表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

◎勇者になることは。

辺境の村の襲撃の翌日。

まだ暗い朝。


サロスは自分の家に引きこもり、身支度を整えていた。苦悶を浮かべ、澄み切った外とは似ても似つかない。


昨日の追突でもう車は使えないため、身一つで出ていくしかない。


リュックへ、服や少しばかりのお金を詰めていく。


そして白い鞘の剣は忘れぬように、部屋の中を移動する時も常に隣に置いておく。


荷物の準備がある程度終わると、剣の鍔と鞘に縄を巻き付け2つが別れないようにしっかりと固定する。


「俺は守れたかな。」


サロスは何を思ったか、縄を結び終わるなり、そう呟いた。


朝露が窓から滑り落ち、陽の光を通す。


こんな日じゃなければ綺麗であった冬の朝。


そこに、常連客が隙間から覗き込むようにゆっくりとドアを開けた。


「サロス?…何やってるの?」


コアはベッドに掛けるサロスを見て、純粋な疑問を持って聞いた。


しかし答える気配がない。


それを悟ったコアはサロスの部屋に入り、机の上に横に置かれたリュックを見た。


チャックが空いていて、中身が自然と見えた。


「どこかに行くの。」


声のトーンは落ち込み、心配や不安が混ざった声色で言った。

だが、すでにその答えが何であるか、子供ながらに予測出来てしまっていた。


「ああ。ここを出る。」


「どうして…」


でも、理解は出来ない。


質問しようと近寄るもサロスからありがとうと言われ突き放されてしまった。


コアは物が溢れたこの部屋の中で全ての家具が自分から離れていく気がした。


「コアももうここには来るなよ。怪しまれるからな。」


サロスは薄い笑みを意図的に加え、その言葉を言った。


去る理由は言うつもりがないのだと、"偉い子"のコアは察せてしまう。


そのせいで変に突っ込めない。


気を取り直せ、と胸の内で言った。


サロスに会いに来たのは別の理由があることを思い出し、気持ちを切り替える。


「サロス。僕、"勇者"になりたい。」


その2文字はサロスから偽物の笑顔を剥がし、本物を現した。


「何だって。」


もう一度聞かざるを得なかった。

理解出来ないから。


「僕、勇者になりたいんだ。」


「お前、分かってるのか。勇者は"裏切り者"のレッテルだ。お前はそれになりたいのか。」


剣を手放し、コアの肩を掴み揺らし、ものすごい剣幕でコアの黒い目を見る。


「…なりたい。」


やめろと全身から声を発してるのに、コアはそれでも押し通す。

子供の頑固さを取り戻したかのように、"偉い子"ではなくなったように。


だが、サロスも引くわけにはいかない。


「それに、魔王を倒すまでの道のりだっていつ命を失ってもおかしくない。お前の母親にも父親にも会えなくなるんだぞ。」


「お父さんは、昨日死んだんだ。」


コアは泣くことなく、不気味なほど冷静に言った。


「昨日の夜、薬草を集めてたお父さんはゴブリンに殺されたんだ。」


淡々と死因を語った。


「僕は止めたい。こんな思いをする人を無くしたい。だから僕は勇者になりたいんだ。」


意志を持った力強い声で覚悟を示した。


コアは一夜を通して、変わった。

それが良いことなのか、悪いことなのか、今はまだ分からない。


元々正義感の強い子供であったが、自分の父親を失って尚、正しさを取れる子供が一体この世界に何人いるだろう。


サロスにも分かっていた。

決して多くはないことを。


「だが、まだ子供のお前に何ができるって言うんだ。」


「なら、見てて。」


小さい声ながら自信を持ち、胸を張るコアをサロスは黙って見た。


コアは彼から一歩下がり、両手を合わせて力を込めた。


そして、その2つの手を徐々に離していくと、五指、それぞれの間に電光の線が現れた。


コアが手を捻るとそれに応じて電光はねじれ、人差し指を動かせばそこに流れる電光も波のように揺れ動く。


サロスは思った。

この子は天才だと。


現代、魔法の力は小さく、弱々しいものである。電気の魔法で例えれば、静電気くらいが関の山である。


