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16枚目・予想外な事実⑥

読みやすさのため、内容を分割して調整しました。

文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。


作者:服を着た猫




その後、マリアが出席を取り、生徒たちは淡々と応えた。


「村上さん」

「はい」

「うん、今日は欠席なし、と・・・じゃあ、朝礼は以上。みんな頑張って授業受けるんだよ!居眠りしちゃダメだからね!!」


そう言うとマリアは横を向き、教壇を降り始めた。

その途端、ため込んだ力を開放するように、女子生徒たちが泉美の席へ駆け寄った。


「水輝さん!皆倉さんと親友ってどういうこと!!」

「いつ知り合ったの??」

「男子の家に居候って、本当に大丈夫!?」

「ねえ!!春野君、水輝さんを名前で、しかも呼び捨てにしてなかった!?」

「そう言えば蛍さんも、皆倉さんのこと名前で呼んでたよね!それだけ仲が良いってことは、昔から友だちだったの!?」


泉美の周りを囲んだ女子生徒から矢継ぎ早に質問が飛ぶ、そんな状況に最初は苦笑いだった泉美だったが、耐えかねたように叫ぶように言った。


「みんな落ち着いて!!

泉水も瑞希も小さいころ友達だったってことだよ。自己紹介の時に言ったでしょ?水輝家の集まりで小さいころからアゲハさんに可愛がられてたって、その頃から泉水の家にもちょくちょく行ってて、泉水はもちろん、瑞希ともその時に知り合ったの」


泉美の説明を聞き、女子生徒たちは口々に声を発する。


「じゃあ、幼馴染だから親友ってこと?」

「なるほど」

「だとしてもよくあの皆倉さんと友達でいられるよねぇ~」

「ダメだよ。本人の前でそんなこと言っちゃ」

「皆倉さんと親友ってことは、春野君とも親友なのかな?」

「どうなんだろう?」

「クラスメイトの男子の家に居候なんて、ドラマみたい!」

「ドラマならこのまま2人は恋人に・・・キャー♡」


泉美を中心に思い思いにおしゃべりに興じる女子生徒たち、そんな彼女たち。

その対角線側、窓側の後ろの席に座っている泉水のもとにも男子生徒たちが集まっていた。


「で、どうなんだよ!!」

「どうって、何が?」


ドスの利いた声で詰め寄る男子生徒の言葉に、泉水は面倒くさそうに応える。


「何が?じゃねぇよ!!あんな美少女と知り合いなのも許せないのに、同居してるとか、うらやまし過ぎるんだよテメェ!!!」

「一緒の家で寝て、朝飯喰って、一緒に登校・・・リア充だな、リア充の鏡だな!

心から言ってやる、心の底から言ってやる!

リア充爆発しろ!!!」

「小さいころから友人ってことは、幼馴染ってことだろ。

幼馴染と久々に会って、同居して、互いに意識し合い、やがて2人は一線を越える。

エロゲーか!?

このリアルエロゲー主人公野郎!!

そのポジション俺に譲れ!!!」

「美少女の幼馴染がいるけど、性格悪いから羨ましくなかったっていうのに、あんな性格良さそうな美少女まで幼馴染とか、途端に羨ましく―――」

「うっせー!!」


面倒くさそうにうつむいていた泉水は、急に怒鳴ると周りを取り囲む男子生徒を睨みつけた。


「美少女の幼馴染が羨ましいとか、リア充爆発しろとか、エロゲー主人公とか、好きかって言いやがって!!

だけど、それだけだったらいい・・・美少女だけど性格が悪い幼馴染って瑞希のことだろ!?

誰だ!前出ろ!!ぶっ飛ばして―――」

「いいわよ、私が性格悪いのは自覚してるし」


その声に男子生徒は一斉に振り向いた。

そこには、仏頂面で彼らを射抜くように睨む瑞希の姿があった。

その姿を見た男子生徒たちは一斉に後ずさりし、まるで海が割れるように泉水へ道を開けた。


「私はモーゼか・・・まぁいいわ。

あんた達おしゃべりは終わり、もうすぐ授業が始まるから席に戻りなさい」


命令口調で言う瑞希に、男子生徒たちは戸惑う。


「なんでお前のいうことなんか―――」

「何・・・言いたいことがあればはっきり言えば?」


小声で文句を言う男子生徒を、的確に射抜くような鋭い視線で睨みつける瑞希に、睨まれた男子生徒はもちろん、他の男子生徒も蜘蛛の子を散らすように席へと戻っていった。


「助かったよ、正直面倒で仕方なかったんだ。

だけど・・・何でこっちに来てるんだよ?いず―――・・・あいつを加勢してやらなくていいのかよ?」

「みんな転校生のあの子に興味があるの、私のことなんてどうでもいいのよ。むしろ邪魔くらいに思っているでしょうね。

だから少し離れてたんだけど、泉水の怒鳴り声が聞こえたから様子を見に来たって訳」

「わりぃ・・・」

「何でアナタが謝るの?」

「あいつらの代わりだよ。

あいつら俺に嫉妬するだけならまだいいけど、ここぞとばかりに瑞希のことまでバカにしやがって!」

「本当のことなんだから別にいいじゃない。

むしろそんなことでクラスメイトとケンカして、評判下げるようなことするなんて、アンタの方がよっぽどバカじゃない」

「そんなことなんて言うなよ!!

親友だろ・・・」


悲しげにうつむきながら言う泉水に、瑞希は小さくため息をついて言った。


「・・・そんな親友にも言えないことがあるんだ?」

「何のことだよ?」

「あの子・・・泉美のことで悩んでるんでしょ?」

「な、何を・・・何を根拠にそんなこと言ってるんだ?」

「根拠?

根拠は今動揺したことで十分だと思うけど・・・強いて言うなら、勘・・・ね」

「勘って・・・」

「それで十分よ。何年あなたと腐れ縁していると思っているの?

今朝のあなたを見ていてすぐに気が付いたわ。泉美に何かを隠している・・・いえ、言えないでいる」


その言葉に泉水は動揺を隠せずに応える。


「そ、そんなに顔に出てたか・・・?

演技力をフル活用したつもりだったんだが・・・」

「安心しなさい、私ぐらいじゃないと気が付かないレベルだったから・・・でもその様子じゃ、私にも言えないって感じ?」


ジッと見つめてくる瑞希に、泉水はバツが悪そうに視線を逸らし、しばらく押し黙った。

やがて消え入りそうな声で泉水は答えた。


「今は言えない」

「親友の私にも?」

「ああ、俺の・・・俺たちの親友である瑞希だからこそ言えない」

「・・・そう、別にいいけど」

「ごめん・・・」

「謝らないでよ・・・

じゃあ、私も何も気づいてないふりするから、言いたくなったらいつでも言って」

「ああ・・・分かった」

【キーンコーンカーンコーン・・・】


泉水が応えると同時に、呼鈴のチャイムが鳴り響く、それを聞いた瑞希はニヒルに笑いながら言った。


「その時は『そんなしょうもないことで悩んでたの?』って思いっきりバカにしてやるわ」


泉水を気遣っての精一杯の茶目っ気だったのだろう。瑞希は背を向けて自分の席へ戻って行く。

その後ろ姿を見ながら泉水は、誰にも聴かれないようにポツリと言った。


「言えねぇよ・・・泉美の余命が6ヶ月もないなんて」

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