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13枚目・トランプコンタクトの名付け【前編】⑤

無言で頷く鈴蘭に、泉水は顔を赤くして苦笑いしてしまう。


「そ、それにしても博士がこの町で研究室開いてくれてよかったよ。とんでもない遠くで研究室開いてたら会いに行くのが大変だったし」


赤くなった顔を誤魔化すように話題を変えてきた泉美に、博士は椅子にドカッと座り話始めた。


「偶然とも言えんかもしれんぞ。オレがこの町に流れ着いたのはこの町の周辺にゲートが開きやすかったからだ」

「えっ?ゲートが開きやすい??」

「正確には多く発生すると言うべきか。

さっき話したようにオレはゼロクロックワールドへの出入り口として、パラレルゲートの研究をしていた。当然ゲートの発生が多い地を探していた、それこそ全国各地な。

ゲートが発生する時、磁場と電磁波が同時に局地的に異常な数値になる、それをもとにゲート検知装置を製作してもらってゲートが多く発生する地に近い町を探したんだ」

「わざわざ町の近く、ですか?」

「ああ、研究室確保や生活維持のために仕方なく、な。そんで条件に合ったのがこの町だったって訳だ。

逆に言えばそれだけこの町はゲートが発生しやすいともいえる」

「私がゲートを見つけたのは必然だった・・・」

「必然とまでは言わんが、他の町より確率は高かったと言えるかもな。

まっ、運命に感謝するのも悲観するのも自由だが、結果的にオレはこの町で研究することになった訳だ」

「・・・それじゃあ博士はこの桜門町()に・・・研究室を開く場所をこのボロボロのビルにした理由は?」

「そりゃあ、家賃が安いからさ」

「博士収入源なさそうだしね」


泉美が苦笑いを浮かべて言うと、博士は「ハッ」と小ばかにしたような声を上げた。


「人を見た目で判断するもんじゃねぇぞ!

オレはこれでもそれなりに収入はあるんだ、研究費でほとんど消えるから家賃を抑えてるだけさ」


ドヤ顔で言う博士に、4人は驚きを隠せなかった。


「収入あるんですか?」

「ていうか、この研究利益生んでるのかよ!?」


泉水の言葉に、博士はジト目になりながら不機嫌な声で答える。


「この研究では利益は出てねぇよ。

ウチの実家それなりに金持ちでな」

「まさか!親のすねを・・・」

「ちげぇわ!!」


泉水の言葉に反論すると博士は理由を話し始めた。


「ウチの親が生前贈与ってやつをやってな、兄貴と姉貴はそれぞれ、家督の相続権といずれ親父の会社を継ぐために身分を隠して新入社員として就職を望んだり、自分の店をオープンするための資金を出してもらったりしたんだわ。

まぁ、オレは三男坊で自由気ままに研究がしたかったんで、親父の所有してたビル一棟をもらって家賃収入が一定金額の家賃が入るようにしてもらったんだ。

まっ、管理はメンテナンス会社に委託してるからそれなりに収入は減るが、好き勝手研究しても困らないだけの収入はあるって訳よ」


ドヤ顔で話す博士に対し、泉水はジト目で少しあきれた様子で言った。


「若干すねをかじってる感じがしなくも・・・」

「あぁ゛!!」

「何でもないっス」


博士にすごまれ、泉水はすぐに視線を逸らした。


「たく、口の利き方には気を付けろっつーの」

「そうだよ!私が元の世界に帰れるかどうかは博士に懸かってるんだから、機嫌を損なうようなことは言わないで!!」

「わ、悪かったよ・・・」


泉美に怒られ、泉水はバツが悪そうに謝った。


「・・・安心しろ。あんな些細なことで、協力をしないなんて子供みたいなこと言わねぇからよ」


真顔で淡々と話す博士に、泉美は申し訳なさそうに言った。


「ありがとうございます。

私を元の世界に返すための装置の開発費は、お支払いします。もちろんお礼も」

「それは要らん。

ゲートの座標指定もそうだったが、ゲート発生装置は制作するつもりだったんだ、金も困ってねぇしな。

逆に今日お前らが来たことで、行き詰っていた研究の突破口になるかもしれん」


博士は腕を組んで背もたれにもたれながら、遠い目で語り始めた。






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≪登場用語説明≫


ゼロクロックワールドその②

分類:世界


世界の根本であるワールドツリーが鎮座している時間の概念がない世界。

博士によると世界に時間の流れがあるということは、それを支える時間の流れのない世界が存在しているらしい。

博士は時間の概念があるこの世界を川に、時間の概念がないゼロクロックワールドを大地に例え、ゼロクロックワールドという大地のくぼみに世界という川が流れることで時間が生まれると説明してくれる。さらにこの時間の概念がないゼロクロックワールドを活用することで、タイムトラベルを実現しようと博士は考えている。




タイムトラベル

分類:技術


博士はパラレルゲートとゼロクロックワールドを組み合わせることでタイムトラベルを実現しようとしている。

具体的には・・・

①パラレルゲートを利用し、世界からゼロクロックワールドに移動

②ゼロクロックワールド内を移動し、世界の枝の部位から目的の時間まで移動する

③パラレルゲートを利用し、ゼロクロックワールドから元の世界へ移動する

以上の手順で目的の時間まで移動しようというのが博士のタイムトラベル方法である。




博士の収入源

分類:現金収入


博士の研究は収益に結びつくものではなく、研究成果によって得られる収益は無い。

その代わり博士は父親の所持物件であったマンションを一棟、生前贈与してもらっており、そのマンションの家賃収入を使って研究及び生活をしている。

それなりの収入があるはずなのだが、わざわざボロ雑居ビルのワンフロアを借りて研究室にしているので、収入の多くを研究につぎ込んでいるようだ。

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