15枚目・告げられた事実⑤
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
その後、コーヒーを飲み終わったイズミたちは博士に別れを告げた。
「それじゃあ博士、何か進捗あったら連絡してくださいね」
「ああ、しばらく報告するようなことはないと思うが、いい報告があればすぐにしてやる」
博士のぶっきらぼうな答えを聞くと、泉美は微笑み後ろを向いて階段に向かった。
泉美を追って大樹と鈴蘭が背中を向けたことを確認すると、博士はささやくような小声で言った。
「勘づかれるなよ」
「ああ」
博士の言葉に泉水も小声で応える。
2人の会話は耳をそばだてないと聞こえないようなレベルで、案の定先を行く3人には聞こえてはいないようだった。
そして、泉水も何食わぬ顔で3人の後を追った。
雑居ビルを出た4人は当初の予定通り、食事をとるために駅前のファミレスに入店することにした。
「コーヒーとお菓子食べたけど、さすがにそれだけじゃお腹満足しないよぉ~・・・あたしドリアにしよっと!」
鈴蘭はメニュー表を勢いよく閉じながら宣言すると、泉水の方を見た。
「お兄ちゃんは?」
「ん?・・・考え中」
「ふ~ん?」
どこか上の空で、パラパラとメニュー表をめくりながら答える泉水。
その覇気のない返事に、鈴蘭は少し首を傾げた。
「(なんか上の空に見えるけど・・・気のせいかな?)
大樹君は?何食べる?」
「僕はミートソーススパゲティにする。
お姉ちゃんはどうする?」
「私はサンドイッチ」
早々にメニュー表を閉じていた泉美は大樹にそう答えると、隣に座った泉水の方を見た。
「まだ決まらない?みんな決まったよ?」
「あ?ああ・・・じゃあ俺もサンドイッチにするかな」
「OK、じゃあボタン押すね」
ボックス席の奥に座っていた泉美が代表して呼び出しボタンを押した。そんな泉美の斜め向かいに座る鈴蘭は何か言いたそうに泉水を睨みつけていた。
「蛍さんと同じサンドイッチ頼むとか、仲が良いんだね・・・」
「ん?・・・ハァー、そんなんじゃねぇよ」
ため息と共に泉水は鈴蘭の言葉を軽くあしらった。
「たまたま、たまたまだよ。博士のとこでコーヒーとお菓子食いすぎて、食欲ないだけだ」
「ふ~ん・・・」
泉水の言葉に鈴蘭は渋々といった様子で納得した。
しばらくして頼んだ料理が運ばれてくる。
最初にサンドイッチが運ばれてきて、次にスパゲティ、最後にドリアが運ばれてきて4人は料理が揃ったところで食事を始めた。
「ん~♡
やっぱりドリア美味しー♡」
「ミートソーススパゲティも美味しいよ。お腹すいてたから余計においしいのかも」
「だねぇ~、さすが評判のチェーン店なだけあるよ。特に評判のドリア、やっぱり選んでよかったー♡」
「本当にスズさんは美味しそうに食べるねぇ~。このサンドイッチもトマトが新鮮でおいしいけど」
楽しそうに笑顔で食事をする3人。
とくに泉美の笑顔が、泉水の胸に鋭く刺さった。
泉水は何も言わず、サンドイッチをそっと口に運んだ。
(やっぱり味なんて・・・・・俺に出来る事・・・泉美のために俺に出来る事・・・)
楽しそうに笑いながらサンドイッチをほおばる泉美を横目でチラッと見ながら、泉水はサンドイッチを水で流し込んだ。
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≪登場用語説明≫
博士が泉水だけに告げた真実 その②
分類:説明
泉美がこの世界に6ヶ月以上いると命を落とす。
その真相は世界による異物排除作用、題して【世界拒絶作用】によるものだった。
世界拒絶作用は異世界からの異物を、1年かけて排除し元の世界へ戻す作用で、無生物にはもちろん、生物にも作用する。
生物に作用した時、体組織を構成する細胞が消えるのだが、同様に血管の細胞も消えていくため全身から血を噴き出してしまい、結果的に出血多量で死に至る。
もちろんこれは人間にも同様である。
博士は明言を避けたが、世界を飛び越えた日から7ヶ月経つ時に、元の世界に戻っていなければ、全身から血を噴き出し、出血多量で死に至る。
世界拒絶作用
分類:世界的作用
世界が異世界からの異物を排除し、元の世界に戻す作用の名称。
異世界から入り込んだ物質は、その世界にとって世界の均衡を保つのに邪魔な存在であるらしく、世界から排除しようとする。
