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15枚目・告げられた事実④

読みやすさのため、内容を分割して調整しました。

文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。


作者:服を着た猫




「待たせたな」


居間の扉を開けて、ミルクパウダーの入った瓶と、スティックシュガーを挿したコップ、そしてスプーン5本を入れたコップを持った博士が入ってくる。

その後ろからコーヒーが注がれたカップを載せたトレーを、慎重な足運びで歩きながら泉水が入ってきた。


「わー、コーヒーの良い匂い!」


大樹が歓声を上げる中、泉水がコーヒーを配っていく。


「・・・泉美は?」

「お手洗いに行ってるよ」


泉水の問いに答える大樹の言葉を聞き、博士は眉をひそめた。


「トイレだって!?ここのトイレは書類の山で埋まってて使えないぞ」

「えっ?そうなの?

じゃあ、いつもトイレはどうしてるの?」

「隣のコンビニのトイレを使ってる。

蛍もトイレが使えないって分かって、トイレ探しに行ったとしたら、オレと同じようにコンビニに駆け込んでいると思うが・・・」

「どのタイミングでお手洗いに行ったんだ?」

「お兄ちゃんたちがコーヒーを淹れに出てすぐだよ」


泉水の問いに、三本目のシュガースティックを注ぎながら鈴蘭が答える。

そして、シュガースティックを入れ終わると、今度はミルクパウダーの瓶を持ち、考え込みながらスプーンに山盛りのミルクパウダーをすくいながら言った。


「うーん・・・お兄ちゃんたちがコーヒーを入れてきてくれる間に戻ってくると思ってたんだけど、ちょっと遅すぎるよね?」

「うーん・・・もしかして便―――・・・何でもない」


なにか言いかけた大樹だったが、ジト目で睨みつける鈴蘭の視線に慌てて口をつぐむ。


「もしかしたらお弁当買ってるのかも、お昼過ぎててお腹すいてるし」

「それはないんじゃない?研究所だけど人の家だし、買ってくるとしてもお菓子くらいだと思うよ?

お姉ちゃんのことだから、兄ちゃんと同じでチョコ―――」

【ガチャ】


大樹の言葉を遮るように居間の扉が開く音がした。

そして入ってきたのは・・・手に袋一杯にお菓子を持った泉美だった。


「お待たせ~・・・お手洗いに行ったついでにお菓子選んでたら時間がかかっちゃって・・・えっ?何?みんな黙っちゃって?」


笑顔で入ってきた泉美に、大樹と鈴蘭は目を丸くして、博士は苦笑いを浮かべ、泉水は小さくため息をついた。


「買いすぎ・・・チョコか?」

「えっ?ああ・・・うん!ポテチもあるよ!

チョコも見たことないのがあって思わず買っちゃった♡」


そう言うと泉美はテーブルの中央にお菓子をぶちまけ、その中の一つをつかんだ。


「ほらこれ!ラスクにチョコを染み込ませた【チョコ染み染みチョコラスク チョコ150%増】

凄くない!!

150だよ150!!思わず二度見しちゃったよ!!」


むんずとつかんだチョコ菓子の袋を顔の前に差し出してくる泉美に、泉水は淡々と応えた。


「そりゃ良かったな。

ほら、座れよ。せっかくのコーヒーが冷めちまう」

「そうだね。

ああ・・・コーヒーいい匂い♪

じゃ、さっそくいただくね!」


チョコ菓子の袋を広げながら、泉美は笑顔で椅子に座り、菓子をテーブルに置くとコーヒーカップを掴んだ。その様子を見ながら泉水も彼女の隣に座った。


「うわー!美味しい!!豆の品種は何ですか?」

「モカだ、フルーティな酸味が好きなんでな。嫌いなヤツもいるが口にあってよかった」

「美味しいけど、僕はちょっと酸味が苦手かな」


泉美とは反対に顔をしかめる大樹はミルクパウダーをスプーンですくい入れ、クルクルと混ぜた。


「うーん・・・あたしは酸味とかよく分かんないなぁ」

「そりゃ、あれだけ砂糖とミルク入れれば、酸味なんぞ分かんないだろうよ」

「だって、あたしコーヒー苦手なんだもん」


呆れ声の博士に不満そうに応えると、鈴蘭はチョコレートラスクを口に放り込んだ。


「ん!?これおいひい!!(これ美味しい!!)」

「でしょー!!っていうか、口に入れすぎだよ。ラスクだから硬いだろうし、少しずつ食べないと・・・」

「ほーひ♡(美味しい♡)」


楽しそうな泉美たちのやり取りを横目に、泉水はラスクをかじり、コーヒーを飲んだ。


「ねぇ泉水、美味しい?」

「ああ・・・チョコラスクもコーヒーも美味しい。この組み合わせいいな」


微笑む泉水を見て、泉美は嬉しそうに言った。


「だよねぇ~」


笑顔で言う泉美に微笑むと、泉水はコーヒーを飲んだ。


(分かんねぇ・・・味なんて、分かんねぇよ・・・)


砂糖もミルクも入れないブラックコーヒーの苦みも、大好きなチョコレート菓子の甘い味も、罪悪感に包まれた泉水には何も感じられなかった。

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