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19枚目・美酒と苦汁を、そして祝杯に謎を添えて④

「まったく・・・謝れば全部許されると思ってるんだから・・・

それにしても、その話、めちゃくちゃ怪しいわね・・・」

「怪しいって?」


訝しげに目を細める瑞希が何に対して「怪しい」と言っているのか分からず、泉美は首を傾げる。


「そのウォールって占い師が占ったら、博士っていうパラレルワールドに詳しい研究者に行き着いたって話でしょ?

そもそも、占い師ってだけで怪しいのに、占って紹介された先が()()()()()()()()()()()()()()()()()()って、怪しさ全開で引くわ!!」


瑞希の言葉に、泉美は思わず乾いた笑いを漏らす。

確かに泉美の簡単な説明だけでは、疑うのも無理はないだろう・・・いや、詳しく説明したところで怪しさが増すだけか・・・

泉美は苦笑いを浮かべながら、瑞希に提案する。


「博士は正確にはパラレルワールド研究者じゃなくて()()()()()()()()()()なんだけど・・・

そんなに怪しいと思うなら、瑞希がウォールさんや博士に会って話を聞いてみたら?」


瑞希に提案しながら、泉美は(きっとムキになって「会うわけ無いでしょ!?」って言うんだろうなぁ~)と心のなかで微笑んでいた。

だが、そんな泉美の思惑とは異なり、瑞希は真剣な目でやや俯き気味に首を傾げながら考え込んでいた。


「・・・機会があればね・・・」

「えっ!?」


予想外の瑞希の言葉に泉美は一瞬固まってしまう。

だがすぐに目を輝かせ、瑞希の手を取ってブンブンと振りながら、早口でまくしたてる。


「絶対に会ったほうが良いよ!!

ウォールさんって見た目は小学生なのにとっても紳士な大人で、占いの的中率半端ないんだって!!

博士も見た目はヤクザみたいなのに、面倒くさがりながらも親切にしてくれたいい人なんだから!!・・・まぁ、タイムトラベルを実現する説明は、ちょっと難しくて頭爆発しちゃったけど・・・」


最後の部分を苦笑いで瑞希に説明しながら、泉美は目を輝かせたまま、瑞希を見つめる。


「いつ会いに行く!?今週の土曜日とかどうかな!?」

「ちょ、ちょっと落ち着きなさいって!!」


泉美の予想外の食いつき方に、瑞希は驚きながらも落ち着くように言い聞かせる。


「機会があればって言ったでしょ?


(泉美を元の世界に帰す手がかりになりそうな人たちってことで、ちょっと興味があるってだけなのに、この娘は食いつきすぎなのよ!!

どんな相手かと思ったら、見た目小学生みたいな大人とか、ヤクザみたいな科学者とか、予想外すぎて絶対に会いたくない!!)


わ、わざわざ会いに行く時間を作るつもりはないわよ・・・」

「ええ!!でもぉ~・・・」

「「でも」じゃないの!」


顔を曇らせる泉美を、ピシャリと(いさ)めると、瑞希は少し面倒くさそうに目をつぶりながら言う。


「こんな話どうでもいいから、他の・・・勝者は勝利の美酒に酔ったり、敗者が敗北の苦汁をすするのよって話はもう十分ね。

あとは・・・さっきの誕生日の―――」

「誕生日!?」

「えっ・・・ええ・・・」


瑞希が誕生日のことをあげた瞬間、泉美は再び目を輝かせ話に食いついた。

戸惑う瑞希をよそに、泉美は再び早口でまくしたてる。


「瑞希はいつも誕生日のことどうでもいいって態度だったからうれしいよ!!」

「いや・・・私もどうでも―――」

「いつも瑞希のこと引っ張って私の家で誕生日パーティーをやっていたけど、今年は瑞希の家でやるのも良いかもね!!」

「ちょ!勝手に決めな―――」

「ああ、それだとルーンが誕生日パーティーに参加できないか・・・」

「いい加減!人の話を―――」

「瑞希のお母さん猫アレルギーだもんね」

「いや・・・そうだけど、ルーンがいるかいないかなんて関係なく、誕生日パーティーなんてやらな―――」

「ルーンは毎年誕生日パーティーにだけは必ず家にいるんだよね。

まぁ、いつも半分の時間しかいないんだよねぇ~?気がつくといなくなってるし・・・どこ行っちゃうんだろうねぇ~?」

「・・・そんなの知らな―――」

「フフ♡

ルーンといるときは瑞希、笑顔戻るから一緒に誕生日パーティー楽しんでるって気分になれるんだよねぇ~」

「そ、それは・・・確かにそうだけど・・・」

「ああ!笑顔がない瑞希が嫌だってわけじゃないよ!

