15枚目・告げられた事実③
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
泉水はうつむきながら必死に考えをめぐらす、本当に他に方法は無いのかと・・・
「1年後・・・1年後、世界拒絶作用で排除された物質が元の世界に戻るって話は!
その作用で戻されれば、元の世界に戻れるんじゃ!!」
「一度死んだ人間が、元の世界に戻ったら生き返るなんてことが起きると思ってんのか!?
そもそもエネルギーに変換された物質が、元の世界で元の物質に戻るとは到底思えん。熱エネルギーとなって世界に吸収されるのが考えるのがオチだろうな。
万が一にも物質に再変換されたとしても元の肉体に再構築されずに塵になるのが関の山だろうな。
まぁ、万に一つも人間の形に戻ったところで、1年前に行方不明になった女子高生が死体で見つかるだけだろう」
「そんな・・・じゃあ、死ぬ可能性が高い一か八かの大博打に賭けるしかないって言うのかよ!?」
「ああ、残念だがな。
オレがパラレルゲートとあの光る玉に名前を付けても、異世界への転移手段として研究しなかったのは、オレの研究テーマがタイムトラベルを主としているからだけじゃない。
異世界に行ったとしても拒絶作用で6ヶ月以上その世界にいられないからだ。
アニメや映画のようにスーッと半透明になって消えて元の世界に帰っていく、そんなフィクションは起こらない・・・夢物語だった異世界転移を実現できたとしても、結果的に死んじまうんじゃ、研究する意味を見出せなかった。
例え異世界と元の世界を行き来できる技術を開発したとしても、そう何度も世界を移動は出来ないだろう・・・異物をエネルギーに変換して吐き出すなんて大事をしなければならないくらい、世界にとっては他の世界の物質ってやつは排除すべき脅威なんだからな。
恐らく一度でも異世界へいった人間は、その世界に記憶され、再び入り込んだ時には累積で短期間に排除される、下手すりゃ累積で異世界へ入った瞬間死ぬ可能性もあるかもしれん。
まぁ、あくまで推測だが・・・
少なくとも異世界転移したやつの肉体には、何らかの弊害が残る可能性は否定できん・・・
つまり、異世界旅行なんぞ出来はしないって訳だ。
まぁ、事故で異世界に来ちまうやつがいることを失念していたのは、失敗だったがな・・・
お前の弟、大樹だったか?
あいつがお前らの関係をドッペルゲンガーに例えた時、内心かなりビビった。
お前と蛍の関係はまさにドッペルゲンガー・・・
まさに泉水は泉美にとっての死を招く者なんだからな・・・
もしかしたら都市伝説のドッペルゲンガーは、蛍と同じように自分のいた世界と似た異世界に来てしまって、もう一人の自分と遭遇してしまった人間の末路が都市伝説化したものかもしれんな」
目をつぶり、肩をすくませながら言う博士の言葉に、泉水は歯が割れそうなほど食いしばり、爪が食い込むほど拳を握りしめた。
「そんな・・・冗談だったんだ・・・冗談で呪い殺すつもりなんて無いって言ったのに・・・
クソッ!!俺のせいだ!!
ゲートが現れた時、俺が泉美をこの世界に引っ張り込んだから!!俺のせいで泉美は!!」
叫びそうになる声を押さえつけ、苦しそうに言葉を発する泉水。
そんな彼に博士は淡々と話しかけた。
「好きなだけ自分を責めろ・・・泣いても喚いても、一向にかまわん。
罪悪感なんぞ抑え込んだところで、さらに苦しくなるだけだ。気休めの慰めの言葉なんぞ聞きたくもないだろうしな。吐き出せるときに吐き出しておけ、ただし今は止めておくんだな・・・蛍たちに勘づかれたら面倒だ。
それにまるっきり可能性が無い訳じゃない、オレも出来る限りのことはしてやる。
可能性は限りなく低いが、蛍を安全に送り届ける技術を研究してやるよ。
何もしなかったら寝つきが悪すぎて悪夢見そうだからな」
わずかに口角を上げながら言う博士に、泉水は小さくため息をついた。
「出来る限りのことをしてくれるって言うのはありがたいです。わずかでも可能性があるのならその可能性に賭けたいから・・・協力を頼みます。
泉美を不幸にさせた自分への怒りは、平静という仮面をかぶって隠しますよ。これでも演劇部所属なんで、勘繰られない自信はありますよ」
そう言うと泉水は何事もなかったかのように、コーヒーカップをトレーに並べ始めた。
それを見て博士は小さくため息をついた。
(茶化したことを咎める気力もなしか・・・)
コンロの火を消し、やかんを掴むと博士はフィルターに入れたコーヒー粉にお湯を注ぎ始めた。




