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攻略対象外の推しを救うため、世界を改変することにした  作者: 白露 鶺鴒
第一部 水の神子 暗殺阻止   第一章 風の大陸 出会いと陰謀の幕開け

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25.ショウドウ2



 検問の列に並びながら、どう動くべきかと考えているとルヴィニが口を開いた。


「カライス。ミオが身分証持ってないから、先に事情を伝えてきてよ」

「え? でも……」

「お願いできないかな?」


 カライスちゃんが戸惑うのをお願いという形で言葉を重ねる。


「そうだね。不審者のミオを検問から通すのは大変だからね。先に行って説明しておいて」

「わかりました! 任せてください」


 ルヴィニが前回はさらっと私を通過させていたのに、さも、苦労すると言いたげに説得して、宿に向かうように頼む。


 カライスちゃんと別れた後、詰所内の一室に案内するようにルヴィニが言うとあっさりと通された。

兵士に席を外してもらい、二人きりになる。


「まず、何かおかしいと気付いたら結界を張る癖をつけて。きみの場合、魔力抵抗では弾けないみたいだからね。いつ繰り返しが起きるかわからないから手短にいくよ」

「わかった」


 ルヴィニの言葉に従い、慌てて結界を張る。


 説明は簡潔だった。

 前回、既視感を感じていたのは、正しく、世界が巻き戻しが起きているという。


「ルヴィニは何回、繰り返してるの?」

「僕が気付いてから13回。厄介なことに、始まるタイミングは同じだけど、戻るタイミングはバラバラだね」


 13回。

 意外と多い。


 既視感を感じるのが遅いくらいかもしれない。すでに、ルヴィニは10回以上足掻いて、抜け出せていない。


「……13回も、どうやって?」

「術者は魔力が中級。僕は外に出せないだけで、魔力は上級だから弾ける」


 なるほど。中級と上級では明らかに、戦力に差が出ることは知っている。

 たいていが覚醒イベントが起きて、上級となることで神子になる道が拓ける。


 ルヴィニは異様な魔力が展開されたことに気付き、何者かの魔力を遮断し、記憶を保持しているという。


 しかし、上級で、外部に魔力が出せない。

 ルヴィニ自身も謎が多い。

 聞きたいけど、今は話をする時間がない。


「私は?」

「術者と同程度の中級。魔力の扱いはお粗末だけど、結界の扱い方はずば抜けてるからね。可能性があると思ってね」


 違和感を感じている節があり、試してみる価値があると考え、前回は誘導した。

 それでも、私が記憶を持ち越すかは賭けだったらしい。


「……ルヴィニ以外の味方は?」

「多分、合流するでしょ」


 ルヴィニが動きを変えたため、様子を見に来ると判断し、時間が限られているので、情報交換することになった。


「早速だけど、きみの方で思い当たることは?」

「……ある」


 この事象は、知らない。

 こんなことは神子でも出来ることではない。


 アイオ様の側にいた少女。疑う余地もなく、あの少女が原因だろう。

 散々やり込んだゲームで使われている声だから間違いない――あの少女の正体を私と同じ、導き手だ。


 それなら、この現象も説明がつく。

 神から与えられた能力の一つだ。

 

「それで? この事象は導き手様の能力ってこと?」

「うん。私が知っている彼女が持っている能力の一つは、空間転移。自分のいる場所と、行きたい場所を把握していると、そこに一瞬で移動できる」

「へぇ、便利そうだね」


 すごく便利だと思う。

 欲しかった能力だったが、彼女が先に選んだことで、その能力を持っていることを知った。


「空間を捻じ曲げられるなら、時間も捻じ曲げることも出来そうだね」


 ルヴィニがあっさりと口にした言葉に、口の中で苦い味が広がる。


 時間を捻じ曲げる。

 今回の事象を例えるなら、ゲームの機能でいう、セーブ&ロード。


 これなら、始まる場所が同じというのも納得できる。

 セーブをした瞬間に戻るから、毎回同じ、この町へ向かう途中から始まる。


 何度も見た景色だからこそ、感じた既視感の理由がわかった。

 

 だけど、何らかのミスが発生した時に時間を戻れるという能力は大きい。


 世界を救うにあたって、必須とも言える。

 私は思いつかなかったけど、良い判断だと思う。


「そう、だね」


 ルヴィニへの返答の声が掠れてしまう。

 だけど、空間転移と時間逆行。


 明らかに、私が選んだ能力よりも原作改変が容易く使い勝手が良い能力。

 この二つを持っていて、世界を救えないと判断する理由がわからない。


 だけど、彼女が出来ないから、私を送った。

 その成果を出すことが求められている。


 ジワリと汗が流れ落ちる。出来るだろうか。


「ミオ」


 私が一人、思案に暮れていると、肩をぽんと叩かれた。


 はっとして顔を上げる。

 時間が限られているなら、一人で考えを纏めるより、互いの情報を交換する方が先だ。


「他に知っている情報は?」

「神様は、彼女では救えないと判断して、私を送ることにした」


 私の言葉を聞いたルヴィニは、目を点にした。

 今までの余裕ある顔から、考え込むような仕草になる。


「つまり、本来の導き手様はあちらで、きみは紛い物?」

「まあ……そうなるのかな」


 はっきりと紛い物と言われると複雑だ。思わず、唇を噛む。

 私だって、この世界を救うために行動している。


 まだ、何も成果は出ていなくても、間近で見ていたルヴィニに私の行動を否定されるともやもやする。


 誰かに認めてもらうためではなく、私が推しを救いたいための行動だとしても、無意味だったと言われるのは堪える。


「でも……」


 ルヴィニの言葉を否定できない。

 私は後発で、短期間で成果を上げなくてはいけない。


 今、まだこの世界に留まっているということは、ルヴィニやサフィロスという神子様の従者に伝えても、暗殺阻止が成立していない。


 私がここにいる意味は――価値はあるのか。


 否。

 能力的にも、与えられた時間も劣るかもしれない。

 

 でも自分で決めた。能力だって、世界を救うことだって。

 それで充分。相手の方が優れていようと、時間があろうとか関係ない。


 やるべきことをやって、成果を出して……そこで初めて、紛い物を否定できる。


 自分に気合を入れ、ルヴィニに責められるのも覚悟して、顔を上げる。

 ルヴィニと視線が合った。じっと観察するような瞳だ。

 しっかりと見つめ合い、視線は逸らさない。


「私は私がやるべきことをする。呼び方なんて、好きにすればいい」


 ゆっくりと私の想いを伝えた。


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