18枚目・剣の道に生きるということ【泉水】⑥
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
泉美が話し終えると、ゆっくり目を開けて、丁寧に話し始めた。
「なるほどな・・・水輝君の言い分は分かった。確かに春野君が一勝も出来なかったことも、わが校の団体戦が惨敗で終わり、我々三年生の最後の大会があのような結果になってしまったのも、残念ではある。
残念ではあるが、春野君には春野君の事情があって、一勝も出来なかったのだろうし、団体戦については春野君の不調を補えなかった我々の責任でもあり、それを春野君1人に押し付けるのは如何なものかと思う」
「確かに・・・そうですけど・・・でも」
納得がいかないと反論しようとする泉美に、舞はさらに話を続ける。
「我々は全力を賭けて勝負に臨んだ。そして、負けた・・・
ならばその負けを素直に受け止めるべきだろう」
「負けを素直に受け止めるって!!それじゃあ負けるのも仕方ないから諦めろ、ってことですか!?」
舞の言葉に噛みつく泉美に、舞はゆっくりと首を横に振る。
「いや、負けることが仕方ないと考えるのは、勝負を挑む時点で負けることを念頭に置くようなもの。
勝負する前から負けることを考えるなど、勝負する前から負けているようなものだ。
勝負する時は常に勝つことを念頭に置く、そうして勝負に臨み、それでも負けてしまったらその時は負けを素直に受け入れる。それが勝負だ」
「でも、負けた結果、先輩たちの最後の大会は負けで終わっちゃった。
先輩たちの思い出の最後が負けで終わっちゃったんですよ!!
そんなの許せる訳ないじゃないですか!?」
「ふむ・・・剣道部に所属している訳でもなければ、長くこの高校に通学している訳でもない君がなぜそこまで我々3年生を念ってくれるのか謎だが・・・」
「そ、それは・・・」
舞の問いに泉美は返答に詰まる。
理由など決まっている。
剣道部には兼部とはいえ所属している泉美にとって、異世界の住人であり彼らにとっては泉美という人間には認識が無いだろうが、泉美にとっては共に汗を流した先輩たちと同じ顔をした人物、世界が違えども大切な仲間と同一人物にしか見えないのである。
そんな人たちが迎えた最後の大会、特別な感情を持つなという方が無理であろう。
だからこそ、ここまで熱く、深く、関わりたいと思えた、だから許せなかった。
自分と同じ思いであるだろう泉水が、調子が悪かった、仕方なかった、そんな言葉を並べて、先輩たちの花道を台無しにした理由にしていることを、どうしても許せなかったのだ。
「・・・まぁ、この学校の一員にいち早くなりたいと思う一心からなのだろうが」
泉美が答えられずにいる間に、都合よく舞が理解してくれたようで、目を閉じて小さくうなずいている。
その様子に泉美は心の中でホッと胸を撫で下ろした。
「何はともあれ、水輝君の言い分は分かった。
だが、我々3年生を思ってくれたからこそ、そのことに怒りを覚えるのは間違っているな」
「なっ、何で、ですか!?」
予想外な舞の言葉に、泉美は憤りを隠せず、思わず大声が出てしまった。
そんな泉美のことを無理やりなだめるようなことはせず、舞はゆっくりと理由を語り始めた。