それを、コアは静電気よりも太い電光を出し、また微細なコントロールも出来ている。


言うなれば、300年前の魔法使いに匹敵する魔力。


言うまでもなく、天才のそれだ。


「いつからこんな力が。」


驚きが先行し、勇者になることを認めるかどうか決めることを忘れ、質問してしまった。


「昨日。お母さんを助けることに一心で腕に力を入れて…」


コアが説明を始めた途端、また新たな客人が現れた。


店のドアを蹴り開け、数多くの兵士達が槍を持ち、木板の床を泥で汚す。


「コア。ここで静かにしてろ。」


そう小声で伝え、サロスは自室のドアを開けた。


兵士達の目に触れるや否や、兵士達は槍の先端をサロスに向ける。


コアはドアの隙間から少し顔を覗かせた。


兵士の壁を掻き分け現れた、一際目立つ赤い羽が付いた兜を被る兵士がサロスに指差し、力強い声でこう言った。


「非促進勇者誕生条約に従い、剣の勇者だと告発を受けたサロス、お前を逮捕する。」


サロスはポプルス国東部の裁判所に連行。


手を錠で繋がれ、被告席に立たされた。


厳格な雰囲気の中、コアは傍聴席に座り、サロスの処遇を見守った。


普通この国の裁判は15分から30分とほどほどにかかるのだが、今回は異なった。


「判決を言い渡す。"有罪"。被告人サロスは数多くの証人により非促進勇者誕生条約に違反しているとして有罪判決とする。刑罰は極刑。」


10分と経たず判決は定まった。

弁護人なども用意せず、まるで当たり前かのように、勇者だと疑われれば最後、死刑にかけられる。


「刑罰は明後日。ポプルス国立アリーナで行う。」


サロスが兵士に両脇を掴まれ、身動きが取れない状態で部屋を後にした。


搬送、独房に投げ込まれ、サロスは閉じ込められた。


窓すらない石レンガの冷たい部屋の中、天井の中心からぶら下がる電灯がサロスの影のみを作る。


「結局、何も出来ずに最期を迎えるのか。」


サロスは石壁にもたれかかり、その電灯を見つめて呟いた。


狭い部屋でたいして響きもしない。


それでも吐き出せずにはいられない。


「"みんな"に会えるかな。会ってくれるかな。」


サロスは目をつむり、その”みんな”を思い浮かべていると、


「サロス!サロス!」


「コア。」


扉の向こうからコアの声が小さく聞こえた。


「何しに来たんだ!」


コアの声量に合わせ、周りに気づかれないように声をひそめる。


「助けに来たんだよ!」


「ダメだ!早く家に戻れ!ここにいることが誰かに見つかればお前も危ないんだぞ!」


「そうだけど…」


「お母さんに会えなくなるんだぞ!」


コアの口は塞がってしまった。

何を覚悟して来たのかもコア自身、分からなくなった。


「おい!誰だ!」


コアは近くにあった樽の後ろに隠れた。


サロスは鉄製の鈍重な扉に耳を貼り付けて見回りに来たであろう兵士の声に注目する。


兵士の重く丈夫な鉄甲冑の靴が石の床と擦れる。その音がトン、トンと、一定の間隔で響き渡る。


そして、ピタリと音が止まった。


まさか、見つかったのか。


外が見えないこの状況をサロスはこれ以上悔やんだことはない。


耳だけでなく頬まで付けて音を聞こうとする。


「なんだ、気のせいか。」


兵士の足音は遠ざかっていった。


その機を逃さずコアはサロスに呼びかける。


「サロス。今助けるよ。」


「良いから逃げるんだ。俺のことは心配するな。」


「でも…」


「行くんだ。お父さんのためにも生きてくれ。」


「やっぱり誰かいるだろ!」


また兵士が戻ってきた。


「行け!早く!」


コアの軽い足音が段々と小さくなっていく。


「おい!お前!誰かと喋ってただろ!」


兵士は扉を拳で叩き、サロスに怒鳴った。


「まさか。呼べるわけでもないんだから。」


「見張ってるからな。」


そう釘を刺し、いなくなる。

だが、足音が聞こえない。


サロスが警戒していると、兵士は喋り出した。


「にしても、お前、このご時世に勇者になんかに憧れるなんて。正気を疑うよ。」


兵士の口調は嘲笑が大半だった。


「確かにな。」


サロスも一言、同調する。


普通じゃない。

勇者なんて誰にも応援されないし、裏切り者だと呼ばれ続け、もし勇者だとバレれば国が殺しに来る。


