16枚目・予想外な事実⑤
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
「で、でも、男子と一緒の家に一緒に住むなんて・・・」
イズミたちの予想に反し、戸惑った様子で女子生徒の抗議の声が聞こえた。それに伴いクラス中から「言われてみれば・・・」「普通に考えてダメだよな・・・」「何かあったら・・・」などとひそひそ声が聞こえ始めた。
「いやいやいやいや、何も起きないから!」
全力で否定する泉美、だがその横で眉間にしわを寄せ、マリアが唸っていた。
「泉水君がそんなバカなことするはずないし、親御さんも一緒だから大丈夫だと思うけど・・・教師として、諸手を挙げて賛成する訳にも・・・」
「マリア先生まで・・・」
思いもよらない意外な展開に、泉美は戸惑いを隠せずにはいられなくなっていた。
「みんなが心配するのも無理ないと思うし~・・・教師として話を―――」
「そんな必要無いっスよ」
言葉を遮ったのは泉水だった。
「蛍とは昔からの幼馴染です、兄妹と言ってもいい。兄妹が同じ屋根の下に暮らしていても問題ないでしょ?
それに母さんは蛍のこと手放す気はないですよ・・・絶対に」
鋭い視線で言い放つ泉水に、教室は静寂に包まれた。
「う、う~ん・・・泉水君もこう言ってるし、泉水君のご両親や、本家の当主様がOK出してるなら、やっぱり教師とはいえ他人が口出しすることじゃないのかなぁ~?・・・」
首を傾げながら眉をひそめ、マリアは仕方なさそうに言った。
「で、でも・・・」
納得がいかない様子の女子生徒だったが、険しい顔の泉水と、半ばあきらめ顔でうなずくマリアを見て、渋々納得したようで黙り込んだ。
クラス中が重い空気に包まれる中、いかにもお調子者と言う感じの男子生徒の声が響いた。
「で、本音は?」
「・・・一教師でしかないワタシが、水輝一族に楯突くとか、絶対面倒なことになるからイヤ」
軽い口調で話すマリアの言葉に、クラス中の生徒が一瞬あっけにとられ、次の瞬間笑い声があふれた。
「先生、ぶっちゃけすぎ―!!」
「立場弱っ!」
「結局面倒くさいだけじゃん!」
生徒たちは口々に笑いながら、小ばかにして言う。そんな生徒たちに苦笑しながら、マリアは言った。
「きょ、教師とはいえ他人が口出しすることじゃないっていう考えは根本にあるよ。それにプラスして盾突きたくない訳で・・・・・とにかく!この話は終わり終わり!!
それよりも、自己紹介も終わったんだから、蛍さんに席を教えないと!」
早口でまくし立てると、マリアは教室の中央の列の一番後ろの空いている席を指さした。
「あそこがあなたの席ね」
指さされた席を見て、泉美はすぐに「はい」と言って席に向かうかと思われたが、なぜか「ん~」と左手で口元を覆いながら唸った。
「マリア先生、どうしてもあの席じゃなきゃダメですか?」
「えっ?えっと・・・
どうしてもって訳じゃないよ。特段の理由があれば変えられるけど・・・」
「じゃあ、大丈夫ですね」
そう言うと、首を傾げるマリアをそのままに、泉美は入り口近くの列に向かう。そして、最前列に座る男子生徒に向かって話しかけた。
「あなた、目悪くないよね?」
「ん?俺?ああ・・・」
「じゃ、後ろの席でもいいよね?席変わって!」
「へっ?」
さも当たり前のように提案する泉美に、男子生徒は呆気にとられてしまう。
「ま、まぁいいけど・・・何で?」
当然の疑問に、泉美は答える代わりに微笑むと、彼の隣の席へ歩いて行き、座っている生徒の肩に手を置いた。
「瑞希の隣の席に座りたくて」
「「「ええ!!」」」
その発言にクラス中がどよめいた。
「皆倉さんと知り合いなのか!?」
驚きを隠せない男子生徒に、泉美は満面の笑みで言った。
「うん!瑞希は私の親友なの!!」
「「「えーーー!!」」」
再びクラス中がどよめきに包まれた。
「ちょっと、い―――・・・蛍!!
変なこと言って私を巻き込まないで」
「変なことって、本当のことじゃん」
「だからって、こんな大勢の前で言うなんて、頭おかしいんじゃないの!?」
「頭おかしくはないよ。親友を自慢したいだけ♪」
「♪を付けるんじゃない!!
まったく・・・何で親友になりたいなって言っちゃたんだろう私・・・」
げんなりといった様子の瑞希に対し、泉美は満面の笑みをたたえた。
「いや、あのー・・・まだ俺席移動してないんだけど、そもそも先生の許可出てないし・・・」
戸惑いながら男子生徒は、助けを求めるようにマリアを見た。
「親友の隣に座りたいんじゃ、しょうがないねぇ~、OK!特別に許可しちゃおう。
宮下君席移動して!!」
「えー!・・・まあいいっスけど」
笑みを湛えながら明るく指示するマリアの言葉に、男子生徒は面倒くさそうに机の中の荷物を出すと、教室の後ろへ移動していった。
後ろの席へ向かう男子生徒に向けられた視線が、彼が席に着いた途端、泉美へと切り替わった。
そして、獲物に飛び掛かるライオンのように、女子生徒たちが泉美の元へと向かい・・・
「じゃあ、出席を取るねぇ~」
「「「・・・・・」」」
マリアの一言に、女子生徒たちは渋々席にとどまった。




