿下に視線を送ると「いいだろう」とこちらも了承した。

 相手の失敗を待つより、強気に攻める。徹底的にやるという決意が見える。


「わ、わかった。協力する」


 やり方はわからないけど、相手が無事にすむとは思えない。それくらい、3人とも怒ってる。

 ルヴィニとサフィロスはアイオ様への危害、スマラクト殿下は風の民を危険に巻き込んだことへと怒りだろう。


 止められないし、せめて、アイオ様への被害が無い様に動くためには、私も参加する。



「ミオ。アイオを手駒にした後、王宮では誰を狙っていたと思う?」


 楽しそうにルヴィニが私に問う。

 同じ知識を持つなら、狙いを絞れるかを確認したいのだろう。次で上手く進めたいというのはわかる。


 王宮で暗示をかける対象。魔力が中級以下の重要人物。


「ジェイド……あちらの狙いが将来の神子を確保することであるなら、闇の神子であるアイオ様の次は、風の神子となるジェイド」


 彼は攻略対象の一人。あちら側の味方として引き入れるのは想像できる。


 アイオ様を優先するのか。両方を手に入れる動きを見せるのか。

 そこまではわからないけど、この時期はまだ留学はしていないから、王宮にて神子候補の教育を受けているはず。


「はぁ……あっちがなるのか」


 不機嫌そうな声が響く。

 

 まずい。

 現時点では、神子に近いのはスマラクト殿下だ。ライバルが神子になると言われて、私を見る目が変わった。


 私がびくっと肩を揺らしたのに気付いたルヴィニが間に入る。


「その話は後。そろそろ、アイオに接触する時間だし、いつ、また戻るかわからないから、作戦を立てるよ」

「そうだな。スマラクト、ジェイドとやらを連れて現場に来ることは可能かい?」

「多少時間はかかるが問題ない。あの宿にジェイドを連れて行けばいいんだな?」

「そうだね、さっき、カライスが阻止したのが15時の鐘が鳴る前だったから、鐘が鳴る頃が目安かな」


 今回の軸が終わらないと、次の行動は出来ない。

 次の狙いは、アイオ様に暗示が成功したタイミングを見計らって、スマラクト殿下がジェイドを連れて、その場に現れたとき、どう動くのか。


 そして、動きを誘導し、王宮に連れて行き、監視するという。

 今のところは、あちらを破滅させるような作戦には見えない。むしろ、危険人物を招き入れるのは危ないと思うのだけど。


「大丈夫だ。危険な分、見返りもでかい」

「そうそう。しっかりとみんなの前で潰しておかないとね」

「国の危機だからな」


 3人はある程度、作戦の狙いを理解しているようだけど、どうするつもりなのか。


 会話の途中、視界がぐにゃりと歪む。


「あっ」


 思わず出た間抜けな声に、「健闘を祈る」と返答とともに、暗闇に呑まれていた。


 次に目にした光景は、馬上でショウドウの門へと向かう道だった。


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