「でもな。だからこそ勇者なんだよ。普通じゃないことをやろうとするから、挑戦するから、俺達はあの人達を勇者と呼ぶんだ。」


「なんだ、他人事みたいに。」


兵士は気味悪がり、会話は途絶えた。


そこから、サロスは一人独房の中で誰とも話すことは無く1日、1日を過ごした。


そうして、処刑当日。


「出ろ。」


重々しい扉が床に傷を付けながら開けられた。


2人の兵士がサロスの腕を掴み、歩かせた。


手枷の鎖が歩くたびカラカラと鳴る。


目の前から久しぶりの陽光が差し込み、目を背ける。


「歩け。」


肩を殴られ再びを足を動かす。

頭を押さえられながら車に乗せられた。


ほぼ揺れが無く快適なドライブとなった。


そんな夢のような移動の末着いたのは、ポプルス国東部に建つ、ポプルス国立アリーナである。


高さ50メートルを超え、直径は200メートル。収容人数は5万人。ポプルス最大のコロシアムである。


人々はここで行われる乱闘や格闘を楽しみに集まる。


だが今回、戦うことは無いだろう。


そして、サロスが入るのは観客席ではない。

暗く湿った裏口から武器が置かれた倉庫のような場所に入る。


入ると、点々と弱々しい灯りを放つ松明が照らす。様々な武器がかけられ、投げ置かれている棚が列を成している。


その中の一つの列を通り、倉庫と区切られたスペースに出る。


この時、横目に見た棚に緑色の宝石がはめ込められた剣を見つけた。


サロスは近付こうと寄ってみるも兵士に押し戻されてしまった。


下唇を噛み、剣から目を背け、開けた空間に出された。


ただじっと、始まるのを待っていると、小さく声が聞こえた。


上、天井から叫び声が漏れ出してくる。


何を言ってるのかは聞き取れないが、喉を震わせ、怒りを募らせた怒号であることは石レンガ越しにでも伝わる。


その声らが時間が経つほどに更に大きく、更に激しくなっていく。


そして、声の中に、「裏切り者を殺せー!!」と読み取れるようになると、


目の前にあった、石壁が小石を振り落としながらゆっくりと上昇し始めた。


開かれた壁の隙間から外の光が漏れ出す。

それと同時に声も鮮明になる。


石壁が上昇し終え、ガタンと言う。


眩しく目を細めながら、兵士からの歩け、という命令に従う。


最早、足音も腕についた枷の音も掻き消された。


「殺せー!!」

「この罪人め!」

「さっさと死ね!!」


この有象無象の観客席からの声に。


見渡す限り人に囲まれ、罵詈雑言をかけられる。


その音圧が地面に撒かれた砂を巻き上げ、サロスの足を止める。


しかし、兵士は相変わらず肩を殴りサロスの足を無理矢理にでも動かす。


目が光に慣れ、顔を正面に向けると、アリーナの中心、木の柱が2本、その間、銀色に鈍く光り上から吊るされる何かがある。


砂に足跡を残し、進めば、見えた。


木の柱には飛び散った血がこびりついている。

吊るされた斜めの刃は所々欠けている。


これは、ギロチンだ。


最も苦しみのない処刑器具としてポプルス国の王が考えた、今では数多くの"勇者"がこれによって首を刎ねられている。


兵士がサロスに首をかけろと命令した。


それに抵抗することもなく、サロスは2本の柱の間にある木の板の窪みに首を置いた。


兵士が彼の両手を板の両端の窪みに置き、上から同じ形の板を合わせるように置き、鍵をかけた。


鍵をかけた兵士が高所の目立つ席にいる人に頷いた。


敷き詰められた赤いカーペットに、金色で枠取られた女神の姿が描かれたタペストリー。


そんなバルコニーに一つ豪華絢爛な王座に座る男は兵士に頷きを返した。


「私の愛するポプルスの民達よ!まずはこの場に集ってくれたこと感謝する。私はポプルス国の王。ウーヌス=インペラトール大王である。」


ポプルスの王は棒形の拡声器を持ち、そう言った。


「私達は300年前のあの日から魔王と対等な立場を持ってある条約を守ってきた。それは"非促進勇者誕生条約"。これに反してきた者は例外なく罰を受けた。私達の平穏な日々を乱そうとする罪人。ともあれど、魔王を倒せない裏切り者。彼ら、"勇者"とは私達善人な者には理解出来ない異常者である。」


