18枚目・剣の道に生きるということ【泉水】⑦
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
「あの試合を最後に、剣を置くことを決めているほとんどの3年生を、有終の美として華やかに飾ろうと思ってくれたことは、素直にうれしく思う。
だが、それは他校も同じだとは思わなかったかな?」
「他校・・・他の高校も同じ・・・」
「そうだ、我が校にあの大会を最後に、剣を置くことを決めた者たちがいるように、他校にもあの大会を最後に、剣を置くことを決めた者たちがいただろう。
そして、残された者たちは、去り行く者たちに、最後の餞をしたいと思っていたに違いない。
我が校だけではないのだ、すべての高校が同じ思いを胸に大会に臨み、多くの高校が願いをかなえることなく散っていった。
ならば、願いが叶わなかった我々に出来る事は、恨み節を言うのではなく、願いをかなえたことを祝福することではないか。
少なくとも私はそう思う」
「それは・・・そうかもしれないですけど・・・でも!!」
「これは今回の大会に限った話ではない、どんな大会でも同じだ。
剣術でも、格闘技でも、陸上競技でも、野球などの球技でも、音楽である吹奏楽でも、合唱でも、勝負の世界に身を投じたのであれば、そこには必ず、勝者と敗者が生まれる。
勝負に挑んだ者へ与えられるのは、歓喜か悲嘆、二つに一つしか掴めない宿命、ならば敗者に出来る事は、次こそは勝つという強い決意と、自らを負かし勝者となった者への最大の賛辞ではないか?」
舞の言葉に、泉美は何も言えずに下を向いてしまった。
「我々3年生のために怒ってくれたことには感謝する。だが、そのために相手の実力を過小評価し、あまつさえ馬鹿にするようなことは、するべきではなかった。
決闘に臨んだ武士は斬られ、散る間際に「見事!!」と言って、自らを討った相手を称賛して散っていったという。
少なくとも我々剣に生きる者としては、その精神を忘れるべきではなかったのではないかな?」
そう言うと舞は、泉美の肩を【ポンポン】と叩き、その場を去っていった。
一方、泉美はただうつむき、立ち尽くすだけだった。
<おまけ>
「そう言えば・・・」
思い出したように声を発した泉水は、自分たちのもとから立ち去り、歩き去ろうとしていた舞を追いかけ声をかけた。
「何で舞先輩が俺たちの口喧嘩を止めに来たんですか?
普通そういうのは顧問のマリア先生の仕事じゃ?」
「う、う~ん・・・それがなぁ~・・・」
泉水の質問に、舞は立ち止まり少し困ったような顔で唸ってしまう。
「君たちの口喧嘩でマリア先生が原因だという台詞が聞こえたとかで、向こうでの・・・・」
そう言いながら舞は体育館の端を指さした。
そこにはうずくまり明らかに暗いオーラを纏ったマリア先生とその周りに詰めかけている部員が数名いた。
「落ち込んで現実逃避されておられる・・・」
「せ、先生・・・」
余りの光景に、驚きを通り越して泉水は哀れささえ感じてしまい言葉を失ってしまう。
舞はため息交じりで話を続ける。
「落ち込んでいる先生を、私を含め数名の部員たちで慰めていたのだが・・・
そうしている間に君たちの口喧嘩が、どんどん熱を帯びていくのが聞こえてきてな。
本来であれば先生に頼むところなのだが、あの様子では先生に仲裁を頼むことも出来ず、仕方ないので、私が代わりに君たちの仲裁に来たという訳だ」
「それは・・・なんというか・・・ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした・・・」
そう言って泉水は頭を深々と下げた。
そんな様子に舞は苦笑いを浮かべ、肩を【ポンポン】と軽くたたくと、そのまま落ち込んでいるマリアのもとへと歩いて行った。