笑顔がなくったって、楽しんでくれてるのは分かってるから♪」

「なっ!勝手に決めつけ―――」

「今年は泉水もいるから3人だね♪いつもの誕生日パーティーよりも豪華になりそう!!」

「はぁ・・・そうね・・・」


泉美のハイテンションについていけず、瑞希は大きなため息をついた。


「はぁ~、親友になりたいなんて、判断間違えたかしら・・・」

「ん?なにか言った?」

「別に・・・」


泉美が自分の言葉を聞き逃したと思った瑞希は、そっぽを向いて短く応える。

そんな瑞希に泉美は微笑みながら言う。


「私はこっちの世界の瑞希とも親友になれて嬉しかったけどねぇ~♪」

「・・・ちゃんと聞こえてるじゃない・・・意外と腹黒いわね、貴女」


少し呆れてしまった瑞希だったが、すぐにニヒルな笑顔を浮かべ、嫌味ったらしく皮肉を込めて言う。

そんな瑞希に応えるように、泉美も満面の笑みで応える。


「瑞希の腹黒さには負けるよ♪」

「フフフ・・・言うじゃない。

フフフ・・・」

「アハハ・・・向こうの世界で瑞希に鍛えられたからね♪

アハハ・・・」


2人は笑い合いながら、どす黒いオーラを纏い、しばらく笑いあった。


「まぁ、冗談は置いといて・・・」


しばらく笑いあった後、泉美は唐突にどす黒いオーラを取り払うと、以前訪れた水輝家、本家の竜水が用意してくれたスマホを取り出し瑞希の顔を見る。


「誕生日パーティー、この土曜日でいいかな?」


泉美はスマホのカレンダーを指さしてみせる。

その日は本来の誕生日から数日後だった。


「まぁ、良いんじゃない・・・27日は平日だし」

「だよね。誕生日パーティーなんだから、一日休みの日じゃないとね。

ごちそう用意して、誕生日ケーキも用意して、あとあと!プレゼント交換もしないとね♪」

「プレゼント・・・」


泉美の言葉に瑞希は目を細めて黙り込む。

そんな瑞希の様子に気づいた泉美は、不思議そうに瑞希を見つめる。


「どうしたの?怖い顔して黙り込んじゃって?」

「泉美・・・貴女―――」


瑞希が発した言葉に、泉美は目を丸くして驚き、次の瞬間には顔を真っ赤にして怒り出した。

やがて隣り合った自宅に到着した2人は、それぞれの家の中へ入っていく。



しばらくして・・・



「ただいまぁ~」


帰宅の言葉を発しながら、泉水が疲れ切った顔で玄関を開け家の中へ入っていく。


「おかえり・・・」

「お、おう・・・な、なんだよ、何そんなに怒ってるんだよ?」


玄関に入った泉水の目の前には、鬼の形相で仁王立ちする泉美の姿があった。


「瑞希から聞いたわよ・・・泉水、貴方、誕生日パーティーで瑞希にプレゼント渡してないんだって!?」

「誕生日パーティー!?

・・・ああ、そう言えば今月は俺達の誕生日か・・・で、俺が瑞希に誕生日プレゼント渡してないことでそんなに怒ってんのか?」

「当たり前じゃない!!

小さい頃は、ちゃんとプレゼント用意してたらしいけど、中学生頃からプレゼント交換しなくなったそうじゃない!!

なんで!プレゼント交換しなくなっちゃったのよ!!

誕生日パーティーの醍醐味って言ったら、豪華な料理と豪華なケーキに、キレイにラッピングされたプレゼントじゃない!!」


怒りのオーラを纏い、激怒する泉美の様子に、泉水は少し気圧されながら反論する。


「が、ガキじゃあるまいし・・・良い年してプレゼント交換なんて恥ずかしいじゃねぇか・・・」

「子供じゃないから恥ずかしい!?」


泉水の言葉は、泉美の怒りの炎に油を注ぐ結果となった。


「大切な親友の誕生日にプレゼントの一つも用意しないなんて!!

アンタ最低よ!!」

「いや・・・そこまで言うことかよ・・・」


泉美の怒りのオーラ全開の様子に、泉水はすっかり萎縮してしまい、しどろもどろになってしまう。


「わ、分かったよ・・・今年はちゃんとプレゼント準備するよ」

今年(・・)だけ!?」

「こ、今年からちゃんと誕生日パーティーにはプレゼント用意するよ・・・」


泉水の言葉に、泉美はようやく怒りを収めて、ニッコリと微笑む。


「よろしい。

じゃあ、誕生日プレゼント楽しみにしてるから!」

「あ~・・・はいはい」

「私のプレゼントも楽しみにしててね♪」


先程の怒りの姿がウソのようにご機嫌な様子で部屋に戻っていく泉美の後ろ姿に、泉水は大きなため息をついた。


「あの様子じゃ、適当なプレゼントを選んだら怒りそうだな・・・」


泉美の後ろ姿を見送りながら、泉水はプレゼントを何にするか思案し始めた。

相手は女の子2人、瑞希の好みは熟知しているから、おおよそのプレゼント候補は絞れるが、泉美にはどんなプレゼントをすれば良いのか・・・


「検討もつかねぇ~・・・」

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