首をかけたままのサロスは体を震わせることもなく、この王の言葉を黙って聞いていた。


「そして!今日!また1人、その異常者を我らの手で地獄に葬ろうではないか!」


両腕を天高く上げ、同調を誘うかのように観覧者をぐるりと見回す。


すると、今までバラバラで統一感のなかったサロスへの罵倒は一つにまとまり、王の言葉への肯定と変わった。


5万を超える人が喉を潰す勢いで殺意を言葉にした。


その声圧が前述した巨大なコロシアムを振動させ、壁にヒビを入れた。


王は処刑台の側に立つ兵士に顎で促した。


兵士は長斧を持ち、刃を吊るすロープに近づく。


兵士が一歩進む度、観客達の声は大きくなっていく。


そして、斧を振り上げ、ロープに向かって振り下ろされる瞬間。


「待て!!」


コアが観客席から飛び出した。


少し遡り、サロスが首をかけた時。


コアは母と共にサロスの処刑を見に来ていた。


「いい。あれが勇者の末路なの。しっかり見て。」


コアの母は落ち着いた声でコアに対して言った。まるで言い聞かせるように。


コアは昨日、サロスを独房から連れ出そうとしたあの時から次の日、母に告げた。


…「僕、勇者になりたい。」…


そう言われた母は頭に血を上らせ、怒りのままにコアに放った。


バカを言うな。勇者なんて、恥晒しだ。


勇者は裏切り者なんだ。と。


最初のうちはコアが、自分の息子が言った夢に対しての怒りだった。

だが、その対象は徐々に勇者その物へと変わり、最終的には、勇者を恨むとさえ言った。


…「勇者が魔王を倒していれば、あなたのお父さんもまだ生きてたのに…。」…


遂に母はコアに今日の処刑を見せようと考えた。

勇者の行き着く先、それが何なのか、息子に見せるために。


母からの戒めをコアは無言で返した。


サロスが腕まで板に押さえつけられ鍵をかけられた。


コアは母に見えぬように拳を握りしめた。


この世は不条理だ。


村を救ったサロスが殺されようとしているのに、襲った当のゴブリン達を探そうともしない。


だが、これが現実。

勇者であると疑われたら最後、罪人で、裏切り者で、異常者である彼らは殺される。


母はこれが言いたかったのだろうか。


コアがなろうとしているのは"殺される人間"だということか。


それでも、ならなければいけない。


この世界には勇者が必要だ。


だって、理不尽なんだから。

だって、自由なんて無いんだから。


だって、皆、苦しんでるんだから。


魔王を倒そうとすることが、普通じゃなくても、誰もやろうとしなくても、家族に止められたとしても、それが必要なことだから。


「僕は、」


コアはサロスに怒号を浴びせる人達を掻き分け、掻き分け、掻き分け続けて、1番前の席に着いた。


「僕は、勇者に、」


落ちないようにと備え付けられた柵に足をかけた。


雑多の罵詈の中に母の声がする。


「コア!待ちなさい!」


右手に力を込める。


「僕は勇者になる。」


足で柵を蹴り、観客席から飛び出した。


「待て!!」


アリーナに片膝をつき、手を地面に置いた。


コアは顔を見上げ、処刑台を見据え、腕に溜めた電気の力を地面に放った。


砂の中を5つの電光が進み、処刑台の鍵を壊した。


しかし、力の制御が甘かった。


余った残りの電光が刃を吊るすロープを焼き切ってしまった。


「嘘だろっ!」


サロスは急ぎ、上に乗る板を退かし、間一髪でギロチンの刃を避けた。


落ちた刃は退かしずれた板を真っ二つに切り分けていた。


「コア!」


「ごめんなさい!」


王はこの事態に玉座から立ち上がり、アリーナにいる兵士全員に命令を下した。


「あいつらを捉え、すぐに処刑しろ!!」


総10人の兵士は地面をついていた槍を構え、サロスとコアに襲いかかって来る。


「コア。ここに来たってことは、良いんだな。」


兵士達から後退りしながらサロスはコアに呼びかける。


「うん。決めた。勇者になるよ。」


彼の表情は依然暗いまま。

しかし、彼もまた決めた。


"勇者"になることを。


サロスは体を巻き、回転しながら、風の力を砂に向かって放った。


風は砂を舞わせ、兵士達の視界を奪った。


その隙に、サロスはコアに言う。


「コア!俺の剣を武器庫から取ってきてくれ!」


「武器庫!?」