具体的には、6ヶ月かけて物質を特定し、7ヶ月目から物質をエネルギーに変換、ゼロクロックワールドに排出し、その排出されたエネルギーを元の世界が吸収する。
①異世界の異物を6ヶ月かけて特定
②7ヶ月目から物質をエネルギーに変換
③ゼロクロックワールドに排出
④排出されたエネルギーを、元の世界が吸収
⑤大気に熱エネルギーとして放出
という段階を経ると予想され、はた目には世界が異世界の物質を、元の世界に戻しているように見える。
物質がエネルギーに変換されるという点については、有名な物理学者のアインシュタインの発表したE=mc²という式で表すことが出来る。
例としては例えば木を燃やすことで木は熱エネルギーに変換される。だが、すべてが熱エネルギーに変化する訳ではなく煙や灰となって残る。これが一般的なエネルギーへの変換の一例である。
だが、実際には木は灰すら残さず100%エネルギーに変換することが可能で、わずかな量で莫大なエネルギーに変化させることが出来る。またエネルギーを物質に戻すこと可能である。
ただしこれらは理論上の話であり、現代科学では現実は不可能と言われている。
そしてこれは木に限らず全ての物質に言えることであり、ここでいう物質とは木や石だけでなく、生物も当てはまる。
故に博士が捕まえたネズミたちは7ヶ月目に肉体がエネルギーに変換されてしまい、肉体が維持できずに死に至った。そしてそれは7ヶ月後の泉美の運命でもあると泉水に告げたのである。
ゲート発生装置の問題
分類:課題
ゲート発生装置は、機械自体は6ヶ月もかからず完成する予定なのだが・・・
座標指定の方法が見つけっていない問題があった。
イズミたちは話の流れから勝手に6ヶ月以内に解決する問題だと思っていたのだが、座標指定の技術がまったく確立されていない状態から技術を確立するのは、年単位の時間がかかり6ヶ月のリミットに間に合わない、つまり泉美を安全に地球の人の住む地上へ転移させる方法がないことを意味する。
博士は、泉美を元の世界に戻すまでには出来る限りの努力をして、技術の確立が出来るようにしてくれると約束してくれるが、可能性は限りなくゼロに近い。
博士が異世界転移を本気で研究しなかった理由
分類:研究
博士は轟音と共に現れ、月のように光り輝き、異世界との扉となる光球にパラレルゲートと名前を付けたが、パラレルゲートを利用し異世界転移する研究はしようとしなかった。
その理由は異世界への転移は、肉体に深刻な問題を多く発生させると考えたためだった。
1つ目として、異世界には6ヶ月以上いられないという問題、世界拒絶作用により肉体が6ヶ月しか持たず、7ヶ月目には死んでしまう。
2つ目として、6ヶ月以内に元の世界に戻っても、肉体に何らかの問題が残らないと断言できない事、世界拒絶作用は7ヶ月目から作用すると考えられているが、それまでに作用が起きていないと断言できないため、異世界移動は慎重にならざるを得なかった。
3つ目として、異世界へ転移した物質はその世界に危険因子として記憶される可能性があるため。
あくまで可能性であるが、異世界から来た物質を世界は均衡を保つのに邪魔な存在として、排除する作用を起こすため、例え世界から消えても危険因子として記憶され、再び世界に入り込んだ際には、以前転移していた期間が累積され、6ヶ月よりも短い期間で世界拒絶作用が起こる可能性がある。
以上のことから、博士は安全に世界を行き来する異世界旅行は、出来ないと考えている。
ドッペルゲンガー その②
分類:現象
イズミたちは自分たちの関係を、冗談めいてドッペルゲンガーと呼んでいた。
だが、彼らの関係はまさにドッペルゲンガーだった。
ドッペルゲンガーの正体は、自分のいた世界と似た世界に転移してしまった人の目の前に現れた、その世界に存在していた自分。
つまり、異世界に転移して異世界の自分を見た人間が、その自分をドッペルゲンガーと呼んだ、それが都市伝説化したのが真相だった。
そして、ドッペルゲンガーを見た人間は死ぬという噂も、もう一人の自分を見てしまった人間が元の世界に戻れず、7ヶ月目に死んでしまった事実が同様に都市伝説化したものだった。
つまり姿こそ違うが、泉水はまさに泉美にとっての死を呼ぶもの
だったのだ。




