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19枚目・美酒と苦汁を、そして祝杯に謎を添えて③

「・・・そう言えば」


泉美が叫んだ場所からだいぶ離れたところまで来たところで、瑞希は思い出したように語り始めた。


「貴女のどうでもいい愚痴(ぐち)を聞いてあげててすっかり忘れてたけど、泉水はどうしたの?

って言うか貴女がなんでここにいるの?部活は?」


矢継ぎ早に投げかけられる瑞希の質問に、泉美は苦笑しながら答える。


「部活は自主練になったの。何でもマリア先生が急用でいないからって・・・」

「ああ、そういえば校内放送で呼び出し食らってたわね。

で?貴女は自主練、嫌だから逃げてきたわけ?」

「そんなわけないでしょ!

泉水が「自主練するくらいだったら、剣道部に行ってこようかな~」なんて言い出して、それを聞いてた舞先輩が「それならば私も部長として、剣道部にて部員に指導をしよう!」なんて言い出して・・・」


目をつぶり、大きくため息をつく泉美、顔を上げると困ったような顔で続きを話し始める。


「2人揃って剣道部に行っちゃって・・・

ああ!!私も竹刀振りたかったのに!!」


突如叫ぶ泉美を瑞希はジト目で睨みつける。


「うるさいわね・・・文句言うなら泉水たちと一緒に剣道部に行けばよかったのに」

「できるわけ無いじゃん!?

向こうの世界なら兼部してたから良いけど、こっちじゃ剣道部のみんなに『だれ?』って言われちゃうよ・・・」


見るからに意気消沈な泉美に、瑞希は目を細める。


(・・・そんなに剣道がしたいなら、泉水と一緒に水輝家本家の道場に行けばいいだけの話でしょ・・・ボケてるの?バカなの?)


瑞希は心の中で小さくため息をつく。


「で?

貴女は演劇部の部活動をすっぽかして帰ることにしたってわけ?」

「しょうがないでしょ?

主人公もヒロインもいない状態になったから代役の出来ることなんて、ほとんどないんだから・・・だから、帰っちゃおうかなって」


そう言いながら、瑞希の顔を見て泉美はニッコリと笑う。


「部活動しなければ瑞希と一緒に帰れるしね♪」

「あっそ・・・」


瑞希のあっさりとした反応に、泉美は肩透かしを食らったように、あっけにとられる。


「瑞希・・・なんか冷たくなったよね・・・最初の頃はムキになって反論してたのに・・・なんかつまんない・・・」


目を細めて口をとがらせる泉美に、瑞希は無表情のまま目を細めて言う。


「いい加減慣れたわ、貴女の考えなんて単純ですぐに分かるし、顔を赤くして早口で反論する私を見て楽しみたかったんだろうけど、残念だったわね」

「そんなに慌てる様子が見たかったわけじゃないけどさ、ちょっとは面白い反応してくれるかなぁ~・・・とは思ってたけど」

「まったく子供じゃあるまいし、子供っぽいイタズラはヤメなさい」


瑞希は小さくため息をつくと、歩みを早めた。

そんな瑞希の後を、泉美は少し慌てて追いかける。


「まぁ、ちょっと子供っぽいかなぁ~とは思うけどさぁ~」


ちょっと罰が悪そうに、顔を曇らせながら反省の言葉を口にする泉美。

しばらく顔を曇らせたまま瑞希の隣を歩いていた泉美だが、突如「あっ!」と声を上げる。


「今月、私の誕生日だ!!忘れてた・・・」


異世界に来てしまうという、普通の人生ではおおよそ体験しないであろう体験に、泉美はすっかり自分の誕生日のことを忘れていた。

そんな泉美に瑞希はピクッと、少しだけ眉を動かす。


「今月・・・誕生日ねぇ~・・・」

「そうなんだよ~。子供っぽいって言葉でふと思い出したんだけどね。

・・・そう言えば、博士のところで話を聞いた時、泉水も私と同じ誕生日だって言ってたっけ・・・・・

ねぇ?瑞希?」


泉美の疑問形の問いに、瑞希は面倒くさそうに視線を向けて返事をする。


「・・・何?」

「瑞希も誕生日って、5月27日?」

「なんでそれを・・・

ああ・・・そう言えば、貴女もイズミだったわね・・・」


一瞬驚いた瑞希だったが、目の前の少女が親友の泉水と同じイズミであることを思い出した。

何の運命のイタズラか、瑞希の誕生日も泉水と同じ5月27日なのだ。

そして、泉水と泉美の誕生日が同じということは・・・


「私たち3人の誕生日が同じってことね・・・」


瑞希はもはや驚き疲れたといった様子で、遠い目をしながらため息をついた。


「誕生日なんてどうでもいいと思うけど、どうせ毎年来るんだし・・・」

「それはそうだけど・・・来年は私、この世界にいないし」


泉美の言葉につまらなそうに目を細めていた瑞希の眉毛がピクッと反応する。

瑞希は睨みつけるように泉美に視線を向ける。


「なに・・・元の世界に帰れることにでもなったの?」

「うん、博士の・・・占い師のウォールさんのところに行った時に、占いで紹介してもらった異世界のことに詳しい博士がいるの。

その博士から、話を聞いてね。

本職はタイムトラベルの研究者なんだけど、異世界への入口に関する研究もしてて、その博士が言うには、この世界に来てから半年後に、この世界と別れることになるってさ」


あっけらかんと応える泉美の言葉に、瑞希はゆっくりとまばたきをする。


「ふ~ん?・・・つまり、半年後・・・貴女がこの世界に来てから1ヶ月経つから、正確には5ヶ月後・・・秋頃には元の世界に帰ることが出来るってわけね?」

「ん~・・・正確には戻れるかも?って言ってたなぁ~・・・異世界へのゲートを開く機械を作ってくれるんだって」


瑞希の問いに、泉美は少し考えながら応える。

そんな泉美を瑞希はジト目で睨む。


「さっき半年後に、この世界とお別れするって言ったじゃない・・・」

「あれ?そんな言い方したっけ?

最短で半年って話だって言わなかったけ?」

「言ってないわよ!!

紛らわしい」


ゴメンゴメンと悪びれる様子もなく謝る泉美を、瑞希はジト目で睨む。

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