「ああ!俺が出てきた門から入れ!時間は俺が稼ぐ!」


コアは頷き、砂の中を進み、門へ走った。


砂塵は薄まり、兵士達はサロスを睨む。


「おい!子供が逃げてるぞ!」


上から王が叫び、2、3人の兵士が視線を移すも、サロスが風を起こし、砂をかける。


「そうはさせない。まずは俺が相手だ。」


サロスは向かってくる兵士に力強く構えた。


1人目が槍を縦に振るも躱し、その兵士の腰に下げている剣を抜く。


2人目の振られた槍を剣で弾く。

高い金属の音が鳴る。


3人目の攻撃を避け、頭を剣で叩く。


4人目に槍を弾き、5人目に槍と鍔迫り合い、競り勝ち、足を引っ掛け、転ばせる。


しかし、斬ることなく戦っているために兵士達はとめどなく襲いかかって来る。


人数の影響で持続力ではどうしても勝てない。

槍を弾いても別のところから槍は向かってくる。


サロスもただではやられぬと、剣を振り下ろした。


だが、兵士達2人で槍を交差させ、サロスの攻撃が防がれた。

槍の間からもう1人の兵士がサロスの腹を突き刺す。


サロスは距離を取った。

完全に刺さる前に、動いたおかげで致命症にはならずに済んだ。


「コア。頼むぞ。」


息を切らし、そう呟いた。


コアは武器庫の中に到達。


サロスの剣を棚から棚へ、隈なく探す。


欠けた歯車のついた黒い剣。

騎士王が持っていそうな黄金と青の剣。

女神が作った風な、鳥が形どられた青い剣。


それらの剣を投げ、退かし、また棚を変えて、ようやく見つけた。


白い鞘に入れられた緑色の宝石が埋め込められた剣。


「これだ!」


両端に伸びた鍔を掴み、剣を引き抜く。

その反動に勢いよく床に尻をつき倒れた。


コアは起き上がり、剣を肩に担ぎ、重さに耐えながら、膝を曲げ歩く。


剣に括り付けられた縄が肩に食い込んで痛い。


「なんで、こんな固い縄で結んであるのっ!」


サロスに怒りを吐露し、アリーナに戻った。


「サロス!!」


コアは大声で呼び、剣を重心に体を回転させる。


王が遅れて、兵士達に叫んだ。


「あの子供を止めろ!!」


だが、もう遅い。

コアは回転に乗せ、剣を投げた。


宙を舞い、向かっていく先は、ただ1人。


「よくやった。」


サロスは兵士の剣を投げ去り、手を掲げる。


鬼に金棒という言葉があるように、

"剣の勇者に伝説の剣"。

負けるはずがないだろう。


剣はサロスの手に掴まれた。


兵士達は槍先を向け、サロスに向かってくる。


サロスは右足を後ろに引き、その上を剣でなぞる。


柄を両手で握り、息を整える。


兵士達の叫喚と足音が限界まで小さくなると、

剣を横一閃に振った。


すると、アリーナの砂、そのほぼ全てを空に飛ばし、渦を巻き、10人の屈強な兵士達をも吹き飛ばした。


アリーナに現れた砂の竜巻が王の、観客の目と鼻を塞いた。


「コア!逃げるぞ!」


渦の中にいるコアはサロスに駆け寄った。


「掴まれ!」


サロスの言われるがままにコアは彼に被さった。


サロスは剣を背後に構え体を捻らせ、一気に解放、風を起こし自分達の体を浮かせた。


剣を回転させ、砂の竜巻の中を飛んでいき、アリーナの壁を越え、外に出た。


「やった!サロス!やったよ!」


コアがサロスに抱きつきながら、そう叫んだ。


しかし、サロスに反応がない。


「サロス?」


「着地の仕方どうしよう。」


「え!?」


2人は50メートルの高さから落下し始めた。


「サロス!僕に考えがある!」


「頼んだ!」


コアは、電気を手に溜め、地面に向かって放電する。


サロスはそうするコアに掴まった。


電気の量を増やし、落ちる速度を弱めていく。

段々と地面に近付き、なんとか降り立った。


「ありがとな。コア。」


サロスはグッドサインを出してそう言った。

コアは顔が緩み、嬉しそうに微笑んだ。


「よし、じゃあまず、人通りの少ないところに行こう。」


「うん。」


2人はアリーナから離れた。


砂の竜巻は止み、王は中央のアリーナを見るも、そこには吹き飛ばされた兵士が倒れているのみ。


王は過呼吸になり、拡声器を手に、叫んだ。


「あいつらを絶対に逃すな!何としてでも処刑するのだ!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